コラボレーションをする際はその作品の世界観、誰かをプロデュースするときにはその人の考え方やバックグラウンド、その先に見つめる世界などを受け止めて描くようにしています。大変な作業ではありますが、自分と向き合って内なるものを引き出して形にする方がむしろ難しいし苦しい作業かもしれない。今回は『北斗の拳』がより『北斗の拳』らしく。『ラオウがもしも歌を歌ったら……』とそんな思いで制作したので、紛れもなく僕の作品でもありますが、ラオウが憑依(ひょうい)した感じでしょうか(笑)」

今回はラオウをイメージして曲を作ったという

ロンドンに移ったころは気負いすぎてました

「我が生涯に一片の悔い無し」という言葉は布袋さん自身の生きざまにも通じるように見える。BOØWYでの活躍のあと、ソロでも数多くの作品を作り、多彩なサウンドを発表してきた。さらにロンドンに移住し、欧州にも活躍の場を広げている。

「僕の人生も『一片の悔い無し』に見える、ですか? はたから見れば、好きなことを仕事にして、いろんなことを乗り越えながらサクセスストーリーをつかんでいるように映るかもしれませんね。

ですが、実際には試行錯誤の連続。50歳を機に、6年前からロンドンに移り住みましたが、今思うとあの時は気負いすぎていたなと(笑)。当時はインタビューを受けると『日本人』『50歳』『30年のキャリア』『夢』のような強い言葉を発することが多かった。でも、実際は国籍もキャリアも年齢も関係ないのが表現の世界。『世界』と『日本』を分け隔てることなく、ここに来てようやく焦点が合ってきたと感じます。きっと一足飛びに成功しようと焦らず、小さなライブハウスから海外での音楽活動をスタートしたからだと思うんです。それによって、原点に立ち帰れた。今は海外でビジネスする日本人も増えましたが、言葉の壁なんかもあるし、つい気負っちゃう。そうするなと言っても難しいだろうけど、日本と海外とを区別せず、視点を少し変えるだけでいろんなことが違って見えるんじゃないかと思いますね。

一方で、音楽面では常に新しい技術と前向きに向き合ってきました。ソロデビューアルバム『GUITARHYTHM』(1988年)を制作したのは今のようにコンピューターが便利ではなく、むしろ手間だった時代(笑)。それでもロックバンドとは違うフォーマットで音楽を創りたいと思い、ギターとコンピューターだけの音楽に挑戦しました。最先端がすべて良いとは思わないけど、テクノロジーの進歩で助けられていることは多い。僕らがバンドを始めた頃はライブで必需品のイヤーモニターもなければ、データの転送もままならなかった。それが今ではデータを自由にやりとりし、世界中で瞬時に新作を共有できます。

今年、ロンドンからのライブ中継で『3Dバーチャルフィギュア』というテクノロジーを導入しました。言葉で説明するのはかなり難しいのですが(笑)、僕の3Dフィギュアがスマートフォンの画面の中で映像として浮かび上がり、まるで目の前で演奏しているかのような距離感、臨場感を楽しめるアプリです。新曲『202X』では、僕のほかにケンシロウとラオウという強力な助っ人も登場するので(笑)、より楽しんでもらえるんじゃないかな。

2年後には東京オリンピックが開催され、そこで日本は5Gをはじめとするテクノロジーで世界を驚かせることができるはず。最新技術を使ってどう世界が一つになるか。世界を変える可能性を秘めたテクノロジーに対して、人間がそこにどうアジャストして豊かにできるかですよね。それを見られると思うと今から楽しみです」

新しい技術に積極的にチャレンジを続ける姿勢も一貫している
布袋寅泰(ほてい・ともやす)
 1962年2月1日生まれ、群馬県出身。81年にBOØWYを結成。88年よりソロ活動をスタート。現在は英ロンドンに在住し、サッカーの欧州クラブに所属しワールドカップ・ロシア大会で活躍した吉田麻也や岡崎慎司選手らとも交流があるという。10月7日のベルギーを皮切りにヨーロッパツアーを行う。11月10日兵庫県・神戸国際会館から、12月30日大阪府・オリックス劇場まで、日本でのホールツアーを開催。

(文 橘川有子、写真 藤本和史)

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