所有地に無断駐車、賠償請求はできる 920万円判決も弁護士 志賀剛一

さて、そうなると結局、無断駐車をしている人を相手に損害賠償を請求していくほかありません。前述のとおり、無断駐車1回で一律1万円というような請求は難しいですが、周辺の駐車場の相場程度の駐車料金を請求することは可能です。無断駐車車両の写真を撮って時間などをしっかりと記録しておくことが肝要です。

所有者の氏名や住所を取得できる場合も

次に、いったい誰が無断駐車をしているのか、まずは相手を特定する必要があります。車の現在の所有者の氏名や住所は、最寄りの陸運支局や自動車検査登録事務所の窓口で「登録事項等証明書」を所定の手続きに従って請求することで確認しますが、これだけで一苦労です。

2007年10月以前であれば、この登録事項等証明書は車のナンバープレートに記載されている情報だけで誰でも取得が可能でした。しかし、同年11月からこの証明書の請求方法がストーカーや犯罪防止、個人情報保護の観点から変更され、この情報に加えて車検証と車のボンネットの中にあるエンジンルームの奥に打刻されている車台番号の明示が必要になり、車検証や車のボンネットの内部を見ることのできない第三者が証明書を請求することは基本的にできなくなりました。

ただし、私有地における放置車両の所有者・使用者を確認する場合には、車両の放置状況が分かる図面、車両の写真および放置日数などを記載した書面を提出すれば車のナンバープレートに記載されている情報だけで証明書が取得できる場合があります。なお、弁護士に事件として依頼すれば、弁護士は弁護士会を通じた照会で証明書を取得できます。

慰謝料と弁護士費用も認められる

無断駐車が1~数時間のことであれば数百円からせいぜい数千円の賠償であり、費用倒れになってしまいますが、先日、コンビニのオーナーが1年半にわたりほぼ毎日無断で駐車していた男性に対して損害賠償を求めた訴訟で、約920万円の支払いを命じる判決が出ました。

判決が出たのは、オーナーが車に何度張り紙をしてもやめなかったという事案です。オーナーサイドは周辺の駐車場相場から1時間当たりの料金を約700円と計算し、駐車料約780万円と慰謝料などの支払いを求めていたとのことです。相手が欠席したのでほぼ請求額がそのまま認められたようですが、注目すべきは駐車料のほかに慰謝料と弁護士費用が認められていることです。

不公平感、なお否めず

無断駐車も長い期間になれば、このように高額の賠償もありうるということを示した判決として世間の注目を集めました。とはいえ、このようなケースがレアであることは否定できません。オーナー側は張り紙を一枚貼るにも細心の注意を求められるのに比べて無断駐車をした人はペナルティーが軽く、個人的な感想としては不公平感が否めません。何らかの立法的解決ができないものでしょうか。

志賀剛一 
志賀・飯田・岡田法律事務所所長。1961年生まれ、名古屋市出身。89年、東京弁護士会に登録。2001年港区虎ノ門に現事務所を設立。民・商事事件を中心に企業から個人まで幅広い事件を取り扱う。難しい言葉を使わず、わかりやすく説明することを心掛けている。08~11年は司法研修所の民事弁護教官として後進の指導も担当。趣味は「馬券派ではないロマン派の競馬」とラーメン食べ歩き。
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