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飲食店の口コミサイトに事実無根の中傷 削除できる? 弁護士 志賀剛一

2018/9/13

8月29日の日本経済新聞朝刊に「東京地裁、仮処分申し立て昨年12%増」との記事が掲載されていました。東京地裁が2017年に扱ったネット関連の仮処分申し立ては前年比約12%増の755件で、過去最高を更新したそうで、「SNSのトラブルに加え、転職サイトへの投稿を巡って企業側が仮処分を求めるケースが目立っている」とのことです。転職サイトもトラブルが多いサイトの一つです。

■情報発信者の開示請求

さて、この手続きにより書き込みが削除されても、再び同様の書き込みがなされれば意味がないので、投稿者に対する請求も行いたいところです。しかし、ネットでは誰が書き込んだのかわかりません。そこで、情報発信者の開示請求を行います。

流れとしては、まずサイト運営会社に投稿者のIPアドレスとタイムスタンプの開示を請求します。IPアドレスとは、投稿者が利用したアクセスプロバイダーに割り振られた識別符号で、当該の投稿が行われた日時を示すのがタイムスタンプです。これによって当該投稿がどのアクセスプロバイダーを経由して投稿されたかを特定することができます。これも前述したように仮処分という手続きで行います。

IPアドレスとタイムスタンプが判明したら、次にアクセスプロバイダーを相手方にして発信者(契約者)情報開示請求という訴訟が別途必要になります。そこで初めて投稿者の氏名、住所といった個人情報を得ることが可能となります。

なお、サイト運営会社がグルメサイト投稿者の個人情報も保有している場合(有料会員などの場合)には、別々の会社を相手にする必要はありません。

これらの請求が認められるにはプロバイダ責任制限法に規定された、(1)その情報の流通によって請求者の権利が侵害されたことが明らかであること(2)発信者情報の開示を受けることについて正当な理由があること――という要件を満たす必要があります。具体的には、その書き込みによって自分の社会的評価が低下したこと、また、当該書き込みが名誉毀損であり、真実でないことなどをこちらが立証しなければなりません。

■軽い気持ちの書き込み、損害賠償に発展

投稿者の氏名、住所が判明すれば、店側に実害が出ている場合、投稿者個人を相手にした損害賠償請求訴訟を提起することになるでしょう。軽い気持ちの書き込みが損害賠償に発展してしまうこともありえます。投稿者は責任を十分認識したうえで書き込むべきでしょう。

志賀剛一
志賀・飯田・岡田法律事務所所長。1961年生まれ、名古屋市出身。89年、東京弁護士会に登録。2001年港区虎ノ門に現事務所を設立。民・商事事件を中心に企業から個人まで幅広い事件を取り扱う。難しい言葉を使わず、わかりやすく説明することを心掛けている。08~11年は司法研修所の民事弁護教官として後進の指導も担当。趣味は「馬券派ではないロマン派の競馬」とラーメン食べ歩き。

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