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「場を与えれば人は必ず育つ」 花王社長の人材育成論 花王の沢田道隆社長×一橋大学大学院の伊藤邦雄特任教授

2018/9/12

伊藤:同感だ。私は経営リーダー育成のための研修で講師を務めることも多いが、やはり人は育つという視点が大事だと思っている。研修の過程で早く成長する人と、そうでない人がいる。そんなときは、どういう刺激を与えると自ら気づくだろうと考えながら講義をする。

■研修で大事なのは活性化したかどうかの評価

沢田:研修で最も大事なのは、その前と後で受けた人がどう変わったか、活性化したかをきちんと評価すること。一般的に主催者側である人事部門は、研修をやること自体が目的となり、フォローが手薄になりがちだ。研修はあくまで手段であり、目的である対象者の成長度合いや活性化レベルをうまく評価し、サポートすることが重要だ。

とはいえ、人の成長を評価することは案外難しい。特に人事や総務など成果を数字で表しにくいコーポレート部門はそうだろう。ではどのように評価するか。その人がもともと持っているポテンシャルや性格を前もって把握しておき、細かい点でもいいから変化を見逃さないことだ。「言われなくてもできるようになったね」とか。だから私は相対評価には反対だ。その人自身は1年前と比べて成長しているのに、全体の中では評価が変わらないのでは、やる気をなくすだろう。

一橋大学大学院の伊藤邦雄特任教授

伊藤:絶対評価にすると、給与を上げる原資が足りなくなるのでやらない、という経営者もいるが。

沢田:足りなくならないように稼げばいい。それが経営者の役目だ。企業を成長させるには、個を伸ばすことが大前提になる。人はほめられたり、存在感を認められたりして伸びる。そして、個の力に組織力を掛け合わせたものが企業の力になる。個の活性化をどう評価するか、これが今の人材育成で抜け落ちている部分かなと思う。

伊藤:沢田さんは03年7月にサニタリー研究所の所長に就き、紙おむつ「メリーズ」の立て直しを任された。売れ行きが芳しくなく、当時の研究所内の雰囲気も悪かったと聞く。どのように組織を活性化したのか。

沢田:技術や商品を議論する前に、まず研究者が何を考えているか、どんな不満を抱えているのか、知ることが先決だと考えた。130人全員に面談したのだが、1人に2~3時間くらいかかるときもあり、結局終わるまでに半年かかった。しかし、この個別面談の効果は大きかった。まず朝のあいさつが活発になった。会議でほとんど話さない人が「一つだけ聞いていいですか」と質問するようになった。「自分は組織の歯車の一つだと思っていたが、結構大きい役割を担っていると気づいた」と言ってくれる社員もいた。

数字には表れないが、一人ひとりの個が活性化した。それが130人集まると、すごいポテンシャルになる。あとはトップが方向性を示して極大化していけばいい。人は育つ、そして動かなかった組織が動き出すのを間近で見ることができ、得がたい経験になった。

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