水害保険金 被災地で住宅再建しないと受け取れない?

日経マネー

写真はイメージ=PIXTA
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7月の西日本豪雨では、2万棟を超える住宅が損壊や床上浸水などの深刻な被害を受けました。また、9月の台風は、四国や関西地方を中心に大きな被害をもたらしました。そんな中、このような質問が寄せられました。

「もし水害で被災したら、そこにはもう住みたくないと思うかもしれない。でも同じ場所に家を再築しないと、火災保険による水害の保険金を受け取れないと聞いた」

多くはないものの、住宅を再築しないと保険金を満額受け取れない火災保険契約も確かにあります。それは、「新価保険特約」が付いている火災保険です。

新価保険特約は、保険金額を住宅の再調達価額(修理・再築・再調達するのに必要な金額に基づく評価額)で設定すれば、被害を受けたのと同等・同質の住宅を再築できる保険金が支払われる特約です。

火災保険からは、住宅を再築可能な保険金が支払われるのが当たり前と思うかもしれませんが、かつて保険金は「時価」で支払われるのが原則でした。

時価とは、老朽化を加味した現状相当の金額のことです。時間の経過とともに住宅は老朽化が進むため、時価も下がっていきます。時価ベースで算定された保険金は、古い住宅ほど少額となり、住宅を再築したくても不十分な保険金しか受け取ることができないことがあったのです。

そこで、新価保険特約を付加することになるわけですが、再築に必要な保険金を受け取るには条件を満たす必要があります。それは、被災後2年以内に被災前と同一敷地内・同一用途で住宅を再築しなくてはならないというもの(復旧義務)です。

保険金の支払いは2段階で、第1段階で支払われるのは時価基準の保険金。第2段階で再調達価額と時価との差額が支払われますが、それは住宅を条件通りに再築した後になります。再築しなければ当然、これは支払われません。被災後のライフプランが左右されかねない大問題といえるでしょう。

長期の火災保険に注意、時価評価の可能性も

もっとも、火災保険の加入や更新が最近なら、こうした状況は起きにくくなっています。時価の考え方を排除し、再調達価額基準で保険金を一度に支払う商品が主流になっているからです。この場合、住宅の復旧義務はなく、受け取った保険金の使い道も自由です。

 時価評価の問題が起きやすいのは、住宅ローンを組む時に加入した長期の火災保険です。現在、火災保険期間は最長10年間ですが、2015年10月までは最長36年間でした。そのため、時価評価で保険金が支払われる契約は今も残っています。自分の火災保険はどうか、契約先の保険会社に一度問い合わせましょう。

時価で保険金が支払われる、あるいは新価保険特約が付加されていた場合は、再調達価額で支払いを受けられる保険への掛け替えも検討すべきです。

 なお、火災保険から支払われる保険金は契約した保険金額が上限。保険金額が少なければ、住宅再築はそもそも困難です。保険金額を住宅の再調達価額相当に設定しておくことも大切なポイントです。

ちなみに、旧住宅金融公庫の住宅ローンと併せて特約火災保険に加入している場合は心配無用です。12年7月に、住宅の復旧義務がない「個人用新価保険特約」が特約火災保険の既契約に自動付帯され、損害調査終了後に保険金額を上限に再調達価額全額が支払われるようになったからです。

これは契約者から申し出がなかった全ての契約にセットされているので、手続きをした記憶がなくても大丈夫です。

清水香
生活設計塾クルー。学生時代から生損保代理店業務に携わり、2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。翌年、生活設計塾クルー取締役に就任。『地震保険はこうして決めなさい』(ダイヤモンド社)など著書多数。財務省「地震保険に関するプロジェクトチーム」委員。

[日経マネー2018年10月号の記事を再構成]

日経マネー 2018年 11月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 730円 (税込み)


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