荒木飛呂彦さんの漫画『ジョジョの奇妙な冒険』はシリーズの単行本累計発行部数が1億冊を超える人気作品だ。第4部に基づく映画『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』が2017年夏に公開、18年9月から動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で配信が始まった。「スタンド」と呼ばれる特殊能力を持つ登場人物が戦い、壮大なストーリーを展開する作品にどう向き合ったのか。原作者の荒木さんや、主役の東方仗助を演じた山崎賢人さんとのエピソードも含めて三池崇史監督に聞いた。
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■荒木作品は「絵のついた小説」
――作品を拝見してまず興味深く思ったのが実写化した分量です。119分の上映時間に対して単行本でいえば約2巻分です。以前、三池監督は別のインタビューで「コミックを映画にする場合、3~4巻程度が一般的」と話されていましたが、約2巻分にしたのはどんな意図があったのでしょうか。
「荒木先生の漫画は、他の漫画と比べても非常に特殊なんですね。何が違うのかと言うと、ひとつはテンポ感。連載漫画によくある、ひとつのネタをどこまで引っ張れるかという冗長さがまるでない。非常にテンポが速いんです。そしてもうひとつは、情報量。原作を読んだときに思ったんですよ。これは『絵のついた小説』なんだな、と。それぐらい文字情報が多いんです。だから1ページあたりの情報量が濃密で、他の漫画と比べても読むのに時間がかかる。この密度で、他の漫画と同様に3~4巻程度のボリュームを映画化しようとしたら、どうしたってダイジェスト的になりかねない」
「『ジョジョ』はもちろん絵も個性的ですが、一番の個性はスピード感です。これだけ多くの人に愛されているのも、描かれている密度の違いに秘密があるんじゃないだろうか、と。だったら、ダイジェストにするんじゃなくて、この密度の濃い原作をしっかり映画にしようと考えました」
――原作の台詞(せりふ)をそのまま使っているところも多かった印象です。
「その点については何か深く考えたというよりも、自分にとってはそれが当たり前という感覚でした。僕と荒木先生は同世代。子どもの頃に読んできた漫画がほぼ同じというか。わかりやすく言うと『梶原一騎の残り香を通過してきた』世代です。だから荒木先生の使う言葉に何か同じ匂いを感じるんですよ。言い回しは決してそんなにオシャレではなくて。それゆえに簡単には流れないというか、まるで石のようにゴツッとそこに残り続ける。それをわかりやすく今の言葉に変換することもできたでしょうけど、それなら『ジョジョ』じゃなくてもいいだろう、と」