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しょうゆ専門店ずらり86種 再仕込みはアイスに合う

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「置いていない家はない」と断言してもいいくらい、我々日本人の食生活に深く浸透しているしょうゆ。日本の食料品店であれば、大型店でなくとも、多くの種類をそろえているのが普通だ。とはいえ、86銘柄をそろえ、そのすべてが味見できるといえば、驚くだろうか。松屋銀座(東京)に店舗を構えるしょうゆ専門店「職人醤油」がそうだ。広域から多くのしょうゆファンをひきつけ、話題になっている。

同店は、「日本の地域産業で何か新しいビジネスをしたい」と思った伝統デザイン工房代表の高橋万太郎さんが2007年、27歳で立ち上げたネット通販店舗が始まりだ。大学卒業後、顕微鏡メーカーで営業職を勤めているうちに、「日本らしさがあって、日々使うのだけれども、買うときにあまり深く考えないもの」にビジネスチャンスがあるのではとの考えを抱くようになったという。

ちょうどそのころ、しょうゆメーカー直営の販売サイトから母親が製品を購入した。しょうゆは「あまり深く考えないで買うもの」ではあるが、それはしょうゆについての情報があまり多くはないからで、母親のように調べて選んで買いたいという人もいる。しかも、まだそれほど盛んではなかったネット通販を、決して得意とはいえない年代の母親が利用したのだから、製品としての潜在力を感じのだ。

実際、ネット上でしょうゆについて調べると、信頼できて包括的な説明を載せているページは見当たらず、そうした情報を自分が提供すれば、しょうゆを売るチャンスがあると、思いを強くしたそうだ。

さっそく、当時住んでいた川崎市を拠点に、全国のしょうゆ蔵を訪ねることにした。「最初の1週間で30軒訪ねました。営業マン時代は1日5カ所の得意先を回るのを基本としていましたからたやすいことです」。

ただ、30軒回っても、しょうゆの品ぞろえや商品内容を決めきれないでいた。デパートの売り場を視察しても、買ってみたいと思う商品には出合えない。「いろいろな種類があっても味見ができるわけじゃないので、どんな味なのか分からない。試しに買ってみるには、どれも容量が多すぎる」からだった。

そこで「『5人家族が少なくとも3食分は使える』という条件に合った100ミリリットルにしようと思いました」(高橋さん)。こうして、30軒のうち7軒が合計8銘柄を100ミリリットルびんに詰めて卸してくれることになった。

しかし、通販サイトは自作で、宣伝もできず、全く売れない時期が続いた。「客観的に見て売れそうな通販サイトではありませんでしたね(笑)。通販サイトの売れる仕組みを考えるのではなく、本質であるしょうゆ自体にもっとフォーカスすることにしました。つまり、いろいろな種類のしょうゆを一挙に何十本も並べて見せたらすごいだろうと、取扱銘柄を増やすことにしたのです」(高橋さん)。

そして、ひたすら蔵元巡りを続けた。すると、50銘柄くらいになったあたりで、ぽつぽつと売れ始めた。銘柄数はその後も増やし続け、現在の86になったというわけだ。

2010年には生まれ故郷の前橋で実店舗を構えて対面販売も開始。対面販売の売り上げはあまり期待していなかったが、地元客には「少なくていいから、良いものが欲しい」と支持を得た。いろいろな種類が一度に楽しめるギフトセットも好調で、予想を超える展開となった。

2016年3月には、卸業者として取引があった松屋銀座からの誘いがあり、同店の地下2階に2店舗目をオープン。両方の実店舗で共通しているのは、すべての銘柄を取り扱っていて、すべて味見ができることだ。86銘柄もそろえているのだから、言葉で説明しても分かるものではない。

もっと言えば、86銘柄を横並びに出されて味見をしても、すべての味を見分けられるものでもない。そこで、高橋さんは自分なりのしょうゆの分類法を考案し、体系だてて味を説明することにした。それぞれ分類されたしょうゆに合う料理も紹介。それらをまとめた冊子もこれまでに8冊刊行し、店頭で配布した。

こうすることで、最初は初めて店頭を訪れた客が味見をして試しに買い、後日「おいしかったから、このしょうゆに合うレシピを教えて」「今度は別の系統のしょうゆを試してみたい」とリピートする光景がしばしば見られるようになったという。

