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東京・石川酒造 土蔵が並ぶ「酒飲みのテーマパーク」ぶらり日本酒蔵めぐり(4)

石川さんのブルースハーモニカはプロの腕前とか

石川彌八郎という名は代々受け継がれてきた名跡で、今年54歳になった現当主は18代目だ。1863年に酒造業を始めたのが13代目当主だから、石川家としては酒造業を営む以前の歴史が長い。約1万3千平方メートルの敷地内に、土蔵に囲まれるようにして当主の居宅がある。その入り口に建つ長屋門は240年以上前に建築された。

江戸期には名主総代として地域社会を束ねる役割を担っていたようだ。多摩川の氾濫対策の責任者を務めた記録もあるという。石川家がある多摩川左岸の旧熊川村は江戸中期まで畑作中心だったが、多摩川の治水工事が進んだ結果、江戸末期に稲作が広がった。酒造創業の背景には、そんな事情もあった。

創業以来約100年、仕込み水をくんできた井戸 今も水はわき出ているという

「多摩川河川敷の荒れ地で稲作ができるようになりました。それがなかったら、あるいは味噌屋をやっていたかもしれませんね」。仕込み水は1960年代まで、手掘りの井戸からくんでいた。今は深さ150メートルの井戸で多摩川の伏流水をくみ上げている。水系をさかのぼると秩父山系に行き着くそうで、水質はミネラルを含む中硬水に分類される。

当初から、地元の消費に応える地酒だった。約1000石(一升瓶10万本、180キロリットル)を造る石川酒造の出荷先の多くは今も地元が占める。石川家は檜原村に山林も持っている。そこで育ったスギのチップを使って企画した商品もある。のどごしにスギの香りが漂う「多満自慢 東京の森」だ。

「福生のビール小屋」は席数約40 テラス席もある

1998年からは地ビールを生産している。「生産量は180キロリットル。ちょうど日本酒と同じくらいですね」。実は明治の半ばに一度、ビール造りに挑戦したことがある。100年以上を経て、再参入したわけだ。クラフトビールブームを追い風に売り上げは伸びているという。「多摩の恵」は酒蔵の売店を中心に販売、2015年発売の「TOKYO BLUES」は都心などで流通させ、「地元比率は半分以下になりました」。

売店「酒世羅」には石川酒造が造る各商品が並ぶ。毎月、第4週目の週末には感謝デーイベントを催している。9月22~24日はたる酒の量り売りと、吟醸プリンや酒かすメロンパンなどオリジナルスイーツを販売する。10月にはハロウィーンや新酒発売にちなんだ内容を計画している。

店名「酒世羅」には「酒セラー」の意味を込めたそうだ 高級酒「大吟醸 原酒 しずく取り」や限定商品も棚に並ぶ
石川酒造はJR・西武線の拝島駅から歩いて15分ほど。経路はわかりやすい。近傍にはゴルフ場があり、レストランは週末、ゴルフ帰りの客でにぎわう。春秋の観光シーズンは予約が必要だろう。史料館が入る「雑蔵」の1階ではそば店を運営していたが、昨年いっぱいで閉店し改修中だ。

(アリシス 長田正)

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