職場の人間関係が円滑に 嫌みなく伝わる魔法の言葉
職場で言いたいことが言えないと、仕事を抱えすぎたり、人間関係のストレスをため込んだりすることも。「伝え下手」を解消するための、コミュニケーションの秘訣をレッスン!
言いたいことが言えると仕事も人間関係もラクに
他人からどう思われるか気になり、「本音が言えない」「言いたいことが伝えられない」と感じる女性が増えている。特に仕事の場では、それが大きなストレスになりやすい。
「伝え下手な人は、『私さえ我慢すれば』と受け身になって黙り込むか、肩に力が入って相手を責める言い方をしてしまう。どちらも失敗です」とアサーティブジャパン代表理事の森田汐生さん。
働く女性が身に付けたいのは、相手を尊重しながら自分が本当に伝えたいことを率直に伝える技術。それが「アサーティブコミュニケーション」と森田さん。コツをつかめば、人間関係がラクになる、仕事で評価が上がるなど、メリットも多い。言いたいことをしっかり言える自分に変身しよう。
【1 誘いを上手に断る】
仕事が忙しい日が続き、体調もなんだか優れない…。「今日は早く帰って寝よう」と思った矢先、先輩から「飲みに行かない?」とお誘いが!
× ちょっと今日は別の予定があって…
× 行きたいんですけど…。うーん…ちょっと調整します
とっさにウソをついたり、曖昧な返事で言葉を濁して結局ドタキャンしたりすると、相手の印象は悪くなり、自分自身もモヤモヤが募る結果に。
まずは誘いに対するお礼を伝え、相手の気持ちを受け止めるのが礼儀。断るときは、率直な理由と代替案をセットにすると印象がアップ。「過剰に謝りすぎるのもNG」。
【2 後輩(部下)を注意する】
新卒の後輩。一生懸命なのは分かるが、提出物は遅れがち。進捗を聞いても「大丈夫です!」の一点張りで困ってしまう。
× なんで遅れるのかな? 大丈夫じゃないよね?
△ ちゃんと進捗報告しないとダメだよ!
「最終的なゴールは、後輩が締め切りを守れるよう仕事のやり方を導くこと。感情的に責めたり、ダメ押ししたりするだけでは問題解決になりません」
まずは「客観的な事実」から伝えること。「経験が浅い新人は、周りが見えていない可能性が高い。その行為が周囲に与える影響を示し、改善するための具体的な提案を」。
【3 雑談を切り上げる】
締め切りが迫っている業務に集中したいと思っていた矢先、同僚が雑談をしてきた。仕事に戻りたいが、なかなか話が終わらない。
× へ~、そうなんだ!
× (返事は上の空で、忙しいオーラを出す)
聞いているフリをしたり、遠回しな態度で察してもらおうとしたりするのは、かえって失礼。「『適当にあしらわれている感』が相手に伝わり、不快にさせてしまうかも」。
「深刻にならずにサラッと笑顔で告げれば、相手も嫌な印象を受けないはず。『今は無理だけど、後で聞きたい』とポジティブに伝えることで、良い関係を保てます」
【4 忙しい相手に話しかける】
上司に会議資料の内容を相談したいが、忙しそうで話しかけづらい…。イラッとされるのが怖く、躊躇(ちゅう ちょ)してしまう。
× あの…、すみません、会議の資料のココが…
× (話しかけない)
目的が分かりにくい質問は相手をいら立たせ、自分の評価も下げる。また、怖くて話しかけられない状態は、なんの解決にもならないばかりか、仕事が遅れる原因にも。
ポイントは「相談したい」など、用件を明確に伝えること。所要時間は「一瞬」「少しだけ」などの曖昧な表現ではなく、数字で示すと忙しい相手も時間を取りやすい。
【5 安請け合いをやめる】
締め切りが迫っている仕事を2つ抱えており、すでに手いっぱいなところに、上司から新しい仕事を依頼された。
△ はい、分かりました…
× 無理です、できません!
NOが言えずに安請け合いすると、他の業務に支障が出て周りに迷惑をかける恐れが。一方的に突っぱねるのは仕事への姿勢を問われかねず、評価を下げるNG行為。
結論だけを伝えるのはNG。依頼内容を確認し、自分の状況を簡潔に伝えた上で意見を述べ、上司の判断を仰いで。代替案を示し、仕事への意欲もアピール。
【6 相手の勘違いを指摘する】
先輩から「あの件、報告ないけどどうなってるの?」と強い口調で指摘が。2日前にメールしたはずなのに…。
× メール送りましたけど…
× 申し訳ありません…
カチンときてムッとした態度で言い返すと、相手も感情的になってしまう。事実を確認する前に、怒られたからとりあえず謝るという行為も、信用をなくす要因に。
「批判された」と感情的に受け止めず、いったんその場を離れ、心を落ち着かせて。相手のミスを責めず、事実を伝えた上で、自分にできることを前向きに提案しよう。
【7 セクハラ発言から逃げる】
飲み会の席で、男性の先輩から「彼氏いるの?」「好きな人は?」としつこく聞かれた! 冗談っぽいけど、気分は悪い。
× ……(苦笑い)
△ ほんとにやめてください!!
相手に悪気がない場合、苦笑いで受け流しても嫌がっていることに気づいてもらえず、同じことの繰り返しに。とはいえ、明らかな拒絶は場の空気が悪くなってしまう。
「セクハラと分かっていない場合が多く、真剣に受け止めて心をすり減らすのは時間のムダ。軽くかわしつつ、それがセクハラに当たると会話のなかで指摘して」
【8 言いづらいことを指摘する】
胸元が緩い服を着ている後輩。少しかがむとブラジャーが見えることも! 男性上司から注意してほしいと言われ…。
× 課長から言われたんだけど…
× その服装、みんなの評判悪いよ
「『他人の意見』を持ち出して注意や指摘をすると、自分の言葉が響きづらくなります。また、多数決で強引に従わせようとするのは、相手に反発心を持たれることにも」
「私」を主語にしながら事実を爽やかに軽く伝えると、重くならず、相手にも伝わりやすい。回りくどい口調はかえって嫌みに聞こえる場合もあるので注意して。
NPO法人アサーティブジャパン代表理事。イギリスでアサーティブを学び、帰国後に日本での普及を後押し。アサーティブ・トレーナーとして、全国各地で多数の講演・研修を行う。著書は『心が軽くなる! 気持ちのいい伝え方』(主婦の友社)など。
(ライター 西尾英子)
[日経ウーマン 2018年8月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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