リピート客は日本人にとどまらない。松屋銀座の店舗では、銀座という土地柄のおかげで、外国からの客が多い。「海外では、和食のなかでも特にすしの広がりによってしょうゆへの認知が深まっているように思います。お買い上げになる外国からのお客さんは、想像以上にしょうゆのことをご存じです」と高橋さん。今後も取扱銘柄をさらに増やし、しょうゆの情報発信を重ねていきたいと言う。

さて、多様なしょうゆを日々扱っている高橋さんに、店舗でも伝えているしょうゆの分類法とそれぞれのお薦めの使い方についても聞いてみた。高橋さんが提案する分類は、色が淡い順に、「白」「淡口(うすくち)」「濃口」「再仕込(さいしこみ)」「溜(たまり)」「甘口」の6つだ。

最も色が淡い白は、愛知県碧南市発祥。しょうゆづくりに使われる穀物はダイズとコムギだが、白はコムギを100%かそれに近い割合で用いる。コムギの発酵物らしいフルーティーな香りと、甘味と塩味が調和した味が特徴で、料亭などでよく用いられる。

「炊き込みご飯に使うと、コメの白い輝きが増します。グリーンピースを入れれば、その照りは素晴らしいものになります」と高橋さん。パスタの味付けに使えば、麺の色を黒ずませることなく、簡単に和風パスタに仕上げることができる。

次に色が淡いのは、その名の通り淡口。兵庫県たつの市発祥ということもあり、関西では、各家庭に濃口と淡口が常備してあり、用途によって使い分けていることが多いという。名前を聞くと味が薄いと思う人がいるかもしれないが、むしろ塩分濃度が高い。素材の色味を重視したい吸い物、煮物、茶わん蒸しによく使われる。

「さらにおすすめしたい使い方は、白身魚の刺し身や、高級な豆腐です」(高橋さん)。実際に合わせてみると、淡口のはっきりした塩味が、白身魚や豆腐に含まれているうま味を引き出す。クリームシチューの隠し味に入れると、味わいがしっかりしつつ、乳白色は損なわれない。

その次の濃口は、江戸時代に現在の千葉県で製法が確立。現在、全国の流通量の約8割を占める。とにかく万能。近年では、大手メーカーを中心に密封ボトルに詰められた、加熱殺菌処理をしていない「生(なま)」もよく売られ、加熱殺菌したものと比べると焦げ香ばしさが低い代わりに、フルーティーな香りがより楽しめる。

再仕込は山口県柳井市発祥。一度搾ったしょうゆを、再びこうじに混ぜて発酵させるため、この名が付いた。このつくり方の通り、熟成感やうま味が強い。「フライや肉料理のような『どろっとしたソースをかけたい』と思うものなら何でも。さらにアイスクリームやシフォンケーキに使うと、熟成感と香ばしさを添えてくれます」(高橋さん)。

溜は愛知県の知多半島発祥で、伊勢湾沿岸でよく造られている。白とは逆にダイズの割合が高く、仕込み水は少なめなので、うま味が豊富で凝縮されている。コムギを使わない銘柄ならば、「グルテンフリー食品」を求める人や、コムギアレルギーの人も使える。好きな人は何でも使うが、照り焼きに使うしょうゆとして用いると、きれいな照りを出せる。

高橋さんが提案する分類法の最後が甘口。ただしJAS(日本農林規格)には存在しない分類で、職人醤油では「アミノ酸液を用いているしょうゆ」としているが、味わいの特徴から言えば、甘味を特徴とするしょうゆのこと。九州が産地として有名だが、例えば金沢や山陰地方といった日本海側で、新鮮な魚を楽しむ地域でも広く造れている。「これも好きな人は何にでも使いますが、特に卵かけご飯、おかか、焼きおにぎりを一度試してみて」(高橋さん)。

しょうゆと一口に言ってもさまざま。そしてもうすぐやって来る10月1日は「醤油(しょうゆ)の日」だという。この機会に、まずは今回の6分類からそれぞれ一つずつ試してみてはいかがだろう。よく知っているはずだったしょうゆの世界がさらに広がることは間違いない。

(熊谷勇一)

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