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グーグル 成長のカギは「弱さを見せ合えるチーム」

グーグル キャサリン・ディカスさん(下)

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NIKKEI STYLE

グーグルのピープル・アナリティクスのチームが生産性の高いチームの条件を調べたところ、最も重要な要素は「心理的安全性」という結果が導き出されました。マネジャーはどうすれば心理的安全性の高いチームを構築できるのか、会社はどのように関与すべきなのか。上編の「グーグルの職場づくり 心理的安全性がチーム力伸ばす」に引き続き、シニアマネジャーのキャサリン・ディカスさんに伺いました。

報告時に心理的安全性が重要

白河 前回の最後で心理的安全性を高めるためには、マネジャー自身が「組織の文化を変えていこう」という姿勢を保ち続けることが大事だとお聞きしました。組織の風土、文化を変えるには時間がかかりますね。働き方改革の本質はまさに風土改革と思いますので、じっくり取り組む必要があります。

ディカス 加えて強調しておきたいのは、心理的安全性があるというだけでは生産性を高めることにはならないという点です。グーグルでは、従業員に対して常に「少し高めの目標」を設定しています。少し高めの目標設定ですので、達成に時間がかかることもよくあります。

目標達成までの進捗状況を途中で報告してもらうのですが、その「報告」の時に心理的安全性が高いことが非常に重要なのです。

つまり、進捗状況を、うまく行っていない部分も含めて正直に伝えられるか。そういった課題が早く共有されることが、結果として、組織としての成果に結びつくのです。心理的安全性は「少し高めの目標設定」とセットでなければ、生産性に寄与する効果は出ません。

白河 心理的安全性+高めの目標設定がセットで、生産性の高いチームができるのですね。先日、米国企業の中でも従業員満足度が高いことで知られるザッポスのシステムを取材したのですが、同社では「社員の幸福感を高める努力をした結果、業績も上がった」というロジックがありました。グーグルでは、心理的安全性を高める努力と、社員の幸せに対する投資は関連がありますか?

ディカス 心理的安全性と幸福度は、近いけれども厳密には違うものだと私は思っています。なぜなら、その人自身がハッピーだったとしても、正直で信頼できる人間かどうかは分かりませんから(笑)。安心感を持たせる努力と比較すると、幸福感を持たせることは表面的なように感じます。心理的安全性を実現するには「弱さを見せ合える関係性」をつくる必要があり、これははるかに難しいことなのです。

深い問題を抱えるチームには人事が介入

白河 one on oneミーティング(上司と部下で定期的に行う1対1のミーティング)、20%ルール(自分の業務時間の20%までは、本来の担当業務ではない仕事に使うことができる制度)など、さまざまな人事施策があるグーグルですが、弱さを見せ合える関係性づくりのためのトレーニングなどは、実施しているのでしょうか?

ディカス 特にしていません。しかし、深い問題を抱えているチームを発見した場合には、People Operations(人事)部門が介入して改善していきます。心理的安全性が低いという問題は個人のせいではなく、チーム全体の問題である場合がほとんどです。一人ひとりの能力は豊かであっても、社会的なパワーバランスがうまくいっていないことが原因です。そういったときに、チームの関係性を再構築するサポートはしています。

白河 ディカスさんの職務である「ピープル・アナリティクス」という仕事は、グーグルの人材育成ではどのように活用されているのでしょうか。日本では、人事や採用部門で最新のテクノロジーを使う「HRテック」が話題になっており、人工知能(AI)分析を採用のエントリーに活用したり、社員の心理状態を毎日測定し始めたという会社もあります。

データから始めるのは危険

ディカス 実は、グーグルがこれまでやってきたことはHRテックとは正反対のアプローチだと考えています。HRテックというのは、膨大な情報を収集したビッグデータを解析して兆候を見つけるという考え方に基づきますよね。

しかしながら、我々はデータからは始めません。仮説から始めるのです。まず、「生産性の高い質の良いチームとはどういう特徴があるべきか」という思想を仮説として立てます。そして、その仮説が正しいのかをテストして検証する。その繰り返しで今に至るのです。

