しょうがギョーザ・サラダシーチキン ヒット食品予測
加工食品や冷凍食品に求めるものが「時短・簡便」という時代は終わった。見事な「羽根」付きギョーザがテクいらずで作れる「しょうがギョーザ」、牛乳の買い置きいらずの「まるごとミルクのクリームシチュー」……ここまでできる!という感動を提供する食品が続々と現れている。日本アクセスがまとめた「バイヤーズグランプリ」(文末参照)の入賞商品から、日経トレンディ編集部が選んだ注目商品を紹介する。
失敗なく「羽根」部分を作れる感動、ショウガ味が加わる
冷凍ギョーザ売り上げ首位の味の素冷凍食品が、1972年の発売以来初めて、メイン商品のニンニク味以外の姉妹品として投入するのが「しょうがギョーザ」だ。
2012年に発売した油・水なしで焼けるタイプが大ヒット。そして昨今のギョーザブーム、さらには17年に商品を自ら調理して食べられる期間限定店「ギョーザステーション」を営業して話題にした効果もあり、近年の売り上げは右肩上がりの好調ぶり。
女性を中心に人気のショウガを利かせた新味を投入し、既存商品にプラスオンした売り上げ拡大を狙う。
ベースとなるギョーザも大幅に改良した。目指したのは「毎日でも食べたくなるギョーザ」だ。アンケートやグループインタビュー、試食などで得られたデータを独自に分析。「理想のギョーザには、肉や野菜の量、皮の厚みなどに黄金バランスがあることがわかった。薄皮にして、あんの肉汁やうまみが口中に広がりやすくするなど改良を施した」(味の素冷凍食品)。
焼き面に薄く貼り付く「羽根」もより見栄えよくできるように進化。個々のギョーザの底面に、小麦粉などを原料とする羽根のもとが付いており、焼くときにこれが隙間なく薄く広がるように改良された。
何度か焼いてみたが、手順を守って焼く限り、例外なくパリパリの羽根を作ることができた。「ユーザーの焼き方を実際に観察したところ、ばらつきがあることがわかった。そこでパッケージで焼き方を、イラストではなく写真でわかりやすく伝えるようにした」(同)。実際に食べてみると、パリパリの羽根の食感や肉汁の濃厚な味が印象的で、しかも一つ一つが軽く、いくつでも食べられる。
家族のメインのおかずにできるように、同社では初の大容量パックとして、36個入りの「みんなわいわいギョーザ36」も発売。「従来品の購買者は、小人数世帯のシニア層の割合が多い。冷凍ギョーザを使っていないファミリー層を狙うには、夕飯のメインのおかずとなる量が必要だと考えた」(同)。トップランナーによる本気の改良が、アンチ冷凍派も取り込みそうだ。
免疫系乳酸菌で成長著しい市場に初参入
ハウス食品グループは18年8月、独自の乳酸菌「L-137」を使った商品で乳酸菌市場に参入した。約6500億円といわれる乳酸菌市場で、特に伸びているのが免疫系の乳酸菌。明治「明治プロビオヨーグルトR-1」や森永乳業「シールド乳酸菌」シリーズが代表格だ。「市場が活性化している今が好機」(ハウスウェルネスフーズ)と捉えた。
L-137は、同社が約25年前から研究する免疫系に作用するという乳酸菌。米国や台湾では、他社への原料供給によるサプリメントが出ているが、国内では自社商品を投入。シールド乳酸菌と同じく加熱処理した死菌で、ヨーグルト系商品以外で展開できる。
ドリンク、ゼリー、粉末スティックの他、自社グループの他ブランドでも関連商品を発売。なかでも粉末スティックは30本入りの大箱が約2000円と、ヨーグルトより常備しやすくリーズナブル。家族全員で取りたいという家庭で重宝されそうだ。
サラダチキンを上回る高いスペックが武器
タンパク質ブームのなか、マグロの塊肉を使い、サラダチキンと同じ棚を狙った業界初の商品が、はごろもフーズの「サラダシーチキン」だ。糖質ゼロで、レトルト(加圧加熱)殺菌しているため常温でも保管でき、賞味期限が約7カ月と長いなど、サラダチキンよりも利点が多い。登山やマラソンに携行するといった使い方も可能だ。
肉から染み出る汁(ドリップ)が少ないのも特徴。包材に密封する前に余分な水分を飛ばすなどして、しっとりさは残した。レトルト殺菌によって生臭さを消し、魚肉を重曹で処理して軟らかさを保持。うまみがあるうえ、油漬けの缶詰よりもヘルシーだ。
発売前からコンビニやスーパーからの注文が殺到し、予定販売数を年370万個と高く設定したが、「もっと増える可能性がある」(はごろもフーズ)。まずはサラダチキンのように単体で食べたい人をつかみ、次は家庭の料理の材料としての普及を狙う。今後、他の魚種や味付けの商品展開も検討する。
牛乳なしでクリームシチューが作れる新機軸
近年、市場縮小が続いていたルウタイプのシチューだが、17年以降はご飯にかけて食べる新提案商品などが奏功して下げ止まっている。そこに業界2位のエスビー食品が投入するのが、牛乳を使わずに調理できる「まるごとミルクのクリームシチュー」だ。
パウダータイプで小分けされており、当初は、シチューが素早く少量作れるという点を売りにしようとしていた。しかし、追加調査でクリームシチュー調理への最大の不満点が、「常備していない牛乳を買わなければならないこと」だと判明した。
そこで生クリームとバターに加え、パウダー状の生クリーム、脱脂粉乳、ホエーなど牛乳由来成分を新たに配合。乳感をリッチにして、牛乳を加えなくてもシチューが作れる新機軸を前面に打ち出した。パウダータイプで油脂分が少ないため、調理後の器具も洗いやすい。「現状のシチューの不満点を網羅的に解消した」(エスビー食品)。使い勝手の良さからファミリー層にも受けそうだ。
大手食品卸の日本アクセスが2018年7月に開催した展示商談会「フードコンベンション」の特別企画。Mart読者会員が選ぶ「Mart新商品グランプリ」の「プロ版」で、この企画にエントリーした87の新商品を、流通各社の食品バイヤーが試食して投票。加工食品、嗜好飲料、冷蔵、冷凍食品、アイスの5部門で得票数の多い順にランキングした。日本アクセス、流通専門誌「DIAMOND Chain Store」とのコラボ企画。
(ライター 高橋学、写真 中本浩平)
[日経トレンディ2018年10月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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