秋のオフィスファッション クラシックに遊び心加える
宮田理江のファッション戦略論
秋ファッションに吹き込む新しい風は仕事ルックにも生かしたいところ。この秋は、クラシックな印象は保ちつつも、着心地のいいスタイルを取り入れて、職場でのイメージをバージョンアップしてみませんか。ファッションジャーナリストの宮田理江さんが紹介します。
秋のオフィスファッションは、クラシックで端正な風情は保ちながらも、コンフォート(楽な着心地)で優しげな新ムードが好印象を引き出す。
カーディガンやセットアップ、スーツなどを組み合わせた新鮮な着こなしを提案しているのは、50周年を迎えたアントワープ(ベルギー)発のブランド「SCAPA(スキャパ)」。進化形のオフィスコーディネートを取り入れて、職場でのイメージもバージョンアップしていこう。
ロングカーディガンで引き出す、穏やか&ソフトな人柄イメージ
全体が整って映るのに、スーツほどかしこまって見えにくいセットアップ(上下そろい)はオフィスルックに取り入れたい装いだ。スーツはジャケットとボトムスという組み合わせになるが、セットアップにはブラウスとスカートといったコンビネーションもあり、気負いを遠ざけてくれる。
全体を穏やかなクリームカラーで整えたワントーン・コーディネートが上品で落ち着いた雰囲気に導いている。カーディガンを肩掛けにして柔らかいムードを演出。残暑の季節に悩ましい温度調節にも役立つ。
ジャケットをまだ羽織りたくないシーズンには、カーディガンを代役に迎えたい。ニット特有の優しげイメージがオフィスルックから「頑張り感」や力みをオフ。自然体ムードを呼び込む。
膝丈のワンピースは職場にふさわしい節度や、クラシカルな品格をまとわせる。グラフィカルなチェーン柄もレトロな風情。シルクで仕立ててあるので、静かな気品が宿っていて、会食にも着て行ける。ロングカーディガンは、ナチュラルな落ち感を引き出し、シルエット全体を縦長に見せてくれる。
セットアップでまとう、英国テイストとしなやかムード
ブームが続くのを追い風に、セットアップの幅が広がってきた。シャツとパンツの組み合わせはオフィスになじませやすいコンビ。共布のベルトを結んで締めるパンツは、エレガントな表情を帯びる。
シャツにも統一感があるから、ジャケットをオフしたい残暑時期でも、人前で困らない。細かいチェック柄には英国紳士テイストも薫る。シャツとパンツの意外なまとまり具合はしなやかで小粋な着映えに。フリンジ付きのロングカーデは適度な遊び心を忍び込ませる。秋冬トレンドとして有望な「フォークロア(民俗調)」の雰囲気も醸し出す。
織物に取って代わる格好で、ニットが存在感を大きくしつつある。ニット仕立てのスーツも登場している。ニットトップスとスカートのセットアップは、ニットならではの柔らかい風合いがオフィスルックに穏やかな表情を添えている。伸び縮みするニットは突っ張りにくいから、仕事中のストレスも減りそう。
格子の大きいチェック柄は懐かしげな印象があり、レトロやヴィンテージが盛り上がる今のおしゃれトレンドにマッチ。出勤前の忙しい朝でも、組み合わせに悩まない「時短コーデ」は働く女性を応援する。
ジャケット、コートでシックな着映えに
ジャケットとパンツという王道的なスーツルックにも、進化が続いている。一回り大きめをまとう「オーバーサイズ」の定着を受けて、ジャストサイズが鉄則だったスーツにもビッグシルエットが登場。
ゆったり羽織った上から、ベルトで締めれば、めりはりがつき、細感を引き出せる。質感の異なるレザーがクールな印象を添える。伝統的な上質生地のツイードはオフィスに品格ムードをもたらす。立ったり座ったりが楽なワイドパンツは仕事の能率まで高めてくれそう。
コートとスカートを組み合わせたアンサンブルはシックな着姿に導く。ジャケット代わりにコートを組み込んだような、スーツの別アレンジだ。控えめなチェック柄と上質ウールの風合いで全体のトーンがそろっているので、ハンサムな印象のコーディネートにまとまる。
リバーシブル仕立てのコートは出番を増やしやすい。スカートより少し着丈の長いコートが縦長イメージを引き出す。室内でコートを脱いでも、パープルのニットが上品なムードを保ってくれる。
◇ ◇ ◇
1967年にベルギーのファッション都市、アントワープから始まったスキャパ。ブランド名の「SCAPA」とは、「隠れ家」を意味するバイキング語。創業者の生まれ故郷の地名に由来する。ニットに強みを持ち、上質でタイムレスな装いを得意とする。2018-19年秋冬シーズンのテーマは「SUITS YOU」。伝統的な英国テイストを現代的に磨き上げて新発想のコーディネートを提案している。
オフィスでの装いは、ちょっと油断すると、すぐにパターン化しがちだ。お約束的な存在のスーツだって、シーズンごとにバージョンアップしている。働きやすさを左右する着心地や、好感を引き寄せるスタイリングにも新提案が続いているから、この秋は着慣れたお仕事服を見直してみては。
ファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。多彩なメディアでランウェイリポートからトレンド情報、スタイリング指南などを発信。バイヤー、プレスなど業界経験を生かした、「買う側・着る側の気持ち」に目配りした解説が好評。自らのテレビ通版ブランドもプロデュース。セミナーやイベント出演も多い。 著書に「おしゃれの近道」「もっとおしゃれの近道」(ともに、学研パブリッシング)がある。
[nikkei WOMAN Online 2018年9月8日付記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。