インフル予防接種促すには 行動経済学がヒントに

インフルエンザの予防接種は、副作用の起きる可能性があり日本で義務化は難しい(2017年10月、フランス・ニース)=ロイター
インフルエンザの予防接種は、副作用の起きる可能性があり日本で義務化は難しい(2017年10月、フランス・ニース)=ロイター

冬に向かうこれから、インフルエンザが流行しやすい季節です。近年、重症化の可能性が高い高齢者の間で予防接種を受ける人の割合が伸び悩んでいます。多くの自治体で毎年10月から取り組みが始まりますが、接種を促す方法はあるでしょうか。

インフル予防は流行前のワクチン接種が有効とされています。厚生労働省が公表した、高齢者の接種の有効性を調べる国内を対象とした研究では、死亡率を80%程度下げる効果が確認されています。政府は主に65歳以上に接種費用を補助する制度を設けています。各自治体で補助内容は異なりますが、東京都文京区なら通常は5千円程度かかる接種費用を高齢者は半額で済ますことができます。

このうち、どれくらいの人が接種を受けたのでしょうか。厚労省の推計では、2016年度に制度を通じて受けた人は約50%でした。制度が始まった01年度の約28%より上がったものの、近年は横ばいが続いています。接種は、発熱などの副作用が起きる可能性があるため、義務化は難しいのが実情です。

米ペンシルベニア大のキャサリン・ミルクマン教授らは行動経済学に基づき、接種の「お知らせ」に着目した実験をしました。ある企業の従業員約3千人に「実施日のみ」と、「自分が接種したい日時を書き込む欄」も加えた2種類の紙を配りました。すると書き込み欄のある紙を配られた人の接種率は約37%と、実施日のみを配られた人より約4ポイント高くなったのです。

行動経済学に詳しい大阪大の大竹文雄教授は実験について「自分で予定を書くことで、守ろうとする効果が生まれた」と説明します。半面、大竹氏は「この方法はそもそも接種を考えていない人には効果がない」とも話しています。

慶応大の井深陽子准教授らは、高齢者と同居する人の接種率がほかの人より9ポイント程度高くなると推計しました。接種に補助が出る高齢者は、接種率が一般成人の2倍程度といわれています。井深氏の調査は「身近に接種した人がいる人は自分も接種する」可能性があることを示唆しています。

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大竹文雄・大阪大教授「文化によって異なるメッセージ
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