現代音楽の藤倉大 人と会わずにコラボする作曲法

演奏家との日ごろの付き合いから生まれた曲もある。「ライン・バイ・ライン~ヴァイオリンのための」は英国在住の世界的バイオリニスト、ヴィクトリア・ムローヴァ氏から「私にも曲を書いてほしいと言われて作った」と話す。「彼女の家で何度も奏法を試した」。2人のバイオリニストが弾いている錯覚を起こすハーモニー豊かな独奏曲。メロディアスで心地良い。

ニューウェーブやテクノも受容した現代音楽

「僕は現代音楽の作曲家と言われるけれど、子供も大人も楽しめる曲を書きたい」。最新CDはいずれも繰り返し聴きたくなる曲ばかりだ。メロディーがポップス風であるわけではなく、従来の長調や短調でもない。不協和音や無調風の妥協なしの現代音楽として響くのだが、新鮮なメロディーとハーモニーを感じさせる。親しみやすさも兼ね備えていることが、この作曲家が演奏家と聴き手の双方から支持される理由ではなかろうか。

藤倉大氏が2010~17年に作曲した作品を集めた最新CD「藤倉大:ダイヤモンド・ダスト」(9月19日リリース、発売元:ソニー・ミュージックレーベルズ)

9月24日、藤倉氏はアーティスティック・ディレクターとなって現代音楽祭「ボンクリ(ボーン・クリエイティブ)」を東京・池袋の東京芸術劇場で開いた。昨年に続き2回目。パーカッション奏者のイサオ・ナカムラ氏や東京混声合唱団ら多数の演奏家が出演。坂本龍一氏の合唱曲のライブ・リミックスでは藤倉氏もエレクトロニクスで参加。デヴィッド・シルヴィアン氏(1974~82年に活動した英国ニューウェーブバンド「ジャパン」のリーダー)の84年の名盤ソロアルバム「ブリリアント・トゥリーズ(輝ける樹木)」を想起させるアンビエントなアレンジぶり。藤倉氏がニューウェーブやテクノも受容したロック世代以降の現代音楽の作曲家であることを再認識させた。

「ボンクリ」では藤倉氏の「チェロ協奏曲」も日本初演された。オランダ出身のチェロ奏者カティンカ・クライン氏の独奏、佐藤紀雄氏の指揮によるアンサンブル・ノマドによる演奏。藤倉作品に特有の浮遊感、グリッサンド奏法を使った音程のゆがみ、多彩なビートを織り交ぜた疾走感あふれる響きを生み出した。最も安い2000円のチケットを買って3階席で聴いた。客席の半分も埋まっていなかったが、現代音楽の最前線を一通り見渡せる内容からして割安とも感じた。

さらに10月20日にはハクジュホール(東京・渋谷)で自作14曲を披露する「個展」を開く。ソプラノの小林沙羅氏、チェロの新倉瞳氏、クラリネットの吉田誠氏ら、若手・中堅の実力派演奏家が参加し、各楽器の特性を生かした独奏曲を中心にプログラムを組み立てている。特にNHK交響楽団首席ホルン奏者の福川伸陽氏の独奏による「はらはら~ホルンのための」はハクジュホール開館15周年記念作品として世界初演される。

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