オリパラ

SPORTSデモクラシー

大学スポーツ改革、米国流ほど遠く 学長参加は必須 ドーム社長・安田秀一 日本版NCAAについて(上)

2018/9/28

日本版NCAAを作るなら、まずは前提となる2つの条件を整えなければなりません。NCAAを名乗るのであれば、それが必要条件です。ところがワーキンググループでは、保険をどうするかとか、安全対策とか、学業との両立とか「その先のテーマ」ばかりが話題になっていて、画竜点睛(がりょうてんせい)を欠く状態です。

米国のNCAAではトレーナーは大学の職員として雇用されている(写真はNCAAカレッジフットボール、9月15日)=USA TODAY

例えば、安全対策として各チームにトレーナーの雇用を義務付けるとします。本場のNCAAでは部活は正規のプログラムですので、トレーナーは大学の職員として雇用されています。しかし、部活が課外活動である日本の大学において、誰がどのような条件でトレーナーを雇用するのでしょうか。

設立準備委員会に加わっている大学や参加者で、NCAAのこうした仕組みを知っている人はほとんどいません。スポーツ庁は形を整えるべく、広く参加を呼びかけていますが、本来は正しい知識に基づいた意欲のある大学、部活を正規の活動として大学の発展に活用しようと考える大学こそが参加すべきなのです。

スポーツ庁も本気で進めようとするなら、上記2つの必要条件を満たす大学に補助金を出すなど、正しい活動に導くようなインセンティブを導入すべきでしょう。それにより、大学側も、部活を正規の活動にすべく、NCAAの具体的な仕組みを学ぶことになるでしょう。

■明治維新の精神に立ち戻るべき

「イタリアンレストラン」を標榜するなら、イタリア料理を学ばねばなりません。でも、日本版NCAAの現状は「イタリアン」という看板を掲げながら、「そば」を改良してイタリア料理を作ろうとしている残念な状態なのです。

こんな状態はスポーツに限りません。「ガラパゴス化」という言葉に代表される唯我独尊状態が、日本の課題とも思っています。外の世界を学ぼうとせず、自分の中の狭い知識や情報だけで物事を判断。バブル崩壊後、その傾向がより強くなったと感じています。

日本は明治維新後、アジアやアフリカで唯一、自力で近代化に成功した国です。その背景には、海外に行って欧米の強国の社会制度や仕組み、工業技術などを学んで取り入れた事実があります。もう一度、その姿勢に立ち返るべきでしょう。

後編に続く)

安田秀一
1969年東京都生まれ。92年法政大文学部卒、三菱商事に入社。96年同社を退社し、ドーム創業。98年に米アンダーアーマーと日本の総代理店契約を結んだ。現在は同社代表取締役。アメリカンフットボールは法政二高時代から始め、キャプテンとして同校を全国ベスト8に導く。大学ではアメフト部主将として常勝の日大に勝利し、大学全日本選抜チームの主将に就く。16年から18年春まで法政大アメフト部の監督(後に総監督)として同部の改革を指揮した。18年春までスポーツ庁の「日本版NCAA創設に向けた学産官連携協議会」の委員を務めたほか、筑波大の客員教授として同大の運動部改革にも携わっている。

(「SPORTSデモクラシー」は毎月掲載します)

オリパラ 新着記事

ALL CHANNEL