正装女性がワインも楽しむ オージー流競馬イベント
英国王室主催の「ロイヤルアスコット」やフランスの「凱旋門賞」などでは、最高峰の馬のレースを見るために、帽子をかぶって正装で着飾るセレブの写真がよくメディアに登場する。
競馬イベントは、ハレの社交場
毎年11月の第1週にオーストラリアのメルボルンで開催される「メルボルンカップ・カーニバル」も、そんなハレの日をオージー流に国民も観光客も楽しめる競馬イベントだ。
開催されるのは、メルボルンの中心地区から公共交通機関を使って約15分ほどでアクセスできるフレミントン競馬場。ドレスアップした観戦者が集まり、競馬だけではなく、ファッションやグルメ、ワインなどを楽しめる一大イベントである。
メインは11月第1週火曜日に開催される「レクサス・メルボルンカップ」。芝3200メートルという長距離を競い、賞金総額はなんと730万豪ドル(約5億7000万円)、優勝賞金は400万豪ドル(約3億1000万円)。優勝トロフィーはずしりと重みのある18金製だ。
そして、メルボルンカップが開催される第1火曜日をはさんだ前の土曜日から次の土曜日はメルボルンカップ・カーニバルといって、若い3歳馬のレースである「ダービー」や牝馬のレース「オークス」などの重要なレースが行われる。
メルボルンカップの当日は、メルボルンは祝日。女性は帽子にドレスで思いっきり着飾り、男性もスーツやタキシードを着て来る人もいる。メインのレースは午後だが、もう午前中からピクニックのように観戦を楽しむ。
メルボルンカップの発走する午後3時には、レースにくぎ付けになって国が止まるというほどの伝統的な大レースだが、屋外テントではオーストラリア全国から有名レストランやバーが出店し、グルメな料理やワインに地ビールが販売される。ライブ音楽のステージもあり、芝生に座って大画面でレースを楽しむこともできる。チケットには観戦場所や様々な種類があって、ドレスコードが自由な一般入場から、食事やドリンクがパッケージになっているものもある。
競馬観戦に帽子をかぶった正装で臨むワケ
淑女の気分で競馬観戦するためのおしゃれに不可欠なのが帽子。メルボルンの帽子屋はこの時期大忙しで、豪華な仕立ての帽子は4万円以上もするが、それでも毎年、流行もあって新調する人も多いという。競馬場でのおしゃれが広まったのにはワケがある。
メルボルンカップが始まったのは1861年だが、62年から女性にも競馬を見に来てもらおうと、メルボルンの老舗百貨店であるマイヤーがスポンサーとなり「ファッション・オン・ザ・フィールド」というオーストラリア最大の屋外ファッションイベントを創設したのだ。男女それぞれ部門があり、賞金総額は40万豪ドル(約3150万円)をかけて、レースファッションを競う。
メルボルンカップ・カーニバルの幕開けであるダービー・デーでは、女性は黒と白を基調にしたドレス、男性はグレーのモーニングにシルクハット、ピーコックベスト、ピンストライプのズボンが正装。メインレースのメルボルンカップ、そしてオークス・デーは淑女の日と呼ばれ、ファッション・オン・ザ・フィールドの優勝発表がされる。
オークス・デーには、「オークスデーランチ」と呼ばれる女性が主役のランチイベントもあって、着飾った女性達が入り口の記念パネルの前で撮影。華やかな花で飾られたテーブルを囲んでフルコースランチを楽しみ、最後にはライブやダンスでちょっと羽目も外せる。スポンサーから様々なプレゼントもあって、まさに女性のためのランチパーティーだ。
国家遺産登録もされているフレミントン競馬場を運営するのは、会員数が3万人を超える世界最大の会員制競馬クラブであるビクトリア・レーシングクラブで、ここがメルボルンカップ・カーニバルも主催している。
このビクトリア・レーシングクラブ会員専用の「フレミントン・バードケージ」というスポンサーがぜいを尽くしてつくる仮設施設があり、毎年、世界的なセレブやオーストラリアの有名人が招待される。ダイアナ妃、ニコール・キッドマン、サラ・ジェシカパーカーなどが来場したこともある。
メルボルンカップ・カーニバルの2018年の開催予定は、第1日目「AAMI ビクトリア・ダービー・デー」が11月3日(土)、「レクサス・メルボルンカップ・デー」が11月6日(火)、「ケネディー・オークス・デー」が11月8日(木)、最終日である「VRC ステークス・デー」が11月10日(土)だ。
オーストラリアはもとより世界中から長距離走の名馬が参戦するレース。日本馬も08年から当年春の天皇賞の優勝馬には優先出走権が与えられていて、06年には1着、2着を日本馬が独占したこともある。
成田からメルボルンまではカンタス航空と日本航空がそれぞれ毎日1便の直行便を出しているほか、経由便も数多い。春爛漫(らんまん)のメルボルンで飛び切りのおしゃれをして世界最高峰のレースを観戦するのはどうだろう。
世界有数のトラベルガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集を経て、フリーランスに。東京と米国・ポートランドのデュアルライフを送りながら、旅の楽しみ方を中心に食・文化・アートなどについて執筆、編集、プロデュース多数。日本旅行作家協会会員。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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