総額164兆円 公的年金の積立金って何?財源不足を穴埋め

2018/9/22

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写真はイメージ=PIXTA
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日本の公的年金制度は現役世代が負担する保険料を高齢者の年金に充てる「世代間扶養」が基本です。ただ、その財政方式をみると一定の積立金を保有し運用収益も活用しているのが現状です。この年金積立金にはどんな役割があるのでしょうか。

まず高齢者に給付している年金の総額とその財源をみてみましょう。2018年度予算で給付総額は55.1兆円(厚生年金と国民年金)です。そのための財源の約7割(38.5兆円)は現役世代からの保険料収入で賄っています。さらに2割強(12.7兆円)は税金(国庫負担)を投入しています。

それでもまだ足りません。この不足分をカバーしているのが年金積立金です。少子高齢化の進展で年金を受け取るお年寄りが増える一方、保険料を負担する現役世代は少なくなっていきます。安定した年金給付を続けようとすれば、現役世代の負担はどんどん膨らんでしまいます。

「団塊」時代に積み上がり

そこでこれまで年金の給付に使われなかった保険料収入の一部を積み立て、運用収益などを給付に充ててきたのです。団塊世代が働き盛りだった時代には、入ってくる保険料のほうが給付する年金額よりも多く、毎年度のように積立金が増えていました。

17年度末の積立金は164兆円(時価ベース)です。運用資産の値上がりを背景に前年度より約10兆円増え、これまでで最高になりました。年間の給付総額のほぼ3年分に相当する金額です。08年のリーマン危機後は120兆円を下回りましたが、その後増加傾向をたどっています。

厚生労働省は5年に一度の年金の財政検証(14年)を基に、厚生年金の将来にわたる財源見通しを公表しました(図)。

保険料と税金で足りる時期もありますが、30年代半ば以降は「積立金の活用が必要な期間」に入る見通しです。65歳以上の人口の増加で年金の給付額が膨らみ、一方で保険料を負担する現役世代が減っていくためです。

この見通しは、日本経済が再生し女性や高齢者の就労が進むというシナリオに基づいています。経済が低迷し労働参加が進まないと、もっと早い時期から積立金の活用が必要になる可能性があります。

2040年から減少へ

年金積立金はほとんどを年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用しています。14年に運用資産の構成を見直し、国内債券を減らして国内株式や外国株式を増やし話題になりました。運用益の増加はアベノミクス効果ともいえます。では、積立金の運用がうまくいけば年金の受取額は増えるのでしょうか。

積立金は給付を補っているといっても、全体に占める割合は1割に満たない水準です。あくまで年金制度を安定させるためのものであり、「運用の結果が現在の受給者の年金給付に直接影響するような仕組みではない」とニッセイ基礎研究所の年金研究部長、徳島勝幸さんは話します。

実際、毎年の年金額の改定は「積立金の運用収入とは関係なく、賃金や物価の水準などを基にした一定の計算式で決まる」と、みずほ総合研究所の上席主任研究員、堀江奈保子さんも説明します。

厚生年金の年金積立金は40年前後にピークに達します。おおむね100年後に年金給付1年分に当たる金額が残るように、運用収入に加えて積立金本体も取り崩していく計画です。その間を平均すれば保険料と国庫負担で給付の約9割を賄う予定です。

[日本経済新聞朝刊2018年9月15日付]