夫が定年再就職後の給料を入れてくれません
脚本家、大石静さん
夫は定年退職してから再就職しましたが、「今まで十分頑張った」「退職金がある」と給与のほとんどを自分の小遣いにしてしまいます。頑張ったのは分かりますが、気持ちがすっきりしません。言いたい嫌みも我慢して、フツフツしています。(徳島県・女性・50代)
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短い質問文では細かい事情が分からないのですが、お宅は十分な資産があり、ご主人はサラリーマンとしてもいい地位を得て、退職金もかなりの額をおもらいになり、その他に貯蓄もある裕福なご家庭ですね。
なぜ私がそう思うかと言えば、そうでなければ、ご主人は、この先稼いだお金は自分で使うとは、到底言い出せないと思うからです。
何の見通しもなく、お金を使ってしまうとしたら、それは相当な極楽とんぼで、経済感覚のないダメ男です。もしそうなら家出するか離婚するかして目を覚まさせないと破滅ですが、あなたも"これまで十分頑張ったことは認める"とおっしゃっているんですから、ご主人はきちんとした方で、いい加減な極楽とんぼではないと推察します。
2人で築いた資産によって今の生活を落とすことなくやっていけるなら、ご主人には好きにさせてあげたらどうでしょう。
「言いたい嫌みも我慢して、フツフツしています」とありますが、あなたは何に不満なのでしょうか。2人の時間を持つことを望んでいたのに、ひとりで外で楽しそうにしているご主人が、面白くないのでしょうか。
いずれにせよ夫婦なんですから、あなたも我慢するのではなく、私はあなたとこういう人生を望んでおり、ついては我が家の経済はこうあるのがよいと思うと、あなたの理想や経済哲学をはっきりご主人に伝えたらいいと思います。お金のことをきちんと話し合えない関係に、本当の信頼は生まれませんから。
日本では、お金のことをとやかく言うのは品が悪いという風潮があります。テレビドラマの世界でも、ギャラの話はいつも後回し。脚本の完成後、予算がないからと値切られたりして情けない気分になることもあります。一方、外国ではギャラの話は当然、先にあります。経済的裏付けの元に信頼し合って仕事をするシステムです。
ガラパゴス化した日本の独特な価値観が、ご夫婦の間にまで溝を作っていることを、とても残念に思いました。
フツフツとしていないで、話し合ってください。どうしたいのか、ディスカッションしてください。そのディスカッションを拒否する夫なら、その時、再度ご相談に乗ります。
[NIKKEIプラス1 2018年9月22日付]
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