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日仏女性スターシェフが語る 料理界の働き方改革事情

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NIKKEI STYLE

グルメ情報があふれ、スターシェフの店に予約が殺到する。消費者の「食」への関心は高まる一方だが、働き手としての人気はいまひとつ。上下関係が厳しく、肉体的にハードな印象が強く、女性比率もまだ低い。第一線で活躍する女性シェフはどんな働き方をしているのだろうか。南仏の「オーベルジュ・ドゥ・サンレミ・ドゥ・プロヴァンス」オーナーシェフのファニー・レイさんと、三重県志摩市の志摩観光ホテル総料理長の樋口宏江さんに、女性シェフの労働事情について聞いた。

◇  ◇  ◇

――女性オーナーシェフは仏料理界でも珍しいと聞きます。

ファニー・レイ 「女性オーナーシェフはフランスで2人だけです。経営するオーベルジュは7年目に入りました。スタッフは厨房に8人、レストランに7人、受付に1人、ホテル担当が2人。夫がパティシエとして一緒に働いています。料理界は依然、男性社会だと感じています。シェフだけみても、たとえばフランスの(ミシュランガイドの)星付きシェフは、男性は650人いますが、女性は14人だけです」

――志摩観光ホテルが属する都ホテルズ&リゾーツで、女性総料理長はただ1人です。

樋口宏江 「入社した26年前も女性の先輩がおり、うちの料理部門は他のレストランよりは女性が比較的多いと思います。パートも含めて50~60人が働いているなかで女性は10人ほど。男女の分け隔てなく仕事をさせてくれます。一般には料理界は女性には厳しい、とよく聞きますが、結婚や出産で仕事をやめる人が多いのが実情です。門戸が開かれて女性の料理人が増えても、続けるのは難しい」

体力的にハードだが「できる」と証明すればチャンスも

――理由はやはり体力的なことでしょうか。

レイ 「楽しい、でも、きつい職場です。私は以前、左脚を手術し、今度帰国したら右腕の靱帯を手術します。しょっちゅう重い物を持つので痛めました」

樋口 「本当に丈夫な体に感謝しないと。学校の同期で体を壊してやめた人がたくさんいますから。この仕事はしてはいけない、という差別はありませんが、最初から女性にできるのか、と見られていますので『できます』ということを示して認められて、次の仕事ができる」

レイ 「そう。女性であるがために『できる』という証明をしなければなりません。でも、一度証明しさえすれば、さまざまなチャンスが与えられます」

――お2人はどのようにキャリアを積んでこられたのですか。

樋口 「母が料理好きで、お菓子作りを手伝い、おいしいねと声をかけてもらうのがうれしくて、仕事にしたいと思いました。高校卒業後に専門学校で1年間フランス料理を学びました。19歳で就職先を探すと女性が働ける職場が少なく、学校の先生のすすめで入社しました。以来、ここ一筋です」

レイ 「私も料理人を目指したのは母の影響。好奇心が強く、棚でスパイスを見つけたら、においをかいだり、味わったりしていましたね。15歳でフランス各地で料理の修業をはじめました。パリのリッツホテルで受け入れてもらったのが18歳。本格的に料理をはじめたのはここからです」

――海軍で働いた経験もあるそうですね。

レイ 「父が海軍で働いていたので、私も船に乗りたいという夢を持っていました。15歳で働き始めたのと同時に、海軍の入隊申請もしました。ところが女性の受け入れ準備に時間がかかったため、それを待つ間、各地のレストランで働いていたのです。入隊すると消防・救急で1年働きました。海軍で経験した規律の厳しさは今、役立っていますね」

――料理界は長時間労働が当たり前のようになっていると指摘されてきましたね。

樋口 「若いころはどれだけ働こうが、誰も何も言いません。料理人を志す若い人はみな、知識や技術を増やすために必死。何時間働いた、などと意識しませんし、早く帰りなさい、なんて言う人はいませんでした。今は働く時間が決まっていますので、仕込みが長引いたときなど、あなたは帰りなさい、と言わなくてはいけません」

レイ 「私は37歳ですが、修業時代は何時間でも働きました。仕事を覚えなければならなかったからです。オーナーとなった今、社会が求める仕事の条件を、私とは異なる世代のスタッフに提示しなければならない立場になりました」

――従業員の働く時間に目配りが必要ですね。フランスでは週35時間労働が法制化されています。レストランは週39時間と定められています。

レイ 「法制度を守り長時間労働にならないよう、ランチ営業をやめました。ディナーだけにして、スタッフには午後3時に来てもらう。そうすれば午前中は休んで元気な状態で深夜まで働いてもらえます。ただ、スタッフには、暇なときは休んでいいから忙しいときは働いてね、と話しています」

