「逆算の資産準備」のススメ 95歳から遡って考える

日経マネー

出所:フィデリティ退職・投資教育研究所作成

1つ目は長く働くことです。先ほどは60歳退職を前提にしていましたが、これを少し延ばせばかなり必要額は変わります。定年延長や再雇用では給料の大幅引き下げを伴いますから、現役時代のように資産を積み立てることは難しいでしょう。それでも少しでも働くことで、資産に手を付けることを遅らせる、または少なくすることは大切なお金との向き合い方です。これについては、次回で詳しくまとめてみます。

2つ目の対策は生活コストの引き下げです。3つの掛け算では2段目の目標代替率の引き下げがそれに該当します。この目標代替率は、退職直前年収の何割くらいの生活費で退職後の生活を考えるかを示唆するものです。

退職直前の年収は生活費、税金・社会保険料、そして退職後の資産形成の3つに使われることになりますが、退職すれば退職後の生活のための資産形成はもはや不要になります。税金や社会保険料も現役時代よりは少なくなります。半面、生活費自体はそれほど変わらない可能性が高い項目です。

フィデリティ退職・投資教育研究所ではこの目標代替率を68%と推計しています。減った大半は「資産形成分」と「税金・社会保険料の分」です。生活費は2割程度しか減らないという想定にしています。

退職したら生活費は下がるものと考えているかもしれませんが、必ずしもそうとは言い切れません。高齢になると旅行や趣味の支出も減り、もう一段生活費は減ると考えている人も多いのですが、健康なうちは失念しているのが医療費です。これも考慮に入れるとなかなか生活費は下がらないものです。いかに生活費コストを減らすかについて、今後改めてこのコラムで取り上げます。

今回のコラムでは、資産運用、継続的に働く、生活費の引き下げの3つの対策をいかに組み合わせて自分として「退職後の生活に向けて」取り組むかの重要性を見てきました。どれを組み合わせて、どこに重点を置くかというプランを考えてみてはどうでしょうか。

野尻哲史
フィデリティ退職・投資教育研究所所長。一橋大学卒業後、内外の証券会社調査部を経て2006年にフィデリティ投信入社、07年から現職。アンケート結果を基にした資産形成に関する著書や講演多数。

[日経マネー2018年10月号の記事を再構成]

日経マネー 2018年 10月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 730円 (税込み)


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