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私のリーダー論

「青ざめる経験」で磨いた目利き力 オリックス社長 オリックスの井上亮社長兼CEO(上)

2018/9/20

■海外経験から得た「性悪説」

――海外経験が長いですが、どんな風に案件を見極める力をつけてきたのでしょうか。

海外事業での経験が今に役立っている(米国駐在時に同僚と食事、手前右が本人)=オリックス提供

「日本企業のほとんどは性善説で動いている気がしますが、私は海外が長いので性悪説で考えます。もちろん海外に信頼できる仕事仲間もいますが、それは1~2年以上の付き合いがあってのことです。初めての取引先から出てきたデータや資料が本当に信用できるのか、と考えます。それは私がたくさん青ざめる経験をしてきたからです」

「若い頃に船のリース事業を担当していましたが、当時は船舶不況。支払いが滞って差し押さえということもありました。1975年に入社して最初の仕事は、3000万円の現金を広島地裁の尾道支部に持って行くことでした。3000万円の供託金で、船の明け渡し手続きを裁判所に申請する仕事です。しかし実際に因島のドックで船を引き渡してもらおうとすると、造船会社から300万円の修繕費が残っているから渡せないという。仕方ないので銀行で口座をつくり、300万円を東京から送ってもらいました」

「最悪のケースを想定しながら動くことを自然に覚えましたね。例えば先ほどの船が造船会社のドックにあれば、そこに何らかの債務が発生しているだろうと想像しなければならない。当社に未払いがあるぐらいですからその他の未払いもあるだろう、それを想定して用意しておくべきだ、となるわけです」

――様々なリスクのある海外ビジネスのコツは何ですか。

「要は信頼関係の構築です。中国企業への投資案件では引き合いから2年かかったものもありました。部下から最初に出てきた稟議(りんぎ)書を見ると、本当に先方のニーズにあった内容なのか疑わしい。定期的に会って、相手はなぜオリックスを必要としているのか、オリックスにとって投資する理由は何か、活発に議論しました」

「『あなたが欲しいものは本当にここに書いてあることなんですか』と直接聞いてみると、『実際はここまでしかできないだろうから仕方ないと思って……』という本音が出てくる。そんなのはやめて、もう一回見直そうと言いました。結局その後も3回、条件を直しましたね。結果、その会社の株価は投資したときの3倍になり、成功案件になりました」

――失敗経験もありましたか。

「例えば契約書に書いてある一文のために、未払いがあっても1カ月は何もできず、こちらが動けない間にオーナーは船を別の場所に勝手に持って行ってしまったり。担保として預金を設定していても、両者の合意がないと債権回収できないという条項があり、何もできなかったことも。そんな苦い思いを若い頃にたくさんしたおかげで、今の私があります」

「当社の財産は契約と人材です。契約内容をとことん吟味してあらゆる場面に対応できるものに作り上げる。契約書って、ある意味、失敗をして青ざめる経験をしないと作成できないんです」

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