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カリスマの直言

投資で社会課題を解決 利益と両立してこそ(渋沢健) コモンズ投信会長

2018/10/1

写真はイメージ=123RF
「リーマン危機から10年がたち、利益第一主義だった機関投資家の行動様式は様変わりした」

2008年9月15日の米リーマン・ブラザーズ破綻を契機とした世界金融危機から10年。利益第一主義だった機関投資家の行動様式は様変わりした。環境や社会、企業統治に配慮して投資先企業を選ぶ「ESG投資」の広がりもその一つだろう。

■製薬会社に医薬品アクセス改善を促す

最近、画期的な動きがあった。第一生命保険が9月12日、「Access to Medicine Foundation」という財団の投資家宣言の趣旨に賛同し、署名すると発表したのだ。同財団はオランダを拠点とする非営利団体で、開発途上国の医薬品アクセスの改善に向け、世界20社の製薬会社を総合的に評価し、医薬品アクセス・インデックスとして公表している。

同財団の投資家宣言に署名した機関投資家は同インデックスを投資に反映させることで、製薬会社の取り組みを促す。同宣言に日本から署名した機関投資家は三井住友信託銀行に続き、2社目(全世界では73社)だ。機関投資家が共同で企業に特定の行動を迫ることを「集団的エンゲージメント」というが、両社は日本におけるフロントランナーであるといえよう。

ESG投資は企業の持続的な成長を推進する長期投資である。持続的な価値を創造できる企業は、安定的に利益を生み出せる可能性が高い。そのような企業に長期的に投資すれば、機関投資家も収益が期待できる。持続的な価値創造には健全な社会という土台が必要だ。社会的課題の解決はこれからますます資本市場において重要なテーマになるであろう。それならば、最初から積極的に取り組んで経験値を高めた方が賢明だ。

■経済リターンを軽視してはならない

社会的課題の解決を主眼とした投資を「社会的インパクト投資」と呼ぶ。社会的インパクト投資はESG投資とは異なるという主張もあるが、私は共通点に注目したい。社会的課題の解決のためには経済的リターンを軽視してはならないということである。十分な経済的リターンがなければ、社会的インパクトの持続可能性が揺らいでしまうからだ。

その点で、10年前の9月に起きたリーマン・ショックは利益追求しか考えなかった金融機関や機関投資家に反省をもたらし、彼らが社会的インパクト投資に目を向け始めた源流といえる。ただ、私自身にとっての社会的インパクト投資の原点は17年前の9月である。01年9月11日、米ニューヨークの世界貿易センターで約3000人の犠牲者を出した同時多発テロが起きた忘れられない日だ。

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