リノベで街が復活 かわいくなった熱海を歩く
水津陽子のちょっとディープ旅
最近、人気が復活している静岡県・熱海。人気の秘密は、若者や女性をひきつけるこれまでにない街や宿の魅力です。話題の熱海銀座には行列が絶えない話題のショップや、若者や外国人が集まるゲストハウス。熱海の温泉には、女性に人気の和モダンなオーベルジュなど新たな宿も続々オープン。新たな熱海の楽しみ方を紹介します。
活気を取り戻した「熱海銀座」は街歩きの基点にも
東京から新幹線で45分、古くは温泉保養地や別荘地として人気を誇った、日本三大温泉の一つ、熱海。しかし1970年代を境に徐々に衰退が進み、ピーク時に年間500万人超を誇った宿泊客数は年々減少。2011年度には過去最低の246万人を記録しました。
そんな熱海が復活していると話題になり始めたのは14年ごろ。15年度には宿泊客数308万人と、2001年以来14年ぶりに300万人台を回復しました。
復活のきっかけの一つとなったのが、シャッター通りだった熱海銀座商店街に12年にオープンした「CAFE RoCA」から始まった「リノベのまちづくり」です。
証券会社だった空き家をリノベーションしたカフェは無料Wi-Fiを備え、テラス席はペットもOKという、それまで熱海になかったオープンな空間。クラウドファンディングを利用して15年にオープンした「熱海ゲストハウスMARUYA」には、お金だけでなく趣旨に賛同した「atamista(熱海と関わり暮らす人)」が約200人集まり、リノベーションにも多くの人が参加しました。ここをまちづくりNPOの拠点として、さまざまな熱海活性化のプロジェクトが現在進行形で展開されています。
18年には今、大人気の熱海プリンの2号店を商店街の中に誘致。熱海駅近くにある1号店とは趣の異なるポップでカラフルなショップは、看板商品の熱海プリンのほか、2号店にしかないメニューも多数をそろえます。
店内のカフェスペースは、タイル張りの浴槽や風呂桶のテーブルなど、お風呂の中にいるようなしつらえ。メニューが白木の風呂桶に入れて提供されるのもキュートで、ほんわかした気分になります。
熱海の温泉をイメージしたちょっぴりしょっぱいサイダーに、熱海の花火をイメージしたカラフルなゼリーが浮かぶ「熱海ランデブー」などインスタ映えするメニューも多く、平日でも行列ができる商店街一の人気店となっています。
熱海銀座商店街は、街歩きの基点としても絶好の場所にあります。商店街からゆるやかに下る坂の先には熱海湾が広がり、熱海海上花火大会の観覧場所にもなる親水公園のスカイデッキから、海水浴で人気のサンビーチへ続く道には、14年にできた熱海の新名所、緑や花々に彩られた美しい散策路「ジャカランダ遊歩道」があります。
逆に、坂を1キロメートルほど上がった先には、国指定天然記念物で樹齢2000年を超える御神木が願いをかなえてくれるという伝説などで人気の「来宮神社」があり、道の途中では街のあちこちで噴き出す熱海七湯の一つ「大湯間欠泉」や熱海温泉を守護する「湯前神社」を見ることもできます。
商店街の裏路地を南に600メートルほど進むと、大正時代に別荘として建てられ、後に旅館となって谷崎潤一郎や太宰治など多くの文豪に愛された「起雲閣」の1000坪の庭園や、歴史的な和洋の建築にも出合えます。
熱海駅ナカの商業施設「ラスカ熱海」や、駅前に広がる「平和通り商店街」「仲見世通り商店街」は、観光客向けの店舗が立ち並び、多くの人であふれ返っています。店頭で湯気を上げるおまんじゅうや練り物など、食べ歩きも楽しいものです。さらに、そこから一本中に入った名もない路地には、よりディープでこだわりを持ったカフェやショップが。ユニークなお店と出合える路地裏も、熱海散策の楽しみの一つです。
温泉の宿もリノベで相次ぎオープン
一方、熱海の温泉はここ2年で10軒のホテルが新たに開業しました。その中には、廃業したホテルや企業の保養所などをリノベした宿も少なくありません。
「大江戸温泉物語」は12年に熱海エリアで1号館をオープンしたのに続き、16年には「ホテル水葉亭」を取得、2号館としてオープンしました。
16年にオープンした「熱海TENSUI」は、企業の保養所だった施設をリノベした、客室わずか19室の和モダンオーベルジュ。18年「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の「日本の小宿10選」にも選ばれた、女性に人気の宿です。
スタンダードでも31平方メートルと客室はゆったり。オーベルジュならではの食事は、お一人様でも快適に過ごせるよう席を配置しています。夕食の創作和食会席は目にも鮮やかで、デザートのクレープシュゼットは席に来て焼き上げてくれます。朝は炊き立ての土鍋ご飯で、純和風の朝食を満喫できます。
湯当たりのやわらかい温泉は、大浴場やジェットバスのほか、岩盤浴も。川のせせらぎが聞こえる中庭のレストランテラスでゆっくりくつろぎ、夕食までの時間は、フリードリンクとオードブルが並ぶレストランのコーナ―で、スパークリングワインや白・赤のワインが自由に楽しめます。
01年に廃業し、長らく廃墟となっていた熱海海岸の前に建つ大型ホテル「つるやホテル」は、中国系企業が買収。19年には総工費約100億円をかけ、全室スイートルームという熱海初の五つ星ホテル「熱海パールスターホテル」の開業が予定されています。
合同会社フォーティR&C代表。経営コンサルタント。地域資源を生かした観光や地域ブランドづくり、地域活性化・まちづくりに関する講演、コンサルティング、調査研究などを行う。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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