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カリスマの直言

そんなにお金を抱えたままでどうするの?(澤上篤人) さわかみ投信会長

日経マネー

2018/9/24

写真はイメージ=123RF
日経マネー

澤上篤人(以下、澤上) 日本の個人や家計は、個人金融資産1829兆円の48%を預貯金に抱え込んでいる(日銀速報、2018年3月末)。世界から見れば、全く理解できない現象である。何しろ、そこから生み出される富(利子所得)が年0.01%と、ゼロ同然なのだから。

高齢者は老後が不安だからと言って、せっせと預貯金に励む。現役層は資産を安全確実にと言って、預貯金から一歩も出ようとしない。

その習性がどれだけ本人にも日本経済にもマイナスかを、草刈と話し合ってみよう。

■景気回復と言ってはいるが…

草刈貴弘(以下、草刈) 政府は7月の月例経済報告で景気の基調判断を「緩やかに回復している」と発表していますが、実際に景気が良くなっているなと感じている人っているのでしょうかね。

確かに賃金の上昇やボーナスの上昇率など報道で見る限り、今年も増えてはいるようです。それでも全体といった形ではなく、企業間や業界間、職種によって大きく差が出ていることが指摘されていますから、ばらつきがあることは否めません。

何はともあれ、経済はお金の流れですから、お金は使われることが大切。将来を悲観し過ぎて消費をせずに貯め込んでも、お金は動かないので経済は滞り、結局自分たちを苦しめる。お金を使わないことで、回り回ってお金を使えなくなってしまっているジレンマに、我々日本人は早く気付かなければいけませんね。

澤上篤人氏(撮影:大沼正彦)

澤上 実は、この20年ちょっとで米国も欧州連合(EU)も経済規模を2倍にしているのよ。社会的格差拡大や高失業率など、あれだけ悪い悪いといわれ続けてきた米国やEUなのに、年3%前後の成長を遂げているんだ。その成長も、よくイノベーションとかAI(人工知能)とかいわれるが、ベースはやはり個人消費の伸びよ。何しろ、GDP(国内総生産)の60%前後は個人消費が占めているのだから。

ともあれ、一人日本だけが、経済のジリ貧とデフレ現象にあえいできた。もっとも国は、バブル崩壊後27年間に景気対策などで470兆円ほどの予算を計上した。しかし、その効果は、家計の現金と預貯金額が460兆円強も積み上がっただけ。何のことはない、国の借金は増え続け、それが家計にすっぽりと収まっていくといった茶番劇が延々と繰り広げられたわけだ。笑ってしまうよ。

国としてやるべきは、個人や家計にモノ以外の消費を高めさせること。それが成熟経済活性化の主柱となる。ところが国は、相も変わらず産業政策主体で、大企業中心に経済を動かそうとしている。だから、さっぱり効果が上がらないし、日本経済も成長しないのよ。

繰り返すが、成熟を深めている日本経済を拡大・発展させるには、国民の間でモノ以外の消費を高めさせる。そこに的を絞れば、872兆円とGDP1.7倍もの個人預貯金が最強の武器となる。

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