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現代音楽の藤倉大 人と会わずにコラボする作曲法

2018/9/29

 現代音楽をリードする英国在住の日本人作曲家、藤倉大(だい)氏(41)が今秋注目されている。9月に最新CDアルバムを出したのをはじめ、10月20日には東京で「個展」を開き自作14曲を披露。同31日にはオペラ「ソラリス」を日本初演する。世界中で高い評価を受ける理由と作曲の秘訣は何か。一時帰国した藤倉氏に聞いた。

 「彼とはまだ会っていない」。藤倉氏の口癖だ。作曲やレコーディングに協力してもらった演奏家についてこう言う。「会っていない人とのコラボレーションで録音した音源を僕が編集し、マスタリング(原盤作成)もしてCDを出すことが多い」。人と実際に会わずに協業し作曲を進めるのが藤倉流だ。

世界各地の演奏家と連携して進める作曲活動

 「今はオーストラリアの演奏家とコラボしている」と藤倉氏は例を挙げる。「エレキギターとトランペットとトロンボーンのためのトリオ(三重奏曲)を書いている。英国とオーストラリアでは時差が大きいのでファイルの送受信やスカイプでのやり取りが大変。本番にはオーストラリアに行く。そこでやっと『初めまして』ですね」と語り、インターネット上での協業だけでも支障がないようだ。

 「僕はロンドンに住んでいるけど、めったに外に出ない。人に会うのは娘の送迎のときくらい。ほとんど部屋にいる」。現代音楽の最先端を行く作曲家の生活がこれだ。しかし作曲家はそもそも一人で曲を書くものだろう。ネット上とはいえ、演奏家と連携して進める作曲法はむしろ新しい。藤倉氏の作曲の特徴は、演奏家と楽器をよく理解した上で、彼らの個性に合った作品を生み出す点にある。実際に会わなくてもネット上で音楽的に深い仲になってしまえるのだ。

 9月19日には最新CD「藤倉大:ダイヤモンド・ダスト」(発売元:ソニー・ミュージックレーベルズ)を出した。それぞれ尺八、トロンボーン、バイオリン、ホルンのためのソロ4曲と、「ダイヤモンド・ダスト(ピアノ協奏曲第2番)」「コントラバス協奏曲」という協奏曲を2曲、計6曲を収めている。2つの協奏曲では特殊編成の器楽アンサンブル「アンサンブル・ノマド」が独奏者と共演している。

 いずれの曲も藤倉氏がそれぞれの楽器の演奏家たちと実際に、またはバーチャルにやり取りして2010~17年に書いた作品だ。「デリクェス~トロンボーンのための」は無限音階のように音程を滑らかにスライドさせて猫の鳴き声のような響きを出すのが特徴。トロンボーン奏者数人と頻繁にセッションをして技法を探究したが「今回のCDでソロを担当したトロンボーン奏者(ウィリアム・ラング氏)とはまだ会ったことがない」と言う。

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