ディベート日本一 埼玉の開智学園「探究力」で伸びる開智中学・高等学校(中高一貫部)の溜剛校長に聞く

その具体的なカリキュラムの2本柱が「探究テーマ」と「フィールドワーク」だ。中学1年から高校2年まで、毎年一人ひとりが身近にある素朴な疑問を探究テーマに選び、自分で解を探していく。例えば、「カニの足はなぜ8本なのか」「非常口はなぜ緑色なのか」といったものだ。

疑問が湧いてもすぐに調べない

生徒同士で話し合う授業で探究力を養う=開智学園提供

疑問を解いていく方法論を学ぶのがフィールドワーク。中1では磯、中2では森で、主に自然科学にかかわるグループ研究を実施する。さらに中3では広島・関西、高1では首都圏の研究機関や自治体などをまわり、社会科学のグループ研究や個人研究を深める。それらの集大成として、高2では英国を訪れ、ロンドン近郊のブルネル大学の寮に約1週間宿泊。高1までに積み上げてきた探究テーマの成果を英語で大学生にプレゼンし、議論する。いわば、一般の学校の遠足や修学旅行を、探究力を身に付ける実践の場として活用しているわけだ。

一連のカリキュラムの過程で重視しているのが、自分なりの仮説を立てさせること。疑問を見つけても、すぐに調べてはいけないと指導している。最近はインターネットなどで何でもすぐに調べられるが、「まずは今、自分が持っている知識をフル活用して考えさせる。そうでないと探究力は身に付かない」と溜氏は強調する。研究機関や自治体を訪ねる際も、生徒自身に面会の約束を取らせる。

では、通常の授業では探究力をどう身に付けさせようとしているのか。実は10年ほど前から、教師が一方的に知識を伝えるのではなく、生徒同士で話し合い、教え合う授業を始めたが、「従来通り教えてもらう方が向いている生徒も少なからずいた」。そこで2010年からは、探究型授業を推進する「先端クラス」と、従来型の授業をする「一貫クラス」に分け、個性に合わせた指導を進める。ただ、教員は両方のクラスを担当し、一貫クラスでも徐々に話し合う機会を増やすようにしているという。

とはいえ、生徒たちが自ら意見を出し合う授業は一朝一夕にはできない。「常に正解を答えるよう求めてきた教師の側に責任がある」との反省から始めたのが、道徳の授業での「哲学対話」だ。学校での哲学教育に詳しい立教大学の河野哲也教授に指導を仰ぎ、正解のない問題について意見を出し合う授業を11年前から開始。「学習すると勉強するは違うのか」「学校に担任は必要なのか」といった、教師にとっても答えるのが難しいテーマを取り上げ、議論する力を蓄えてきた。ディベート部の優勝もこうした日ごろの鍛錬が土台となっているといえる。

ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