無線LAN高速化の新手 メッシュネットワーク機とは?
2018年の春に、米グーグルがメッシュネットワーク対応無線LANルーター「Google WiFi」を日本で発売して話題になった。またつい先日、無線LANルーターで国内トップシェアのバッファローが対応機器を発表したことで、無線LAN(Wi-Fi)のメッシュネットワークに注目が集まっている。
メッシュネットワークは、対応の無線LANルーターを同じ空間に複数台設置することで、無線LANの電波を遠方に効率良く伝達できる仕組み。
中継器と比べたメリットは何?
無線LANの電波は、無線LANルーターを設置した場所から遠くになればなるほど届きにくい。電波が届かないと、通信状態は悪化する。2~3階建の一戸建てや部屋数が多く広いマンション、オフィスのような広い空間に無線LANルーターを設置する場合、どうしても通信状態が悪い場所ができてしまう。
無線LANルーターと通信状態が悪い場所をつなぐところに中継機を設置すれば、遠方での通信状態が改善されることがある。ただ、中継機は設置した場所の通信をそのまま遠方に伝達する仕組みだ。中継機を設置した場所の通信状態が悪いと、それをそのまま中継するため、遠方の通信状態の向上は期待できない。また、電波は目に見えないため、効率の良い場所に中継機を置くのは至難の業だ。
無線LANルーターと中継機の間の通信経路は一つしかないため、中継機に接続する台数が多くなると通信がそこで詰まり、速度が低下することもある。中継機が故障すると、中継機に接続していた機器の通信がすべて切断されてしまうのも欠点だ。中継機を多段接続した環境で途中の中継機が壊れてしまったら、それ以降の機器がすべて通信できなくなってしまう。このように中継機にはデメリットが多い。
一方、メッシュネットワーク対応の無線LANルーターは、同一環境に複数設置すると相互につながって網の目(メッシュ)のように電波を張り巡らす。設置する無線LANルーターが多くなるほど、電波の網の目は細かくなり、電波の受信可能範囲を広げられる。
中継機と違い、親機となる無線LANルーターまでの途中経路は複数あり、最も状態の良い経路を自動的に選んで接続するので、効率が良く、通信速度の向上が期待できる。また、複数の無線LANルーターで接続を分担するため、接続台数が多い状況にも強いという。パソコンやスマホからは、自動で現在地からもっとも電波状態の良い無線LANルーターに接続するので、接続の切り替えも一切不要だ。
では、対応無線LANルーターは何台くらい置けばいいのか。Google WiFiの場合、85~170平方メートルの住居で2台、170~255平方メートル程度の住居や複雑な構造の住居なら3台以上が目安とされている。裏返せば、ワンルームマンションなどこれよりも狭い環境では導入しても効果は得にくい。
なお、メッシュネットワークを構築するには、同一メーカーの対応無線LANルーターを組み合わせる必要がある。18年5月には、複数メーカーの対応無線LANルーターを混在させてメッシュネットワークを構築できる「Wi-Fi EasyMesh」という規格が策定されたが、現時点で対応製品は出ていないからだ。メッシュネットワークを構築できる機器の組み合わせや、設置できる台数などは、利用する製品によって異なることにも注意が必要。各社から販売されている複数台セットのパッケージを購入したほうがいい。
パフォーマンス重視ならトライバンド対応製品を選ぶ
メッシュネットワークとは何かが分かったところで、製品の選び方に移ろう。
メッシュネットワークに対応する無線LANルーターは、現時点で少ない。前述のようにメッシュネットワークを構築するには複数台の対応無線LANルーターが必要なため、複数台セットのパッケージを選ぶほうがお得だ。ここでは6つの製品を紹介する。
製品にはデュアルバンド対応のものとトライバンド対応のものがあるが、速度を重視するならトライバンド対応を選びたい。トライバンドとは、5GHz帯で2つ、2.4GHz帯で1つの計3つの帯域で通信する仕組み。同時に利用できる帯域が増える分、効率良くデータを送受信できるのでパフォーマンス面で有利だ。
バッファローやエイスーステック・コンピューター(ASUS)の既存製品のように、ファームウエアを適用することによってメッシュネットワーク対応になる無線LANルーターもある。もし、既にそのような製品を使っていれば、ファームウエアを適用し子機を追加するだけでメッシュネットワークを構築できる。
【デュアルバンド対応の製品】
直販価格:4万2120円(3台セット、税込)
●対応規格:IEEE802.11ac/n/g/b/a
●バンド数:デュアルバンド(5GHz/2.4GHz)
●サイズ、重量:幅106.1×奥行き106.1×高さ68.7mm、340グラム
実売価格:2万9000円前後(3台セット、税込)
●対応規格:IEEE802.11ac/n/g/b/a
●バンド数:デュアルバンド(5GHz/2.4GHz)
●サイズ、重量:幅120×奥行き120×高さ38mm、非公開
実売価格:2万6500円前後(2台セット、税込)
●対応規格:IEEE802.11ac/n/g/b/a
●バンド数:デュアルバンド(5GHz/2.4GHz)
●サイズ、重量:幅132×奥行き132×高さ37.5mm、204グラム
【トライバンド対応の製品】
実売価格:3万9200円前後(親機1台、中継機2台セット、税込)
●対応規格:IEEE802.11ac/n/g/b/a
●バンド数:トライバンド(5GHz/5GHz/2.4GHz)
●サイズ、重量:幅231×奥行き70×高さ231mm、970グラム(親機)
実売価格:5万2900円前後(スタンダードキット2台、税込)
●対応規格:IEEE802.11ac/n/g/b/a
●バンド数:トライバンド(5GHz/5GHz/2.4GHz)
●サイズ、重量:幅170.3×奥行き78.9×高さ225.8mm、890.5グラム
(ライター 田代祥吾)
[日経トレンディネット 2018年8月28日付の記事を再構成]
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