大塚さんが孫財団を知ったのは、1期生の山内奏人さんの活動がきっかけという。山内さんは東京学芸大学付属国際中等教育学校に通う高校生。小学校時代からプログラマーとして活躍し、中学生で金融サービス関連などで次々に起業し、1期生に選ばれた。この6月には「レシート画像を1枚10円で買い取るアプリ」が話題になった。大塚さんは「山内さんの発想は面白いですよね。僕は、医療の問題をAR(拡張現実)などの最新技術を活用して解決したいです」と意欲的だ。

高校生、変形菌の研究で本を出版

「変形菌」に魅せられた増井真那さんは2017年に本を出版

1期生と2期生のつながりも生まれている。都立の中高一貫校、小石川中等教育学校に通う増井真那さん(17)は、17年に「世界は変形菌でいっぱいだ」という本を出版し、高校生の生物研究者として注目を集めた。孫財団に応募したのは、東京大学でセミの飛翔を研究している1期生、矢口太一さんに「君も来れば」と誘われたからだ。

増井さんは、5歳のときに「変形菌」という謎の多い微生物の存在を知り、6歳で培養を開始、7歳から行動研究を始めた。増井さんは「あまり知られていないと思いますが、変形菌は意外に身近なところにいます。どんどん形を変えながら生きていく、すごく不思議な生物です。当時は夢中になって大学の先生と共同研究し、論文も書き、講演もしました」と話す。中学1年生で日本学生科学賞の内閣総理大臣賞を受賞するなど、高い評価も受けている。

明治・大正時代に活躍し、天才・奇人と呼ばれた博物学の巨人、南方熊楠も変形菌の研究に夢中になったとされる。増井さんは「先日、有名な英字誌にも紹介されました。変形菌は一時、薬になるのではと研究されましたが、確認はできませんでした。可能性は大きいので、今後も研究していきたいです」と話す。

中性子を使うがん治療、確立めざす

がんの治療法研究に取り組む守実友梨さんは、テレビ電話を通じて話してくれた

支援を受ける異才は、地方や海外にもいる。インターネット電話「スカイプ」のテレビ電話で取材に応じてくれた大阪大学工学部1年生の守実友梨さんは、「高校のころから、阪大で体に負担の少ないがんの治療法の研究に参加している」と話す。

もともと外科医志望だった守実さんだが、「手先が不器用だったのであきらめ、技術的な視点からがん治療に貢献しようと工学部に入りました。研究室では、『中性子捕捉療法(BNCT)』という、腫瘍細胞だけを選択的に破壊するがん治療法の確立を目指しています。まだ臨床研究段階ですが、その計測法を確立したいと考え、開発に取り組んでいます」という。

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国際物理オリンピック、3年連続で金