相次ぐ大災害 個人の保険・住宅・投資はこう備えよ

住宅の防災対策は大がかりなリフォーム工事に限らない。備品の設置や点検も重要となる。

山見さんが設置を提案するのが「感震ブレーカー」だ。大型の地震を検知すると自動的に分電盤のブレーカーを遮断して電源を止める。停電後に復旧した際、倒れた家電製品などから火事が発生する例が多く、「二次災害の防止につながる」(山見さん)。ホームセンターなどで取り扱いがある。

さらに、火災報知機についても、稼働するかどうかを定期的に点検しておくと、被害の規模を抑えられる。

■投資、損失を抑える手法も有効

大規模災害時は投資にも影響が出る。証券取引所や証券会社のシステム障害が起きれば、株式売買の発注に支障が出かねない。

インターネット証券各社はシステム対応拠点を国内複数カ所に配置して大災害リスクを分散している場合が多い。カブドットコム証券はシステムを本社のある東京都と福岡県の2拠点に配置している。楽天証券は災害時にコールセンターへの電話が集中するのに備え、福岡県内にも同センターを配置した。

障害の影響で思い通りに売買発注できなかった場合はどうなるか。カブドットコム証券では大災害時、「障害災害時専用サイト」が稼働し、現物株や信用取引などの注文要望を顧客から受け付ける。システム復旧後に注文を実施する。例えば災害発生直後ならば株価100円で売れたのに、実際は80円で売ったなら顧客損失の20円分が顧客の手に戻る形になる。自社システムに障害が発生した場合などに限る措置だ。

各社はシステム障害などで取引が実行できない場合の情報提供体制を強める姿勢だ。

楽天証券の平山忍常務執行役員は「今後もネットを活用した緊急時情報提供体制を段階的に強化していく」と話す。フェイスブックやツイッターなど交流サイト(SNS)を活用し、最新の情報を提供しようとする証券会社も多い。

また、投資家としては、日経平均株価など株価指数の先物やオプションを活用し、相場急落時の損失を限定的にする投資手法を取り入れることも有効だろう。災害時のシステムリスクに対応するための布石を打つことも大切だ。

■生活資金6カ月分確保し備える

ファイナンシャルプランナー 伊達寿和さん

ファイナンシャルプランナー、伊達寿和さん

大地震などの災害時にまず必要になるのは現金だ。金融機関のATMが動かず、物流が滞る中、現金に勝る交換手段はないと考えられる。2週間ほど経過すれば混乱の時期は解消するものの、住居に大きな被害が出れば生活再建のための期間が必要になる。手元に5万~10万円は現金を用意しておくようにしたい。また現金が水ぬれに遭うリスクもあるので、紙幣ではなく硬貨で非常用防災袋などに封入するのがよいだろう。

その上で、個人は「緊急予備資金」として最低3カ月分、できれば半年分を現預金で用意したい。被災時は食事や衣服、交通・通信費、ホテルなどの宿泊費が必要になるためだ。災害時、金融機関は引き出し金額を制限する可能性があるので、複数に分散する工夫も必要だ。

運転免許証や各種保険証などの本人確認書類は常に携帯しておくのが望ましい。銀行などのキャッシュカードや通帳を紛失、焼失してしまうと、基本的に預金の払い戻しができないからだ。コピーで良いので、普段から自分を証明する書類を手元に用意しておこう。

災害が発生した場合、まず大切なのが「罹災(りさい)証明書」を自治体に申請する作業だ。同証明書は家屋の被災状況を証明するもので、保険金や公的支援制度を受ける際に必要になる。ただし交付までに時間がかかる場合が多い。混乱期は証明書などの受付場所などの情報が交錯する場合もある。スムーズに地震対応のお金を受け取るため、災害発生時は近所の人とこまめに情報交換できるような人間関係を築きたい。

いつ起こるか分からないのが大災害の怖さだ。個人は災害発生時の混乱を最小限に抑えられるよう、マネーの面からも備えておく姿勢が大切だ。

(マネー報道部 南毅)

[日経ヴェリタス2018年9月9日付]

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