女性が働き続けやすい職場づくりを議論

――長時間労働が改善されれば女性も働きやすくなるのでは。料理界では働き方改革は進んでいますか。

樋口 「数年前、女性にとって快適な職場づくりをしようと、プロジェクトが立ち上がりました。管理職の女性が中心となり、女性が働くうえで困っていることを吸い上げ、意見交換をします。子育てしながら働くことの大変さといったことをディスカッションします。具体的な成果はまだ出ていない段階ですが」

レイ 「環境改善も大事です。昔は調理場が地下にあったり、冷房がなかったりと働く環境が悪かったんです。なるべく快適であるように厨房リフォームをしています。厨房ではなるべく女性と男性のバランスが取れるようにしています。そのほうが雰囲気がいいですから」

――樋口さんもレイさんもともに2児の母。職場の協力が欠かせませんね。

樋口 「子供が病気をして保育園にすぐに迎えにいかないといけないこともありました。職場全体が理解し、行っておいで、私がやっておくよ、と協力体制をとれないと、本人がつらい。総料理長になり、カバーし合える職場づくりを意識しています。料理界では子育て中の女性も増えていますが、環境が改善されているかというと、速度は緩やか、という気がします」

レイ 「長男は15歳になりますが、私の場合は幸いにも、義母が子育てを手伝ってくれましたので。それに夫の協力があってこそ。なければ大変でした」

若手を育てるには気遣いが必要

――料理人のなり手が少なく、人材不足が問題となっています。

樋口 「志摩は東京から4時間かかり、都会から離れた田舎ですので、募集にはハンディがあります。都会からやってくる人の中には、派遣で期間が決まっていても、とても生活できない、何もなさすぎる、と帰ってしまう若い人もいます」

レイ 「毎日のように調理学校に行っています。生徒に、あなたたちは世界で一番すてきな仕事を選んでいるんですよ、と言って激励しているんです。特に若い女の子たちには、あなたたちの居場所はここにあるよ、と話します。今、シェフになりたい子が少ないのです。厨房に入りたがらないだけでなく、サービスも嫌。ですから、若い人の見本になりたいですね」

――現代では特に、若手への気遣いが求められます。

樋口 「自分の時間を使って、どこまでも仕事を追求しようという人は、我々が若かったころに比べて減っているようです。親から叱られたことがないという世代が、先輩に怒られて心が折れてしまい、仕事に出てこられなくなる。強い気持ちを持っている人が少なくなっています。ほかの業種に比べればましかもしれませんが。女性には、できないことには無理しないで、手伝ってもらえばいいよと言いますね」

レイ 「仕事は山ほどありますよ。でも若い子と働くときにはとても気を使うのです。我々がやってきたような努力はしたがらず、時間感覚がきっちりしている。ですから、時間がきたら帰りなさいと言う。正直、若者は、なまけもの。両親はもっと子どもに厳しくしないといけませんね。学校は働き過ぎるなと言い、店は長時間労働にも環境にも気を使う。だから、時間を超えて物事を頼もうとすると、もうできない、と簡単に言ってしまう子が増えているのです。『アタンシオン(気をつけて)、アタンシオン、アタンシオン』というのを、やり過ぎたかもしれません」

――スターシェフが脚光を浴びる時代。どうすればもっと料理界で働くことに目を向けてもらえるのでしょうか。

樋口 「きらきらして活躍しているシェフの姿をみて、自分もそうなりたいとは思うようです。ただ、実際の仕事は地味なものの積み重ね。そこで辛抱が続かない。日本でも調理を目指す生徒は減っています。そうした中で女性の比率が高まっているのは確か。男女の性格を比べると、どちらかというと辛抱強いのは女性なんです。何が何でもやってやろうと思う気持ちがある女性だったら、働きやすい職場を整えれば、長く仕事ができるのかなと思いますね」

――女性が増えるとセクハラやパワハラが問題になりそうです。

レイ 「個人的にはセクハラ、パワハラを受けたことはありません。理性ある方々と働くチャンスに恵まれてきましたから。ただ、厨房で話す言葉は荒っぽいことが多く、女性が聞いて、心地よい言葉にはなっていないかもしれません。私の厨房で何が起きているのか、常に目配りしています。むりやりやらせるようなことは時代に合いません。時代は変わり、これから職場環境はどんどんよくなっていくのではないでしょうか」

樋口 「私も常に注意を払っていますね。とりわけ自分がいないときの厨房はどうなのか、と。会社ではハラスメントに関する研修がありますから皆認識はしています。ただ、職場では時に、厳しい口調で注意されることもあります。その後にきつい言葉で人格を傷つけてしまうようなことを言えば、今の子たちは耐えられません。昔のようにありがたい指導だなんて誰も思いませんから、適切な言葉による指導を自分たちがやっていかなければなりません」

(聞き手は編集委員 松本和佳)

ダイナースクラブ フランスレストランウィーク
 全国で600を超す仏料理店が参加する。ランチ2500円または5000円、ディナー5000円(いずれも税・サービス料込み)の一律料金でスペシャルコースメニューが楽しめる。9月22日から10月8日まで開催。問い合わせはhttps://francerestaurantweek.com/

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