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得意のグリーグ「ピアノ協奏曲」 田部京子が初録音

2018/9/15

現代最高のシューベルト弾きの一人と評される田部さんは、ブラームスやメンデルスゾーンを含めドイツロマン派の作品を得意としてきた。さらに最近では2015年にベートーベンの後期三大ソナタのCD、16年と17年にはモーツァルトのピアノ協奏曲とピアノソナタのCDも相次ぎ出すなど、ロマン派の源流にあるドイツ系の古典派音楽も追究している。ベルリン芸術大学・大学院を首席で卒業するなどドイツで学んだ彼女の面目躍如だ。グリーグがドイツロマン派の流れをくむ北欧の作曲家なのも彼女の傾倒ぶりに関係していそうだ。

ドイツロマン派をベースにした北欧の空気感

――ピアニストにとってグリーグ作品はどんな位置付けになるか。

「グリーグはほかの北欧の作曲家に比べてドイツロマン派の性格が強いとみている。彼は若い頃にドイツのライプツィヒで学んでいる。ドイツロマン派のベースがあった上で、ノルウェーの民族的な要素、北欧の空気感、自国を愛する心を作品に込めている。だからノルウェーのリズムや音型が前面に出ていても、作品はとても洗練されていてロマン性を持つ。ショパンやリスト、シューマン、メンデルスゾーンの影響も感じられる」

グリーグについて語るピアニストの田部京子さん(8月14日、東京都稲城市の稲城市立iプラザホール)

――グリーグとモーツァルトのピアノ協奏曲を弾く機会が多いが、共通点はあるのか。

「全く趣が異なるようでいて共通する部分はある。天真爛漫(らんまん)のモーツァルトと北欧の澄んだ空気と素朴さのグリーグ。9月28日のコンサートでは藤岡幸夫さんの指揮で日本フィルハーモニー交響楽団とともにモーツァルトの『ピアノ協奏曲第21番』とグリーグの『ピアノ協奏曲』の両方を演奏する(東京・池袋の東京芸術劇場)。それぞれハ長調とイ短調という(平行調の)協奏曲の組み合わせ。ピアノ協奏曲を一晩に2曲弾く機会はめったにない。私はモーツァルトの『第20番』『第21番』の組み合わせで協奏曲を弾いたことはあるが、違う作曲家の作品では初めて。ふだんグリーグを弾くときとは違った感覚で有名な第1楽章の冒頭を始められそうだ」

「私はグリーグの音楽の香りが大好きだ。その香りの中に身を置くと、とても心地よい。いつまでもその感覚を味わっていたいと思うので、グリーグの作品は手放せない。この先もずっと付き合っていきたい作曲家。まだ弾いていない曲にも取り組んでいきたい」

冷たい透明感が美しい「ペール・ギュント」

田部さんが今回のCDにも収めた「ペール・ギュント第1組曲」はオーケストラ曲としてあまりに有名だ。これをピアノで弾くと「一点の曇りもない大気の中にすうっと音が立ち上っていくような冷たさと透明感を味わえる」と彼女は言う。オーケストラでは出せない研ぎ澄まされた音色だ。

音の構築美を浮き彫りにする精錬された響き、その中に醸し出される北方の澄み切った叙情性。「ピアノ協奏曲」「ペール・ギュント」に代表されるグリーグの音楽は、このピアニストの魅力の秘密を解き明かす。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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