2018/9/27

フランスでは、出産のための入院期間は通常3~4日。取材時に病院の看護師に話を聞いたところ、出産後の入院中はパパが宿泊することも多く、簡易ベッドを用意するとのこと。宿泊しない場合でも、自宅に戻りママと赤ちゃんを迎える準備をして、日中は病室で過ごすという。

看護師によれば「抱っこの仕方や、おむつ替え、沐浴(もくよく)、ミルクの作り方、へその緒の処理なども夫婦で直接学びます。パパがいなければ、パパはいつ来るの? と聞いて、パパがいるときに一緒に学びます」。パパには「ママは疲れているの。あなたがやるのよ!」とハッパをかけるなど、できるだけパパに赤ちゃんの世話をしてもらうように仕向けるそうだ。

フランス在住の日本人女性、早馬愛さん(6歳と2歳の男の子のママ)に話を聞いた。

「おむつ替えと沐浴専用の部屋で、生まれたばかりのわが子でぶっつけ本番です。もちろん看護師さんが手伝ってくれますが、初めだけ。忘れた手順や詳細は回数を繰り返し、質問しながら慣れていきます。パパも私もしっかりここで覚えなきゃと思いました」

「他のパパも、やっと手伝える出番が来た! とみんな張り切っていました。日本のパパがウンチのときはおむつを替えてくれないと何度か聞いたことがあり、なんで? と私も夫もびっくりしました」

「(家では)『上手ね~』と褒めて『頼りにしてるよ!』と言うと『赤ちゃんは僕の体の一部のようなものだから、当たり前だよ』とすんなり即戦力になってくれました。産後で回復途中、母乳育児を軌道に乗せるまでのつらさがあるママよりも、体力的にも精神的にも強いパパの協力を得られることは大きいですからね」

愛さんのパートナーであるマシュー・ミションさんも「(自分の)妹が生まれたときに、父親が育休を取っていたから、自分も父親になり育休を取るのは当たり前と思っていた」という。

「基本、里帰り出産はしません。おばあちゃんおじいちゃんは、親が仕事で面倒をみられないときに出番がきます」(愛さん)。祖父母に全く手伝ってもらわないということではないが、「産後は夫婦で育てる」が基本だ。フランスでは新生児のパパの約7割(12年)が「男の産休」を取得している。取得していない3割の中には、男の産休として取得しなくても、自分で時間をやりくりしている個人事業主なども多い。ちなみに公務員に限れば、取得率はほぼ9割に達しているという。

フランスでは出産後12日以内に助産師の訪問診察を受けられるが、この医療費は医療保険で全額カバーされていて無料とのこと。赤ちゃんの体重を測ったり、子育ての悩みの相談に応じたりもする。この12日以内というのも、産後2週間の休暇をパパが取っている期間中だ。子育てが始まったタイミングで夫婦一緒に訪問診察を受け、質問や相談ができるのも大きな利点と感じる。

育児スタート時の男性の育休取得を当たり前に

日本の男性の育休取得率は5.14%(17年厚生労働省)。NPO法人ファザーリング・ジャパンで「育休は取りにくくても、有休を育休に充てているのではないか」と仮説を立ててアンケート(15年)を取ったところ、46%が有休を使って隠れ育休を取得していることが分かった。ただし、取得期間は3日以内が7割程度。日本では出産のための入院期間が5日間程度のため、3日間は出産時と退院時に使い切ってしまう。この時点で既にパパは育児・家事の戦力外といえるだろう。

フランスでの取材時に「男の産休の2週間を過ぎて復帰したらパパは通常の仕事モードに戻り、ママが育児と家事の主担当に戻ってしまうのでは?」とママたちに聞いたが、そのままパパも主体的に育児・家事を担ってくれるとのことだった。

日本の場合は5割以上が里帰り出産(育児情報誌「miku」アンケート、16年)というデータもある。出産後しばらくはママが祖父母のサポートを受けて子どもの世話に慣れていくため、ママとパパの子どもの世話の経験値に差が開いてしまうのは明らかだ。制度としてはもちろん日本でも可能だが、パパが育休を取得して子育てを夫婦でスタートする仕組みを企業風土としてもっと後押ししてほしい。

15~16年の2年間に死亡した妊産婦のうち、自殺が全体の3割、102人を占めたという調査が9月5日、国立成育医療研究センターなどの研究チームによって発表された。産後うつなどによる悲劇を防ぐためにも、夫婦で一緒に育児のスタートを切ることが重要だ。

高祖常子
 子育てアドバイザー、育児情報誌miku編集長。資格は保育士、幼稚園教諭2種ほか。リクルートで学校・企業情報誌の編集に携わり、妊娠・出産を機にフリーに。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事ほか。著書は「イラストでよくわかる感情的にならない子育て」(かんき出版)ほか。3児の母。