マネー研究所

カリスマの直言

そんなにお金を抱えたままでどうするの?(澤上篤人) さわかみ投信会長

日経マネー

2018/9/24

さわかみファンド最高投資責任者(CIO)の草刈貴弘氏

草刈 広く知られているように預貯金を持っている世代は60歳以上がほとんど。しかも借金を差し引いた純貯蓄で考えれば9割近くは60代以上が保有していることになっています。というのも、40代までの子育て世代は住宅ローンやら教育費やら自動車など出費がかさむので家計は債務超過状態。この世代にさらに消費拡大を求めても厳しいですよね。一方純貯蓄のほとんどを持つ高齢者も年金は増えず、社会福祉の負担は増していくので消費を増やせないのが正直なところ。そこで、お金を回すためのひと工夫が大切になってくるわけですね。

■1%の寄付で日本経済は1.7%成長

澤上 預貯金に寝かせたままにしている872兆円がどれだけモッタイないことかを、まず見てみよう。どうせ0.01%の利子では増えっこない。だったらと、預貯金の1%を寄付に回すと、どうなるか?

その寄付が、貧しい生活にあえいでいる人々に回れば、即座に今日はおなかいっぱい食べようから始まって、生活水準を高めようとする消費に直結する。この経済効果は大きいよ。

あるいは寄付が音楽家やスポーツ選手に回ると、どうなるか。彼ら彼女らの多くは夢に向かって頑張っているが、いまだ芽が出ず生活に困窮している。そんなところへ寄付が回れば、すぐさま楽譜を買おう、スポーツシューズを新調しようといった消費につながる。

どちらも個人消費が伸びないと嘆いている政府に、「一体何やっているのよ」と経済効果の現実を突きつけることになる。ともあれ、8.7兆円もの資金が個人消費に上乗せされたら、日本経済は即座に1.7%もの成長を遂げる。

もし預貯金の3%を寄付に回せば、5%の成長だよ。日本経済が5%成長すれば、回り回って国民全体の所得増加につながっていく。アベノミクスがいくら賃上げを企業に迫っても、そうそう5%成長はしない。

それが、個人や家計がボケーッと寝かせてある預貯金のわずか3%を経済の現場に回すだけで、いとも簡単に達成できるのだ。つまり日本の個人預貯金マネーは、世界最大の眠れる資源であり、それを放ったらかしにしているのは世界最大の間抜けなのよ。

そうはいうものの、どうして日本の家計は預貯金を抱え込んでしまうんだろうね。

草刈 確かに、この数年、大規模災害が頻発している日本ですが、そのたびに寄付や義援金が集まっています。そういった面では相互扶助の精神が根付いていると考えれば、普段からそういった考え方を持つことでお金が必要なところに回り、経済が動き、お金が生かされますね。ボランティアの方の移動や食事なども皆が自分で払っている。これも一つの経済活動ですから、他の人のために使うという発想がもっと広がって、日本全体でお互いのための消費が増えても面白いですね。

澤上 そうなのよ、60代以上の日本人がずっと教えられてきた、貧しかった頃の価値観から脱皮する必要がある。すなわち、余分なことにはお金を使わず貯蓄しておくべしとする生き方から、寄付などで世の中にお金を回してあげようとする考え方に切り替えることだ。それが回り回って日本経済の成長につながり、自分たちの先行き不安を一掃できるのだ。

預貯金を抱えたまま、不安不安で残りの人生を生きるのではなく、心豊かな方向でお金を使いながら日本経済の成長にもう一度貢献するのだ。その方が、よほどカッコいい老後人生となる。

澤上篤人
1973年ジュネーブ大学付属国際問題研究所国際経済学修士課程履修。ピクテ・ジャパン代表取締役を務めた後、96年あえてサラリーマン世帯を顧客対象とする、さわかみ投資顧問(現さわかみ投信)を設立。

草刈貴弘
2008年入社。ファンドマネジャーを経て13年から最高投資責任者(CIO)。

[日経マネー2018年10月号の記事を再構成]

日経マネー 2018年 11月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 730円 (税込み)


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