司会 西川さんから、「ボランティアも運営側もハッピーならそれでいいではないか」という話がありました。本間さんはどう考えますか。

本間 東京五輪のボランティアで無償が固定化されてしまうと、これ以降のあらゆるイベントが無償になってしまいます。レガシーという気持ちの悪い言葉でくくられて。国はボランティアが、国民が、無償で喜んで働く仕組みをつくりたいんです。ボランティアの公式資料にも載っていますが、21年にはワールドマスターズゲームズがあり、大阪万博も決まれば(無償ボランティアの対象に)加わってくるでしょう。

本間龍氏は組織委が反論しない理由として「官僚体質」をあげた

西川 私もレガシーという言葉はけっこう使うんですけどね。

本間 レガシーという言葉自体はいいけれど、彼らが使うと気持ちが悪いんです。

西川 確かにそれはね。分かります、言っていること。やはり組織委の問題はあります。たとえば国立競技場。当初のデザインが撤回されましたが、リーダーシップとる人がいなかったから、ゼネコンからの建設費の要求だけがどんどん上がっていっちゃった。

その後も、なぜそういうことになったのかきちっと明らかにせずに、リーダーシップをとって整理しない。官僚体質的なところがすごくあります。どうしても出向者で構成しているから、出向元を見ながらの仕事になってしまう。出向者体質の根性を捨てろと言いたいです。プロとして、ここに命をかけるんだという気持ちでやってもらいたい。

ロンドンの組織委はプロが集まっていました。これは自分の一世一代の大舞台だ、自分がプロとして全力を尽くして、次のキャリアにつなげるんだという意識を持ってやっていました。それと出向者の考え方の違いはすごくあると思います。

責任者が腕まくりして発言すべき

本間 それにしても組織委には電通がついているのに、なぜこんなに反論が下手なんでしょうね。海外だとスポークスマンがいるんじゃないですか。

西川 そう。もう少しきちっとね。ロンドン五輪では、金メダルをとった有名な陸上選手で組織委のトップだったセバスチャン・コー氏が、きちっと発言していました。責任ある人が官僚的な話だけじゃなくて、腕まくりして言わなきゃ駄目なんです。

本間 僕もそう思います。(組織委は)僕の本でさんざんたたかれていますが、「そんなことねえよ」とちゃんと反論したらいい。

西川 そうそう。なんでしないのかなあ。

本間 たぶん、みんな官僚体質で、おれがやらなくていいやと。自分の顔をさらして、そんなことしなくても、2年後にはいなくなっちゃうし。

西川 そう。2年後いなくなっちゃうって、出向者のメンタリティーだと思う。さっきも言ったけれど、これは本当にすごく重要と思っていて、リーダーシップをとるべき人がとらないと絶対にうまくいかない。ロンドン五輪の成功はそこにあったと思います。

本間 言うべきことは言わないで、いきなりサマータイムやれとか。

西川 日本ではサマータイムやっても駄目でしょう。欧州は北の方にいくと夏(の明るい時間)がすごく長くなるからサマータイムも有益だけれど、日本はそうではありません。

本間 日本は経済界がうんと言わないと何も動かないから、たぶんやらないと思います。(五輪に)間に合いませんよね。

西川 中小企業が、五輪・パラをきっかけにもっと頑張ってほしいです。日本は大企業中心で、契約とるときも大企業がとらないと中小に回ってきにくい。ロンドン五輪では中小企業でも入札できるように大きなプロジェクトも分割したんです。中小企業を本当にサポートしてくれる国だから。いろいろ勉強するところ、たくさんあるんですよね。

(文・構成はオリパラ編集長 高橋圭介)

西川千春
1960年生まれ。慶応大法卒。アメリカ国際経営大学院(現在のアリゾナ州立大サンダーバード国際経営大学院)で国際経営学修士(MBA)取得。90年、日本精工の駐在員としてロンドンへ。2005年、経営コンサルタントとして英国で独立。五輪ボランティアとして12年ロンドン、14年ソチ、16年リオの3大会に参加。東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会のボランティア検討委員。著書に「東京オリンピックのボランティアになりたい人が読む本」(イカロス出版)。
本間龍
1962年生まれ、著述家。89年博報堂に入社。2006年に退社するまで、一貫して営業を担当。その経験をもとに、広告が政治や社会に与える影響について著作を発表。最近は憲法改正の国民投票に与える広告の影響力について調べている。五輪ボランティアに関する著書として「ブラックボランティア」(角川新書)がある。

対談はイカロス出版とKADOKAWAの共催により、9月17日に東京都世田谷区の書店「本屋B&B」で開かれました。今回の連載では発言の内容をできる限りそのまま掲載しますが、一部を割愛したり、順序を入れ替えたりすることもあります。次回(「酷暑の五輪、ボランティアは危険? 頑張りすぎは禁物」)は、ボランティアをやるかやらないか迷っている人に対するメッセージです。