――トランプ米大統領は、長く締めた赤いネクタイが記憶に残ります。

「政治家はネクタイで強さとか主義まで主張しちゃいますからね。日本の元首相では小泉純一郎さんのグリーンが印象的。海部俊樹さんは水玉ネクタイをブームにしたほどセンスがいい。服装に迷うとオヤジ(石津謙介さん)に電話してきたこともあったようです」

――ちなみに石津謙介さんはどんなネクタイがお好みでしたか。

「表向きはトラッドですが、本人はものすごくヨーロッパが好きで、ヨーロピアントラッドだったの。ですから、幅の広い、柔らかい素材のイタリアっぽいネクタイが好きでしたね」

■「沈ませるネクタイ」と「浮かせるネクタイ」

――ネクタイは本来、自分の思いや気分を反映させながら個性を出すアイテムなのですね。

「自分はネクタイでこんなことを表現したいんだ、という意図が感じられるといいですね。そうした基本を踏まえたうえで、僕は2つの基準でネクタイを選びます。『沈ませるネクタイ』と『浮かせるネクタイ』です」

「男の服装で唯一、遊べるアイテムがネクタイです」と語る石津祥介さん。この日、選んだのは「沈ませるネクタイ」

――どういう意味でしょう。今日の石津さんはグレーのフラノのスーツにチャコールグレーのウールのネクタイを合わせていますが、これはどちらですか。

「これは沈ませるネクタイです。沈ませるとはネクタイの存在を感じさせないということ。これも一つの主張。タイには小さなドットが入っていますが、遠くから見ると無地に見えます。ライトグレーのスーツそのものが個性が強いから、タイは控えめにしました。おしゃれな髪形に変えた、メガネをかけて顔にアクセントをつけた、というときも沈ませるネクタイを選ぶ。ポケットチーフを目立たせたいときも同様です」

――それでは、浮かせるネクタイとは。

「ネクタイそのものを見てほしいという、目立つネクタイのことです」

――こちらは会社員の安藤健治さんの、ネクタイを意識した秋のスタイルです。

「これは浮かせるネクタイですね。ネイビーのスーツに茶のウールタイを持ってきた。普通、ブルー系と茶系というのは合わせないのが男の服のルール。本来はタブーですが、最近は目立っている。気をつけるべきことは、ネクタイで主張したいときには、つい目が行く差し色をチーフに持ってこないこと。チーフをしたいならネクタイに合わせた茶系にする」

外資系金融に勤務する安藤健治さん(48)。ウールのネクタイ、スエードの靴と、素材で秋冬っぽく。縞がテーマで、スーツ、タイ、ソックスすべてをストライプに統一した。「ネクタイでは、低価格のポリエステル製のものも好きです。ぴしっと締めやすい」
安藤健治さんのネクタイ。スリーシーズン着られるネイビー系ストライプのスーツに焦げ茶のネクタイを合わせた。タイピンで留めることで、ネクタイの上部分をふっくらさせた

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