私はデータで始めることはむしろ危険だと思っています。なぜなら、データ解析の結果はたくさん出てきますが、その結果がなぜそうなっているのか因果関係が分からない場合が多いのです。グーグルの「ピープル・アナリティクス」のゴールは、「自分たちが改善可能な行動を見つけること」。因果関係を説明できない現象を見つけても戸惑うだけですし、かえって無意識の偏見が生まれることにもなる。まったく別物だと捉えています。

白河 仮説を立て、確信できる因果関係をつかんでから試す。その繰り返しだということですね。

ディカス はい。ただし、足元ばかりを見ているわけではなく、5年後、10年後にどのような調査をしていくべきかという視点も大切にしています。世界が変わっている、それに合わせてグーグルも変わっていかなければならない流れの中で、将来、我々は社員にどのような問いを投げかけるべきか。常に将来に向けての情報収集の準備を行っています。

白河 5年後、10年後に向けて、例えばどんな問いを?

ディカス 私の水晶玉をご覧になりますか?(笑) 具体的な問いというのは、きっと皆さんが想像するものと同じだと思いますよ。例えば、「これからどんな職業が主流になっていくだろうか?」ですとか、「世界の人々と協働するときにどんな方法が有効なのか?」「バーチャルテクノロジーを生かすには?」といった問いかけ。これからより大事になるのは「人間として変わっていかないものは何だろう?」という問いかけになるでしょう。

多くの人は「AIに仕事が奪われる」と恐れているようですが、実際には明るい未来が待っているだろうと私は期待しています。人間には、何かを想像したり、発明したり、他の人に共感したりという独自の特性があるのです。未来は、その人間らしさがより際立つ世界になっていくはずだと希望を持っています。

お互いに学び合うことが重要

白河 先だって日本語のre:Workサイトが公開されましたが、国ごとにカスタマイズされているそうですね。ディカスさんは日本で働いて2年。日本人の働き方として特徴的だと感じることは?

ディカス 日本に来る前、私はずっとニューヨークで育ち、働いてきましたが、東京は食事もおいしく、仲間も優しく、生活環境としてとても気に入っています。一方で、日米の違いとして一番感じるのは職場での人々の振る舞い方です。

東京オフィスに就任した初日の朝、私が自己紹介のプレゼンテーションをした時、何か質問が一つくらい出るだろうと思っていたら、まったく手が挙がらなかったんです。米国では15分から20分くらい質疑とディスカッションが続くことが普通なので「私の話はつまらなかったのね」とガッカリしかけました。「日本では手が挙がらないのが普通ですよ」と前もって教えてもらってはいましたが、大きな違いだなと感じましたね。

米国の特にテクノロジー業界では、皆が自分のアイデアを持っていて、それを自信たっぷりにプレゼンする文化があります。興奮して語られるアイデアの多くは大したことがないのですが(笑)、それでも「まず言ってみる」という文化があります。一方で、日本人はたとえ素晴らしいアイデアが浮かんでもすぐには言わない。ちょっと時間を置いて十分に練ってから発表するという文化です。

どちらが正しいということではなく、お互いに学び合うべきだと思います。日本人はもっと思い切っていいかもしれませんし、米国人はもう少し熟考して発表したほうが、お互いに成長できる。やはり「お互いに学び合う」という姿勢に尽きるのだと思います。

あとがき:グーグルの人材育成で話題の「one on oneミーティング」「20%ルール」など、『Googleだからできる』と思っている方も多いと思います。しかしそういった仕組みも、Googleの調査分析の知見から出てきているもの。「心理的安全性の高いチームで働きたい」というのは、すべての会社の人の願いでもある。決して「甘い」「ぬるい」チームではなく、心理的安全性があるからこそ、チャレンジができ、「意見の対立」や失敗を次の成果に生かすことができるのです。「心理的安全性」はよく知られていますが、今回の取材で「少し高い目標」とセットで、初めて「生産性が高いチーム」となることもわかりました。働き方改革において「施策」や「残業削減時間」だけに注目せず、その結果、チームに何が起きたのかを見てください。残業が減っても「心理的安全性」が阻害されるようでは失敗です。残業削減などの課題を達成していく過程で「心理的安全性の高いチーム」になっていくことが、本質なのです。

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「『婚活』時代」(共著)、「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)。

(ライター 宮本恵理子)

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