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インタビューに答える指揮者の三ツ橋敬子さん

インタビューに答える指揮者の三ツ橋敬子さん

数十人から成るオーケストラを1本の指揮棒でまとめ上げ、観客も巻き込んで「場」をつくる。自分では一音たりとも、発することなく。指揮者という職業は、ビジネスパーソンから見れば少し不思議な「リーダー」だ。女性指揮者の三ツ橋敬子氏は、いまだ男性が多数を占める業界で、どのようにリーダーシップを育んできたのだろうか。(前回の記事は「震災・暗殺… 『音楽の力』信じる女性指揮者の原点」)

カリスマ指揮者は「努力の人」

三ツ橋氏のキャリアに大きな影響を与えたのは、大学院時代より師事し、デビュー後の2009年からはアシスタントとしても付き添った世界的指揮者・小澤征爾氏だった。

若手音楽家を支援する財団法人ロームミュージックファンデーションの講習で、初めて小澤氏の指導を受けたときのことを、三ツ橋氏は次のように振り返る。

「指揮に求める精度の高さに、度肝を抜かれました。私や他の受講生の指揮を見て、『違う』とか『ダメだ』とか、きっぱりと指摘するんです。でも、それだけ。おそらく、音楽への感度が全く違う。例えば、受講生が10分の1秒の世界で指揮棒を振るタイミングを取っているとするなら、小澤先生は1000分の1秒かそれ以上の世界にいる。言語化できない領域のことを、体で感じる。厳しい指導でした」

ボストン交響楽団、ウィーン国立歌劇場の音楽監督を務め、一流オーケストラと数々の公演を成功に導いてきた小澤氏。その名に違わないエピソードだが、三ツ橋氏はこんな横顔も目撃していた。

「(指揮者というのは)勉強しなきゃ、勉強しなきゃ、と口癖のように言われましたね。小澤先生ほどの指揮者がその言葉を口にする。これ以上ないくらい自分を追い込んで指揮台に立つ。その姿を目の当たりにして、尊敬という言葉を超越する感情を抱きました」

世界が認める「カリスマ指揮者」は、努力の人だった。音楽に対して、自分に対して、どこまでもストイックなその背中で、オーケストラを率いていた。

「指揮台ってね、自分が『大丈夫』と思えないと立てないんですよ。身をもって実感しているからこそ、教え子にも言い含めたのではないでしょうか」

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