観客一体型バンドの清竜人 「昭和歌謡」に挑むワケ

日経エンタテインメント!

2009年にシンガーソングライターとしてデビューし、ナイーブな心情を歌い上げた清 竜人(きよし・りゅうじん)。14年には一転して「音楽形態を楽しんでもらいたい」と、一夫多妻制アイドルグループ・清 竜人25を結成。プロデューサー兼メンバーの清と、その妻という設定の女性メンバー6人がハーレム風に歌い踊る、新たなエンタテインメントを披露した。

清 竜人 1989年生まれ、大阪府出身。2009年デビュー。14年に一夫多妻制アイドルグループ「清 竜人25」の活動を開始。16年からはリスナー参加型バンド「清 竜人TOWN」の活動もスタート(ともに17年に解散)。今年、ソロ活動を再始動した(写真:藤本和史)

16年には、ステージと客席の垣根を取り払ったプロジェクト・清 竜人TOWNをスタート。「その場にいる人たちと新しいグルーブやメッセージを生み出せれば」とパンクロックソングを観客と共に熱唱した。そんな多彩な活動を繰り広げてきた彼が、ソロ名義では約7年ぶりにリリースするシングル『平成の男』は、昭和歌謡がコンセプトだ。

「今の日本の音楽シーンはバンドサウンドやEDMなど、欧米の刷り直しが増えていて。あえて日本オリジナルのポップスを見つめ直したら面白いんじゃないかと思ったんです」

そこで、編曲を担当するアレンジャーに、昭和歌謡の黄金時代を支えたミッキー吉野(ゴダイゴ)、井上鑑、原田真二の3人を各曲ごとに指名。テーマとして描くのは、“今”の日本社会の中でもがきながら生きる哀愁ある男の姿だ。「平成生まれの僕が書く詞と曲が、古き良き日本の歌謡曲を作ってきた彼らと温故知新のようなコラボレーションをすることで、来年年号が変わった後の時代にも残るような作品になれば」とその意図を明かす。

男の本能を少しは理解して

『平成の男』 「この国この土地に住んでいるからこそ生まれる、日本人特有の洗練されたサウンド」と清が考える昭和歌謡に挑戦した全3曲(キング/初回盤2200円・税別)

表題曲の『平成の男』では、清が日頃感じている恋愛における男女の関係性の難しさを描き、「俺じゃなきゃ/貴女を守れないと/せめてもの勘違いさせてはくれないか」と歌う。「時代が進み、男女平等が実現しつつあっても、やはり男と女は違う生き物だと思うんです。女性がたくましくなっているのは素晴らしいことですが、男性は獣としての本能で女性を守ってあげたい気持ちをどこかに持っている。その部分を女性も少しは理解してくれよみたいな(笑)」

ミッキー吉野に編曲を頼んだのは「大正解だった」と続ける。「ミッキーさんはハネ感のあるサウンドが得意だと感じていたので、スウィングジャス調に出来上がってきた時には、まさにイメージ通りだと思いました」

カップリング曲の『Love Letter』は、ブラック企業が乱立する現代社会を風刺した1曲で、井上鑑らしさが強く出た渋い歌謡ロック。歌詞では「退職届を、自分の人生を充実させるために自分宛てに書くラブレターに例えた」という。

また原田真二が手掛ける『抱きしめたって、近過ぎて』では、「言いたくても言えない」男女のもどかしい恋愛模様を、1980年代の女性アイドル風の歌謡ポップに乗せて歌っている。今作に収録する3曲で、まさに昭和歌謡が持つ音楽性の幅広さを存分に味わえる。

今作は、これまで清を知らなかった大人世代からも注目される可能性を秘めている1枚だ。「今いるファンに聴いてもらえることはもちろん幸せなんですが、それだけでは世界観が広がっていきづらいのも事実で。新しいリスナーを開拓するには、大きな変化を繰り返して注目を浴び続けることが必要。僕が音楽性や音楽形態、名前、そしてレコード会社まで何度も変えてきたのは、今の音楽シーンを生き抜くための戦略なんです」

(ライター 中桐基善)

[日経エンタテインメント! 2018年9月号の記事を再構成]

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