週末レシピ 行列飲茶のチャーシューメロンパンに挑戦
今、アジアを中心に大人気の「チャーシューメロンパン」をご存じだろうか。その名の通り、チャーシューあんをメロンパンのような生地で包んだもので、トロリとした甘辛味のあんとメロンパンのクッキー生地の甘みとサクサク食感が絶妙な新感覚の点心だ。
これは香港の1つ星ミシュラン店で、台湾やシンガポール、フィリピンなどアジアのほか、オーストラリア、ニューヨークにも店舗がある点心専門店「添好運(ティム・ホー・ワン)」の看板メニュー。正式名称は「ベイクドチャーシューパオ」。同店は今年の春に東京・日比谷にも上陸、オープン当日から行列店となり、そのおいしさは日本にも瞬く間に広まった(「春の日比谷に大行列 香港の『ミシュラン飲茶』を食す」参照)。
今回はチャーシューメロンパン風の点心をコンビニで手に入る食材で作ってみようという大胆な試みである。さっそく材料と作り方を紹介しよう。
<材料 (3個分)>
8枚切食パン 3枚 / 豚の角煮のレトルト 1袋 / マヨネーズ 15グラム / 薄力粉 30グラム / グラニュー糖 適宜
<作り方>
(1)食パンの耳を切り落とし、食品ラップの上に乗せる
(2)角煮を食べやすい大きさにカットしてからパンの上にのせる。このときレトルトの袋に残った煮汁(冷めた状態では煮こごり状になっている)も一緒にのせるとよい
(3)ラップごしに角煮をパンで包むようにして丸め、輪ゴムなどでラップを閉じ、30秒ほど電子レンジにかける(1個につき10秒くらいの計算。たくさん作るときは時間も多めに)
(4)次にクッキー生地を作る。ボウルにマヨネーズと薄力粉を入れ、スプーンなどでかき混ぜる。水をちょっとずつ加えながら、やっとひとつにまとまる程度の硬さにす
(5)(4)で作った生地の3分の1の量をラップの上にのせ、さらにラップをかぶせる。その上から手または麺棒で1ミリ程度の厚さに広げる。同じものを3つ作る
(6)伸ばしたクッキー生地の上に、あら熱が取れた(3)をのせて、ラップを使ってクッキー生地をくっつける
(7)皿に入れたグラニュー糖に(6)を押し付けるようにしてまぶす
(8)アルミホイルの上に(7)をのせ、10分ほどオーブントースターで焼く。グラニュー糖が焦げやすいので、途中でアルミホイルを上にかぶせるとよい
以上でできあがり。簡単&時間短縮のポイントとしては3つある。
1つはチャーシューあんを作る代わりにレトルトの豚の角煮を使ったこと。チャーシューを作る、あるいは買って、あんを作るのは手間がかかる。「ティム・ホー・ワン」のチャーシューあんを食べたときに「チャーシューというよりは角煮みたい!」と思ったので、これで代用した。
家に「五香粉」(中華料理によく使われる混合調味料。八角やシナモン、花椒、クローブ、フェンネルが入っている)があれば、それを少々加えると、より中華っぽい味になるだろう。
ポイントの2つめは小麦粉をこねて皮を作る代わりに食パンを利用したこと。ラップをして電子レンジにかけると、まるで「中華まん」の皮のようになる。
豚の角煮を包んで電子レンジにかけた時点で「肉まん」の香りが充満して、この時点で辛子じょうゆをつけて食べたいくらいだった。このテクニックを使うと、市販の「エビのチリソース」を包めば「エビチリまん」に、ピザソースとチーズを包めば「ピザまん」が簡単にできる。
3つめのポイントはメロンパン独特のサクサクのクッキー生地部分を作るのにマヨネーズと小麦粉を使ったこと。この部分は本来、バターと卵と小麦粉と粉糖などを使うが、材料をそろえるのも面倒だ。また、卵1個だと多すぎるのだが、半分使うにしても残りの卵液を消費するためのメニューを考えるのも面倒くさい。
このような少量の卵が必要なときはマヨネーズを使うと、無駄がなくて便利である。このテクニックは冷蔵庫の中に卵がないときにも使える。たとえば、てんぷらの衣を作るときも卵を入れる代わりにマヨネーズでOK。
3つのポイントのうち、最後の2つはほかにも使えるテクニックなので、覚えておいて損はない。
こうして簡単料理テクニックを結集した「チャーシューメロンパン『風』点心」は、本家本元のミシュラン店の味とはもちろん比べるべくもないが、「外はサクサク、中トロリ」の食感はかなり再現できているんじゃないかと思う。
さて、日比谷の「添好運」、オープンして半年近く経つというのにいまだに長蛇の列を成している。客の多くは日本在住なのか旅行者なのか、中国人のグループだという
中国の事情に詳しい知人によれば、彼らは知り合い同志ではなく、中国の対話アプリ「微信(ウィーチャット)」、日本でいうところの「LINE」を通じて、「ティム・ホー・ワン」で食べるために集った見ず知らずのグループなのだとか。誰かが「今日、添好運に行くけど、誰か来る?」と書き込む。すると、行きたい人が名乗りを上げる。
6人くらいのグループになれば、いろいろな種類のものが食べられるし、3時間の入店待ちも交代で1人30分待てばよい。非常に合理的なシステムで感心する。
そんなわけで、今後もしばらくはこの行列も続きそうだ。この「チャーシューメロンパン『風』点心」もホームパーティーなどで出せば、行列店の点心をイメージして手作りしようとした心意気やおもてなしの心はきっと伝わるだろう。もちろん、本家本元の味を食べて、自分なりにアレンジを加えてバージョンアップさせていただければ何よりのおもてなしになるに違いない。
(ライター 柏木珠希)
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