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魚は鏡に映る自分がわかる? 大阪市大が驚きの発見

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ナショナルジオグラフィック日本版

鏡に映った自分の顔に汚れがついていたら、ほとんど無意識のうちにぬぐい取ろうとするだろう。簡単なことのようだが、これができるのは人間以外にはオランウータンやイルカなど、ごく限られた賢い種だけだ。だが、大阪市立大学の行動生態学者、幸田正典氏らが小さな熱帯魚のホンソメワケベラ(Labroides dimidiatus)も自分の姿を認知できるようだという驚きの結果を報告した。この行動が観察されたのは、魚類では初めてだ。

動物に視覚的な自己認知の能力があるかどうかを調べるために、科学者はこれまでミラーテストを用いてきた。視覚的な自己認知とは、自己の外見を理解する能力のことだ。

ミラーテストとは、研究対象の動物の体にマークをつけて鏡の前に置くと、その動物が自分の体でマークを調べたり、触ろうとしたりするかどうかを観察する実験だ。これに合格すると、その動物は鏡に映ったマークが別の個体ではなく自分の体についているのだと理解していることになる。

地球上で、人間以外にこのミラーテストに合格したのは、知能が極めて高い類人猿やイルカ、ゾウ、そしてカササギだけである。だが最新の研究結果は、自己認識が恒温動物の哺乳類や鳥類だけの特権ではないかもしれないことを示唆している。

研究は2018年8月21日付けで論文投稿サイト「bioRxiv」(バイオアーカイブ)に発表された。まだ初期段階の研究で、ほかの科学者による査読を受けていないが、もしこの結論が認められれば、「自己」を意識する高度に発達した能力は、これまで考えられていたよりもはるかに多くの動物に備わっているということになるかもしれない。

幸田正典氏が率いる研究チームは、最初カワスズメ科のシクリッドでミラーテストを試みた。シクリッドは、既にミラーテストに合格した他の動物に見られる高い知能と共通する特性を持っていると考えられていた。

「なかには、類人猿のように顔見知りの魚を識別する賢いシクリッドもいます。まさに、個体識別能力があるということです」と、幸田氏は説明する。

ところが、ミラーテストでは残念ながら、鏡のなかの自分の姿を認知できなかった。

そこで、氏らはホンソメワケベラで実験してみた。人間の指の長さほどしかない小さな魚で、インド洋と太平洋の温暖で浅い岩礁に広く分布している。自分よりもはるかに大きな魚の角質や粘液、寄生虫を取り除いてくれる掃除屋として知られている。

ホンソメワケベラには、ほかの魚と比べて高い思考力があると考えられている。できるだけたくさんエサを得るために、あの手この手で「お客さん」を満足させつつ、相手をうまく操る。数百もの異なる生物を見分けて、それぞれとの関係を記憶しているかのような行動も見せる。

「腰が抜けるほど驚きました」

幸田氏の研究チームは、野生で捕獲した10匹のホンソメワケベラを、鏡のある水槽に1匹ずつ入れた。ほとんどの個体は、最初鏡に映った自分の姿を見て、口を大きく開けて激しく反応した。自分の縄張りにほかのホンソメワケベラがいると思ったようだ。

しかし、次第に行動に興味深い変化が現れ始めた。背泳ぎしながら鏡に近寄ってみたり、鏡めがけて突進し、直前で急停止してみたり、いつもとは違う行動を見せるようになった。この段階では、鏡の像と自分の動きが同じかどうかを確かめていて、恐らく、仲間のホンソメワケベラではなく自分自身を見ていることに気づき始めているころだろうと、研究者らは説明する。

いったん鏡に慣れさせたら、次に魚には害のない茶色のジェルを、8匹の皮下に注入した。喉など、鏡を見なければ自分では見られない部分にも注入した。すると魚は、鏡に映った姿を見て、マークがあるのに気づくと、寄生虫がついていると思ったのか、近くにある物の表面にその部分をこすりつけて落とそうとするような行動を見せた。

注目すべきは、鏡があって、マークに色がついていたときだけ喉をこすったという点だ。透明のマークを注入された魚はこすり落とそうとしなかった。また、鏡のない水槽にいた魚も、色のついたマークを注入されてもこすり落とそうとしなかった。鏡の中でマークが見えた魚だけが、こすり落とすような行動を見せたのである。つまり、鏡の中の魚は自分自身であると認知しているということだ。これを見た幸田氏は、仰天したという。

「マークのついた喉をこすりつけている動画を初めて見たときは、腰が抜けるほど驚きました」

さらに、魚たちは喉をこすった後も鏡を確認していた。マークのついた部分が良く見えるように自分の体の向きを変えて、「寄生虫」を落とせたかどうかを確認しているようだった。

とりあえずの合格

ホンソメワケベラの行動と認知能力を研究するスイス、ヌーシャテル大学の生物学者レドゥアン・ブシャリ氏は、今回の研究を称賛し、鏡の前で見せたホンソメワケベラの行動は極めて珍しいと語った。

「背泳ぎしたり喉をこすったりしているところは、これまで私も見たことがありません。明らかに、鏡の存在に密接に関係した新しい行動です」。なお、同氏はこの研究に関与していない。

幸田氏らが長い時間をかけて研究に取り組んだことも、ブシャリ氏は賞賛している。ブシャリ氏もホンソメワケベラが鏡の像に向けて口を大きく開けて威嚇する姿を見たことがあるが、その段階で観察をやめてしまい、さらなる結果にはつながらなかった。

しかし、ミラーテストの考案者で米ニューヨーク州立大学オールバニー校の進化心理学者ゴードン・ギャラップ氏は慎重な意見を述べている。ホンソメワケベラは、掃除屋という性質上、ほかの魚についている外部寄生虫が気になって仕方がないので、このような行動になったのではないかという。

「鏡でしか見られない別の魚についた寄生虫のようなマークを、少しばかり長く見ていたとしても、不思議なことではありません」

ギャラップ氏はまた、鏡の前で見せたおかしな姿勢についても、別の魚についていると思い込んでいるマークをよく見るために、相手の体を動かそうと働きかけている可能性があるという。

「マークのついた喉をこするという行動は、ほかの魚に対して、喉に寄生虫がついているよと知らせてあげているのでしょう」

幸田氏はこの説明に対して、喉をこすりつけた後に再び鏡を確認する行動は説明できていないとする。

「鏡の中の魚は自分であると認知しているという仮説だけが、私たちの実験結果のすべてを説明してくれます」

ミラーテスト自体に議論も

もしホンソメワケベラが本当にミラーテストに合格したのだとすれば、彼らには自己認識能力があると考えてよいのだろうか。そうかもしれないが、一方でテスト自体が私たちの考えていることを証明しているわけではないという可能性もある。

米ペンシルベニア大学の認知神経科学者のマイケル・ブラット氏は、今回の研究には関わっていないが、興味深く優れた研究であると評価する。

プラット氏は、研究結果は私たちが思っているよりも多くの動物に「自己」の感覚があることを示しているのかもしれないし、逆にミラーテストと「自己」認知はほとんど関係がなく、単に自分の体の境界線を定義づけるために鏡を使うことを動物が学んだだけかもしれないとも指摘する。

「どちらの結論が正しいかを知るのは不可能です。人間以外の動物は自分で報告できないし、体験したことを私たちに説明してくれないですから」

もしこのテストが本当に抽象的な自己認識を明らかにしているとしたら、ホンソメワケベラもさることながら、ひょっとするとこれまで考えてもみなかった多くの動物たちが、私たち人間と驚くほどよく似た心を持っているということかもしれない。

(文 Jake Buehler、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2018年9月14日付]

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