お取り寄せの人気店、多店舗展開する有名店と選択肢も幅広い。
「プチぜいたく」を楽しめる一品を、専門家による試食会で選んだ。
1斤1000円超えも
小麦粉や砂糖を練り込んだ生地を発酵させ、長方形に焼き上げたのが食パンだ。日本の食パンの原型「ホワイトブレッド」は18世紀ごろ英国で誕生したとされる。明治時代の初期に伝わり、四方が直線の食パンを「角型」、てっぺんが丸いものを「山型」と呼ぶようになった。
関西では厚めの1斤5枚切りが、関東では薄めの6~8枚切りがそれぞれ主流で、東西で「ご当地」色も垣間見られる。最近はもっちりした食感が人気のため、厚めに切ることを薦める店もある。また近年の食パンブームを背景に、バニラビーンズや生クリームなどを使って独自の味を表現する店や、1斤1000円超えの高級品も人気だ。
おいしいパンづくりを左右するのが、小麦粉の特性を生かしているかどうかだ。小麦粉に水を加えてこねるとたんぱく質が結びつき、網目状の「グルテン」がつくられる。このグルテンが生地中の気泡を薄い膜のように数多く包み込むと、ふっくらとしてきめの細かい「おいしい」パンができあがる。製粉会社などが参加するパン食普及協議会は「グルテンの質と量がパンのおいしさを決める」と説明する。パン職人の腕の見せどころだ。
ミルキーなコク トーストせず生で(乃が美)
総本店は大阪市。「パンの耳まで残さず食べられる。生で食べるともっちりみずみずしくてミルキーなコクが感じられて美味」(稲垣智子さん)と専門家の多くが高い評価をつけた。試食会では全ての候補について生とトーストの両方で評価してもらったが、同店は「生で食べるのが一番おいしい」と、トーストせずに食べることを推奨している。最高級の小麦粉を使っているほか、生クリームの自然な甘みを生かす製法を採用。卵は使わず、焼き上がり後に一定時間冷ますことでシンプルでうまみのある食パンに仕上げた。
柔らかく高齢者でも無理なくかみ切れるため、幅広い年代層への贈答品や差し入れとしても人気があるという。「圧倒的な柔らかさ。軽やかで1枚を軽く食べられる。高級感があるのにクセがないため、万人受けしそう」ととけいじ千絵さん。22製品の候補の中で「ここまで違いの出る逸品は珍しい」(同)と絶賛する。
トーストしても「しっかりとした弾力があり、食感と甘みがちょうどいい。王道の食パンというイメージで、色々な食材に合わせられそう」(笹田幸利さん)。
(1)1本(2斤分)864円(2)実店舗のみ(全国102店舗)(3)非公開(4)2~4日(保存状態による)
何にでも合うベーシックな味(ドンク)
神戸発祥で、全国に134店舗(9月5日現在)を展開する有名店。「甘めながらベーシックで毎日食べたくなる。上質な素材を用いていることが分かる。もっちりしていてミルキー。そのままでもおいしいがトーストでも二重丸」(清水美穂子さん)。食べ飽きない味を実現したことが全国の消費者に長く受け入れられている理由だろう。
「生で食べるとしっとり、もちもちしていて、トーストではさっくり感ともちもち感がともに楽しめる。どんな食材にも合う」(同社マーケティング室)と、好みに合わせて食べるよう勧める。専門家の声と同じく「毎日食べても飽きないパン」を自負する。
「生で食べるとおいしさがじわじわ出てきて質の良さを感じる。少し生地の粘りもあるが、口当たりは悪くない。トースト状態でもしっとり感が残るのが良い。きちんと作っているのが伝わる正統派の食パン」(梶田香織さん)。
1本(3斤相当)売りが基本だが、3分の1でも販売。「なるべくお客の要望に添いたい」との姿勢が読み取れる。
(1)1本(3斤分)836円(2)実店舗のみ(全国134店)(3)ドンク(4)4日
塩気しっかり ジャムと好相性(パンネル)
パンネルは兵庫県宝塚市で地元に長く愛されるパン専門店。部活帰りの高校生や小学生のおやつにも人気という。「まずは生がお薦め。もっちり、しっとり感を味わって」と同店。「風味がしつこくなくほどよい。口溶けも素晴らしく、トーストは耳のパリパリした感触がとてもおいしい。シンプルで奥深い味」(神戸みゆきさん)などと高く評価された。
自社ウェブサイトでは1本(3斤相当)から販売。こだわりの素材をふんだんに使い、見た目よりずっしりと重い。「生では舌の上でとろけるような食感。トーストすると焼き色が付いた表面の食感と優しい甘みがでて、こちらもいい」(片山智香子さん)と素材のうまみを評価する声が多かった。
生、トーストともにおいしい。「塩気がしっかりしているのでジャムと合わせてもいいと感じた」(aiko*さん)など、食材と合わせてもう一度食べたいといった声も上がった。
(1)1本(3斤分)778円(2)自社サイト(http://www1.enekoshop.jp/shop/pannell/)、実店舗あり(3)一麦(4)2~4日(気温、湿度による)(5)常温
化粧箱入り ギフトに人気(泉北堂)
本店は堺市。吟味したバターと牛乳を採用し、石窯を使って焼き上げた。「トーストしたときに他の商品よりも甘みを強く感じた」(実沢良二さん)。高級感のあるオリジナル化粧箱で配送されるため、ギフトとしても人気が高いという。
「他の山型パンとは味わいが全く違う。トーストすると耳までするすると裂けるので食べやすい。これだけおいしいと、バターなどは何もつけずにそのまま食べたい」(片山さん)。トーストして食べるのが一推しのようだ。
(1)1本(2斤分)710円(2)楽天、高島屋オンライン、実店舗あり(3)ヘアーメッセージ(4)3日(5)常温
ザクザク軽快な食感(アンデルセン)
全国62店(9月15日現在)を展開するアンデルセンの代表的食パン。小麦の香りと風味が強く、ホットサンドにして食べる顧客も多いという。
「甘さが少なく料理や他の食材とも合わせやすい」(古賀充さん)。「シンプルな味わいだがトーストだとザクザクとした軽快な食感が際立つ。トーストサンドイッチにはもってこい」(稲垣さん)と、食材や料理との合わせやすさを評価する声が多い。
(1)1本(3斤分)875円(2)自社サイト(http://www.andersen-net.jp/)、実店舗あり(アンデルセンイギリスは60店で取り扱い)(3)アンデルセン(4)3日(5)冷凍