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女性管理職が語る

「本質は何か」いつも自分に問う 答えは現場の体験に セイコーウオッチ取締役常務執行役員 庭崎紀代子氏

2018/9/13

庭崎紀代子・セイコーウオッチ取締役常務執行役員

 管理職として活躍する女性が仕事やプライベート、働き方への思いを自らつづるコラム「女性管理職が語る」。10人の女性管理職が交代で執筆します。今回は、セイコーウオッチ取締役の庭崎紀代子氏。5回目の登場です。

◇  ◇  ◇

 ジュエリーから時計の世界に異動した私が携わることになったのは、レディースの商品企画でした。セイコーの腕時計は陸上の公式計時やダイバーズウオッチの印象が強く、レディース、それも高級品の存在感をいかに高めるかは当社にとって常に大きな課題です。

 当時、私は外部のコンサルタントも参画する新製品立ち上げのプロジェクトチームのメンバーでした。宣伝や広報など幅広い分野を担当するようになった今も、ここで学んだことが仕事をするうえでの「礎」の一つになっています。

 それは常に自分自身にものごとの本質を「なぜか?」と問うことです。企画書を無難にまとめると表面的には企画が完成した気分になりがちですが、耳触りのよい言葉に隠れて本質を見失っていないか。奥の奥にあるインサイトは何か。プロジェクトではそれを徹底的に追求しました。

 「なぜ、この色なのか」「なぜ、この形にしなければいけないのか」「この時計を着ける人の時間感覚は」「それはこのブランドにどうつながり、何の意味を持つのか」。コンサルタントから矢継ぎ早に繰り出される「なぜ?」に、どうしても答えられないことが何度かありました。

 「本質」を伝えるには自分で体験して感じたリアリティがいかに重要であるかに気づかされたのです。例えば「(日本の)ラグジュアリーとは何か?」という問いです。

 チームで京舞を見学しました。登場する舞手の方々は修練を積んだプロですが、私は演目の最後に登場した家元の舞に圧倒されました。すべての所作や存在感のレベルがまるで違うのです。定量的にはうまく説明ができませんが、「まさにこれがラグジュアリーだ」と実感した瞬間でした。

 リアリティを伝えるという意味では、ものづくりの現場を見ることも重要です。例えばグランドセイコーは一見シンプルなデザインのあらゆる要素に理由があり、作り手の思いがあります。

 視認性の高い針の青い色は塗装ではなく、鉄の針を一定の温度で熱して生じる酸化膜で出しています。色合いは温度と加熱時間により千差万別に変化するため、深く鮮やかなブルーになった瞬間に焼きを止める必要があります。熟練の職人が余熱の効果も考慮しながら一点一点手作業で焼いているのです。

 金属ケースの美しさは研磨技術に支えられています。スムーズなように見える磨きですが、実際に体験させてもらうと一瞬で表面をボコボコにしてしまいました。繊細な技術によることを身をもって体験したわけです。

 製造の現場を訪ねると、当初はベテランの職人さんから「ものづくりがわかっているのか?」という目を向けられたこともあります。しかし、話を聞いて一緒にやっていくことで一体感が生まれ、「そんなにいうなら」と様々なことを教えて頂けるようになりました。

 ラグジュアリーウオッチは数値には現れないヒューマンな要素をリアリティを持ってお客様に伝える必要があります。常に自分に本質を問いながら、その本質を理屈だけでなく、自身の感性で捉える。それが人の心に届く製品づくりにつながると思います。

にわさき・きよこ
 日本女子大文卒、服部セイコー(現セイコーホールディングス)入社。ライセンスジュエリーを担当。2001年にセイコーウオッチへ。18年取締役常務執行役員。

[日経産業新聞2018年9月6日付]

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