
ここでは目線をちょっと変えて、スーツにとっての素材、“生地”の話。語るのは業界を代表するお三方。“生地の鉄人”たちのおりなすとっておきの話をご賞味あれ。

ニッポンの生地賢者お三方の知見を拝借!
スーツを料理に例えるならば、生地=素材。どんなに調理が巧みでも、素材が自分の用途に合っていなければ台無しになってしまう。ではその“素材”はどう目利きすれば……? ということで、各方面で辣腕を振るうお三方にMEN'EX(M.E.)から質問を投げかけ、オススメの生地を選んでいただきつつ、その生地の持つ魅力について存分に語っていただく。その話の行方は?
【 M.E.からの質問1 】基本にして永遠“ネイビーとグレー”について

■ANSWER for Q.1 NAVY
▼ SATO'S COMMENT 「紺の色が非常に美しい発色になるんです」
「紺の場合は、発色、光沢の出かたが重要だと考えています。その点、これはきれいな紺色で、お客様の満足度や反応が素晴らしい。一般的に好まれるネイビーです」(佐藤)
▼ KOUZUKI'S COMMENT 「時代にとらわれない深い色が楽しめます」
「尾州の老舗メーカー御幸毛織と弊社で開発した生地です。日本製ならではの品質と色合いがポイント。最上のクラシックとなりうるネイビーといえます」(上月)
▼ KAGAMI'S COMMENT 「百貨店の視点だとシワ耐性は欠かせない」
「ハダースフィールド社のハーディ・ミニスブランドのものでスーパー150’sの細糸による52双糸です。ファインな素材なのにハリコシがありシワに強いのが魅力です」(鏡)

■ANSWER for Q.1 GREY
▼ SATO'S COMMENT 「間違いのないグレーといえばコレ」
「これもお客様に評判の高い、いわゆる“普通にいい”生地。1mあたり250gのツイル素材で、日常的に使える強度がありながらしっかり軽い。日本人好みです」(佐藤)
▼ KOUZUKI'S COMMENT 「御幸毛織製のニッポンの名生地」
「ネイビーと同じくこの生地を推薦します。普遍的ないいもの=永遠なクラシックと考えているのですが、スーツの歴史に欠かせないグレー系の色柄が揃っています」(上月)
▼ KAGAMI'S COMMENT 「太糸なので立体的に仕立てやすく、かつシワにもなりにくい」
「ファインな原料をあえて13ozのウエイトにしているところが◎。原料がいいので染料がきれいにのります。ただビスポーク向けの生地なので色のバリエが少なめ」(鏡)
◇ ◇ ◇
佐藤 紺色は濃淡によって表情に深みが出る色。ですので、ネイビーの場合は特に発色の美しさが選びの基準となるような気がします。その中で基本の一着となれば、老若男女問わず受けがいい『ドーメルのアマデウス』。
鏡 発色の件は同感です。もちろんグレーでもそれは大事。ですのでグレーで僕は『H.レッサー』のラムズゴールデンベールのツイルを推薦します。ファインな原料を太引きして13ozというウエイトにしており、発色がよくハリコシがあって仕立てやすいんです。
佐藤 立体的に服を仕立てるのに向いていますよね。僕もハリコシがある生地の方が好み。
鏡 商売柄、シワや股擦れの摩耗は避けたいのですが、その点13ozは安心。でもよい原料なので染料がきれいに乗って、美しい発色です。繊維長が長いものだけがいい原料ではなくて、よい油分を含んでいることがポイントなんです。
上月 一着目なら御幸毛織(*1)さんと共同開発した『グランドマーキー ヴィンテージクラシックス』をお薦めします。クラシックな色と柄を日本品質でというコンセプトなので、紺とグレーで時代にとらわれない一着が作れます。
佐藤 普遍的なよさなら、グレーでは『ロロ・ピアーナ』のスーパー150’s。高番手系の生地です。
(*1)御幸毛織 尾州地方で創業百年超を誇る毛織メーカー。国内最高峰と評される。

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