2018/9/26

ビターリ氏は、中国パンダ保護研究センターが運営する繁殖センターで撮影する中で、ミンミンの出産のような瞬間を目にして深く心を動かされた。「このフォトストーリーに着手したとき、私はそれほど激しくパンダに熱を上げていたわけではありませんでした。ですが、パンダと長い時間を過ごして、みんながパンダに夢中になる理由が分かります」

パンダを知るほどパンダが大好きに

ビターリ氏は、パンダが注目に値するのは、かわいらしい外見のためだけではないことを理解するようになった。むしろ、彼らが生み出す自然とのつながりが大きいのだ。「パンダが驚異的で、不思議で、貴重な生き物だという実感が生まれてきて、強く心をとらえられました」

写真の子パンダ3頭は、碧峰峡のセンターで同じ1頭の母親が育てている。虚弱な子や、生みの母親が育児をやめた子を代理母に世話させることで、赤ちゃんパンダの生存率が大きく向上している(PHOTOGRAPH BY AMI VITALE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

野生のパンダは、中国の山々で生涯のほとんどを単独で過ごす。他の個体と一緒にいるのは、交尾と出産の短い期間だけだ。数百万年かけて、竹の多い自然生息地に完璧に適応した食生活を進化させてきた。そのため、生息地の減少に対して特に弱くなってしまった。

竹に依存し、しかも生息地の喪失に弱いことでパンダの個体数は減少。1990年代に絶滅危惧種(endangered)に指定されると、中国はパンダを救うという難題に取り掛かった。

碧峰峡の保育室で昼寝をする、生後3カ月の子パンダたち(PHOTOGRAPH BY AMI VITALE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

2016年、絶滅の恐れのある動物の状況を評価している国際自然保護連合(IUCN)は、パンダの分類を危急種(vulnerable)に引き下げている。個体数が以前の推定より改善されたからだが、生息地への脅威は残っている。また、自然界では単独でいるパンダを飼育下に置いて繁殖を成功させることの難しさは言うまでもない。

ビターリ氏は、この取材の最終日に訪れた瞬間を思い起こした。プロジェクトに初めて取りかかってから3年後のことだ。臥龍に滞在して、パンダの母子の写真を撮ろうとしていた。

碧峰峡パンダ繁殖センターのパンダ飼育員、リウ・ジュアンさんが、子パンダ2頭と触れ合う。観光客は窓の外から見つめている(PHOTOGRAPH BY AMI VITALE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

「赤ちゃんはいつも寝ているか、母親が隠しているかのどちらかでした。私は『そういうものなのだ。これで取材を終えよう』と考えていました。すると私が出て行く直前、母親が赤ちゃんを口にくわえ、斜面を上って赤ちゃんを前足に載せ、私に見せるかのように持ち上げたのです。そして、元の場所へ戻っていきました」

目が見えず、体毛もわずかなパンダの赤ちゃんがキーキーと声を上げている。生まれたときの体重は母親の約900分の1しかないが、姿はすぐに変わっていくだろう。パンダは哺乳類の中でもかなり成長が早く、100グラムほどだった体重が生後1カ月で1.8キロまで増える(PHOTOGRAPH BY AMI VITALE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

偶然だったのかもしれない。だが、ビターリ氏にとっては、パンダと人が感情的・精神的につながった一例だった。最後にビターリ氏はこう語った。「自然を守ることは、私たち自身を守ることなのです」

次ページでは、パンダに扮して撮影するビターリ氏と、愛らしいパンダの写真を紹介しよう。