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家を伴侶に「おしどり贈与」 2000万円まで非課税 安心老後へ有効活用

2018/9/15

写真はイメージ=PIXTA

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で自宅の不動産を贈与する場合、2千万円までは贈与税がかかりません。これは通称「おしどり贈与」と呼ばれ、2016年は1万1261件の適用がありました。先の通常国会では、自宅を生前贈与されても原則として相続分から差し引かれない改正民法が成立。配偶者の老後生活を保障する手段として改めて注目されています。

おしどり贈与は同じ配偶者に対して一生に1回だけ適用してもらえます。配偶者がいま住んでいる自宅だけでなく、新たに自宅とする不動産を買うためのお金を贈与する場合も対象です。贈与の翌年3月15日までに配偶者が実際に住むことが条件です。

贈与税にはもらう人1人当たり年間110万円の非課税枠があります。おしどり贈与とあわせると、自宅の土地・建物も自宅取得資金も、2110万円までなら贈与税がかかりません。ただし、所有権の登記にかかる登録免許税は相続に比べて税率が高く、不動産取得税もかかります。

日本人の平均寿命は男性が81歳、女性が87歳ですから、同い年の夫婦であっても夫に先立たれた妻には約6年間の余生があります。夫が年上なら妻の余生はさらに長いでしょう。おしどり贈与の多くは夫から長年つれそった妻への感謝のしるしであると同時に、妻の老後の生活保障という意味合いがあります。

しかし現行民法では相続人の間の公平のため、こうした生前贈与を「特別受益」として扱い、その分だけ法定相続分を減らすという規定があります。この計算は「持ち戻し」といいます。おしどり贈与の分が持ち戻しされると、妻の老後の生活保障という意味合いが薄れてしまいます。

例えば2千万円をおしどり贈与した夫が、妻と子ども1人に4千万円の預金を残して亡くなったとします。法定相続割合は妻と子どもで2分の1ずつ。持ち戻し計算をすると取り分はそれぞれ3千万円です。すでに2千万円を受け取っている妻は、預金のうち1千万円しか相続できなくなります。

■相続でも取り分確保

夫が遺言や生前の言動などで「持ち戻し免除」の意思表示をしていれば特別受益に含まれず、妻の相続分は減りません。ただ多くのケースでは意思表示が明文化されておらず、相続人の間でトラブルの種になるリスクがあります。

そこで19年7月12日までに施行される改正民法では、婚姻20年以上の夫婦間で贈与した居住用不動産について、持ち戻し免除の意思表示があったと推定することにしました。一定条件を満たす自宅贈与を遺産分割と切り離して扱うことで、妻の生活保障を手厚くするためです。自宅取得資金についてはこの規定の対象外なので要注意です。

ただし、改正民法で持ち戻し免除が完全に保証されるわけではありません。相続問題に詳しい朝日中央綜合法律事務所(東京・千代田)の弁護士、森下慎也さんは「改正民法の持ち戻し免除はあくまで『推定』なので、何らかの反証によって覆ることもある。相続トラブルを避けるには、やはり遺言や手紙で持ち戻し免除の意思表示をしておくべきだ」と指摘しています。

[日本経済新聞朝刊2018年9月8日付]

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