逃げず、いつもフェアに向き合う 佐藤千佳さん
NEC執行役員(折れないキャリア)
パソコンなどの事業切り離しで連結売上高が縮小し、低迷からの脱却を模索するNEC。人事や組織開発のプロとして改革推進役に招かれ、カルチャー変革本部長に就いた。「いい戦略プランがあるのに実行力が足りない」と指摘。各部署が変革目標に沿って機能発揮できるよう組織づくりを急ぐ。まずは役員から評価制度を刷新。目標の達成度合いに応じて処遇に差をつける成果重視に改めた。
「私生活もキャリアもプランニングはしないたち」。短大卒後に入った企業で配属されたのが人事畑での歩みの始まり。最初の転機は20代での米国留学だ。仕事で英語を使う機会が増え自ら申し出て認められた。帰国後復職するも「グローバルな企業で仕事の幅を広げたい」と退職。米ニューヨークで3年間、週末などオフタイムに大学で学びつつ銀行などで働いた。
その後も何度か転職。「困っている状況を包み隠さず透明性を持って話されると『一緒にやらなくては』と情にほだされ動くタイプ」と自己分析する。節目は15年在籍し、複数の関係会社で人事責任者を務めた日本GE(現GEジャパン)グループでのリストラだ。
「飛び込んだ瞬間に引き返したくなるタフな経験だった」。激しい抵抗に遭い、経営陣が入れ替わるなか会社側の立場を1人で負う役回りに。「素の自分は上から命じる人間ではない。本来の性格と仕事が折り合わない」。経営上の必要性は理解できたが罵詈(ばり)雑言を浴び涙した。
それでも「リーダーとして責任がある。逃げてはいけない」と役割に耐えていたある日、厳しい通告のため重い気持ちで地方の役職者を訪ねた。話が終わる頃だ。「空港まで送りますよ」。思いがけない一言に力をもらった。誠意が伝わり相手の理解を得られたのだろう。以来「正しくやろう。話し合いながら一緒にやっていける仲間がいる」と自信を深め、「いつもフェアであれ」と説く。
日本マイクロソフトではダイバーシティ(人材の多様性)推進で力を発揮。経営やビジネスに結びつけたメッセージ発信で必要性を浸透させ、昇進・昇格者決定では「隠れている候補者探し」に尽力し女性リーダーを育てた。「人の力を引き出すのが喜び」だ。
趣味はラグビー観戦。「今うれしいのは会社にチームがあること」と笑った。
[日本経済新聞朝刊2018年9月24日付]
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