日本人が喜ぶスーツ 見栄えしっかり、価格も手ごろ
セレクトショップ&百貨店の「高品質オリジナル」(下)
日常使いするうえで、しっかりした見栄えで手頃な価格のスーツを手に入れたいと思うビジネスマンは多い。高品質な一着を改めて検証したところ、ショップオリジナルという結論に達した。
上下2回にわたる徹底検証の第2回。
\ 私たちが徹底検証します /
[ 高品質スーツ #5 ] TOMORROW LAND
"トゥモローランド"が目指すのは「緻密な美意識」
手作業での巧みなアイロンワークによるクセ取りやイセ込み、毛芯の調整など、ビスポークに匹敵する緻密なこだわりが見て取れる。シルク混のさりげない光沢感を携えた上質な生地も、スーツを装うことを愉しむ男を満足させる、まさに贅を尽くしたこだわり。スーツ8万9000円/トゥモローランド ピルグリム(トゥモローランド)
〈 検証 〉テーラー馴染みのディテールが随所に。マニアックな方の監修ですね(笑)(江利角さん)
「玉縁の幅が細くて柔らかです。この細さは、繊細な仕事の証。この仕上げのお陰で、腰の丸みが非常に綺麗に描かれます。フロント回りに入れられた手縫い風の装飾ステッチやもみ玉縁ポケットなど、テーラー仕立てのムードが随所に漂う趣味性の高いスーツです」
[ 高品質スーツ #6 ] ISETAN MEN'S
"イセタンメンズ"が目指すのは「本格仕立ての存在感」
30代を中心とした第一線で活躍するビジネスマンに圧倒的な価値とこだわりのスーツを提供する。カシミヤライクな肌触りを実現するため葛利毛織にジェントリー加工の生地を別注。国内工場での、フルキャンバス、一枚襟、マニカカミーチャ袖など、手間を惜しまぬ丁寧な縫製が光る。8万9000円(伊勢丹新宿店)
〈 検証 〉全体的に高めのデザインバランス。非常に若々しい雰囲気です。(江利角さん)
「ハイゴージでフロントボタンの位置が高いうえ、肩幅も狭いので、全体的に重心が高く見えます。若い世代に向けた作りですね。素材調達から縫製、コストバランスまで、百貨店ならではの幅広いネットワークをフル活用した費用対効果の高いスーツです」
[ 高品質スーツ #7 ] BEAMS F
"ビームスF"が目指すのは「日本人が喜ぶフィット感」
日本人体型に合わせて毎シーズン細かな修正を重ねることで、時代性を巧みに表現する。立体的なパターンや高品質な副資材、アイロンワークを駆使して身体のラインに沿わせた直線と曲線が、巧みなハーモニーを見せる。日本人に多いO脚をスマートに見せるパンツの独自パターンも秀逸。9万2000円(ビームス ハウス 丸の内)
〈 検証 〉柔らかく自然な丸みが生まれてイタリアンスーツのムードが楽しめます(江利角さん)
「前身頃を長く取り、構築的で米国トラッド風な形にしている♯1に対し、こちらは前後の身頃の長さが均等。なので、柔らかで丸みのあるイタリアらしい雰囲気が楽しめます。肩から首に掛けてのサイドの吸い付きや襟足のノボリの曲線美もエレガントです」
[ 高品質スーツ #8] ESTNATION
"エストネーション"が目指すのは「都会的な表情」
多様化するビジネスシーンに合わせ、近年は見栄えはもちろん、仕事を円滑にこなすための機能性を重視したコレクションを展開。ロロ・ピアーナ社のレインシステム(R)加工で撥水性を持たせた生地に、軽量な毛芯を採用しフルキャンバスで立体的に仕立てた。これなら突然の雨などでも、慌てずに済む。11万円(エストネーション)
〈 検証 〉生地の光沢や肩回りの雰囲気にモード感が漂います(江利角さん)
「ロロ・ピアーナらしいエレガントな光沢と色味の生地。ガチッとした肩回りの表情と相まって、都会的な雰囲気すら漂います。繊細で扱いが難しい一方で、機能性も考慮した実用的な生地選びをしているあたりは、さすがオリジナルならではのクオリティですね」
[ 高品質スーツ #9] STRUSBURGO
"ストラスブルゴ"が目指すのは「中庸の美」
ストラスブルゴの専属テーラー、大島崇照氏の監修のもと、今季はフォーマルをコレクションの中心に展開する。クセのない自然な服を目指した、着る人を選ばない緩やかで安心なフィットが特徴。軽い服地を好む市場を見据え、緯糸を細くして従来の目付310gより軽量な260gに。一年を通して快適に羽織れる。13万円(ストラスブルゴ)
〈 検証 〉クセが少なくニュートラルな表情はシーンを選ばずに使えそうです(長谷川さん)
「英・米ものともイタリアものともとれるこの独特の雰囲気、ニュートラルなシルエットの感じが逆に個性になっています。よくある「◎◎◎モデル」とかでは言い表せない、まさにインターナショナルシティ、日本を象徴する"東京モデル"といえるかもしれませんね」
[ 高品質スーツ #10 ] BARNEYS NEW YORK
"バーニーズ ニューヨーク"が目指すのは「エグゼクティブ感」
「マディソン」、「マンハッタン」、2本柱のオリジナルスーツが登場して6年が経った今季、当コーナーにもご登場の江利角卓也氏を迎えてリニューアル。肩傾斜をなだらかにし、肩前面には毛芯を、肩パッドを背面側にのみ入れることで構築感を強調。より風格を増した「マディソン」の新登場だ。15万円(バーニーズ ニューヨーク)
〈 検証 〉しっかりした肩と胸の表情にエグゼクティブ感が漂いますね(末延)
「強すぎた肩傾斜を緩くしたとのことですが、肩回りにボリュームが生まれて風格がグッと増しています。そのぶん、前身頃の幅を削ってあるので、威圧感は与えません。同じ48サイズでも、各所のサイズ感を微妙に調整するだけでも、見栄えは随分と変わりますね」
※表示価格は税抜きです。
撮影/野口貴司(San Drago)〈人物〉、若林武志、西山 航〈静物〉、長尾真志、椙本裕子〈取材〉 スタイリング/武内雅英、宮崎 司(CODE) ヘアメイク/松本 順(辻事務所) イラスト/千野工一 構成・文/伊澤一臣、小曽根広光 文/吉田 巌(十万馬力)、秦 大輔、竹石安宏(シティライツ)、礒村真介、安岡将文〈P94-99〉撮影協力/バックグラウンズファクトリー
[MEN'S EX 2018年10月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。