「孫さんを超える」若者集う財団、2期生も異才ぞろい

守実さんは高校時代、科学技術振興機構が科学技術人材を育てるために開いている「グローバルサイエンスキャンパス」の全国受講生研究発表会に参加し、同機構理事長賞を受賞している。大学では1年生だが、研究室に主要メンバーとして出入りしており、今回の取材にも学会開催中の札幌から応じてくれた。

国際物理オリンピック、3年連続で金

渡辺明大さんは「理論物理と数学を究めたい」と話す

「ノーベル賞はまだ意識はしていませんが、理論物理学は10代のうちにしっかり勉強しておかないといけないので大変です」。東大理科1類1年生の渡辺明大さん(19)は、「未来のノーベル物理学賞候補」と期待をかける人までいる逸材だ。関西有数の進学校、東大寺学園(奈良市)の高校生だった17年、国際物理オリンピックで日本人初の世界1位に輝いた。金メダルは3年連続で獲得し、日本数学オリンピックでも優秀な成績をあげている。

灘高校(神戸市)や筑波大学付属駒場高校(東京・世田谷)など国内トップ級の進学校の成績優秀者が目指す科学系の国際オリンピック。渡辺さんは灘中学にも合格したが、東大寺学園の自由な校風に憧れて進学。「何で灘を蹴るの」と周囲に不思議がられた。

「17年にインドネシアのジャカルタで開催された国際物理オリンピックは、難問だったので理論と実験で8割ぐらいの点数だったと思います(点数は非公表)。英国のケンブリッジ大学からも入学をすすめられましたが、学部のころは日本の大学でいいかなと。その後で留学したいと思います」と語る。

理論物理と数学を究めたいと話す渡辺さん。「理論物理は世の中の役に立つのかとよく問われますが、アインシュタインの相対性理論も技術に応用されたのは半世紀後でしたし、僕の研究も1世紀後ぐらいに社会にプラスになればいいのではないでしょうか」と、大きく構えているのが印象的だ。

モチベーションは好奇心、恋愛の優先順位は…

すでに4人とも「異才」「天才」というにふさわしい実績を積んでいるが、他の子供とはどこが違うのか。「暗記力がいいとか、頭脳が優秀というよりも、好奇心が人一倍強いのではないでしょうか」(渡辺さん)。好奇心と、そこから生まれる探究心の強さは4人に共通のようだ。多感な年ごろでもある4人に恋愛への興味を尋ねてみると、いずれも首をかしげながら「ゼロではないが、優先順位は低い」と笑った。

渋谷の「Infinity」は、異才たちには刺激的で快適な交流の場だ。取材が一段楽すると、渡辺さんが増井さんに「一緒に夕食しない」と誘い、部屋のタブレット端末で出前を注文し始めた。それが終わると、ホワイトボードにグラフや数式を書き、なにやら説明を始めた。増井さんも「生物学の研究者以外と議論するのは楽しい」と応じる。

同じ部屋には、すでに起業を経験した開成高校の3年生もいた。「また早くビジネスがしたい」と起業のネタを探しているところだ。1期生のなかには、起業したり、海外に拠点を設けて行き来したりするケースもある。人工知能(AI)関連やロボット開発など複数のプロジェクトチームも立ち上がり、メンバー同士の交流が活発になっている。

18年5月末、孫氏は1期生らにこう語りかけた。「僕は(米アップル創業者の)スティーブ・ジョブズ氏から大変多くのことを学んだ。彼がすごいのは、こちらが三段論法的に話そうとすると、最初の一歩目のところで『マサ、ちょっと待て』とくることだ」

故ジョブズ氏をベストフレンドと表現する孫氏は、革新的な技術を生み出した独自の発想や思考法について、こう解説した。「彼は一般常識を前提とした理屈のところで、本当かと疑問を呈してくる。世の中の常識をそのまま常識として受け入れていいのか、というところから始まる。普段からそういうふうに物事を考えるというところから、新たな発見や進化が生まれる」

孫氏は久留米大学付設高校(福岡県久留米市)1年生のとき、日本を飛び出し、米国に留学した。シリコンバレーに近い米西海岸で様々な人々と交流し、帰国後にソフトバンクの起業に至った。孫氏の「世界をめざす」志と財団の支援をバネに、起業家や研究者がグローバルに活躍する日も、そう遠くないかもしれない。

(代慶達也)

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