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ラグビーW杯、チケット転売が猛威 定価の2倍超も 日本では法規制に限界

2018/9/12 日本経済新聞 朝刊

19年のラグビーW杯日本大会のチケットは高値転売が横行している(写真は米国で今年7月にあった7人制W杯)=共同

 2019年以降、日本で国際的に注目されるスポーツイベントが相次ぐ。大会運営で懸念されるのは、チケットの高額転売だ。販売が始まったラグビーワールドカップ(W杯)では早くも、インターネット上で定価を大幅に超える高値での出品が横行。ネット上の高額転売を防ぐことができない背景には、国内法での規制の限界が浮かび上がる。

 「カテゴリーA チケットの価格JP¥239,671」――。19年9月に開幕するラグビーW杯日本大会の決勝チケット。ある転売仲介サイトでは今年8月末、定価の2倍超の価格で売り出された。

 ラグビーW杯のチケットは申し込みが始まった今年1月以降、ネット上で出品が相次いだ。大会組織委員会はサイト運営者に転売自粛を求めたが、一部の業者は今なお応じない。組織委の担当者は「粘り強く取り下げを依頼しているが、対応の難しさを感じる」と漏らす。

 実はチケットの高額転売行為自体を直接、罪に問う法律はない。これまで転売行為は公共の場での「ダフ屋行為」が一般的とされ、都道府県の迷惑防止条例違反を適用してきた。だが、条例の対象はあくまで路上や店舗と解釈され、ネット上の取引は「公共の場」と法律上は解されないのが一般的。このため、ネットの高額転売に同条例などは適用できず「法の抜け穴」とさえいわれる。

 田上嘉一弁護士は「誰もが通る『公共の場』である路上での客引きなどは、社会秩序の乱れにつながる迷惑行為で、ダフ屋規制はこれを取り締まるためのもの。転売の規制ではない」と話す。「ネット上では、買い手側が自身の意思でサイトを訪れて取引するため『公共の場』の行為とみなされず、迷惑防止条例は適用できない」と解説する。

 ネットの高額転売はここ最近、社会問題化。代表的なのは人気歌手のコンサートで、宇多田ヒカルさんのツアーでは申込時に観客全員の顔写真の登録を求めるなど厳格な転売対策を打ち出すに至った。国際的なスポーツ大会も数年に1度の開催であり、高額転売の格好の標的になっている。

 マイナス面は複数ある。まずは業者が転売目的で買い占めた場合、観戦希望者がチケットを入手できなかったり、消費者が余計な出費を強いられたりすることだ。空席が出るリスクもあり、せっかくのスポーツ大会に水を差しかねない。

 海外のスポーツ大会では12年ロンドン五輪で一部を除き、転売を事業として行うことを禁じ、違反者に罰金を科す法律ができた。日本でも超党派の議員連盟が、興行主の同意を得ずに商売として定価以上で転売する行為を「不正転売」とみなす法案をまとめた。ただ、田上弁護士は同法案について「自由経済の原則に反する恐れがある上、利用者と買い主が異なることを証明するのは難しく、ごまかす方法はいくらでもある」と指摘する。

 20年の東京五輪・パラリンピックのチケットは現段階で計1010万枚の見込み。19年春に公式サイト上で一般販売が始まり、50万人以上が購入手続きに必要な事前登録を済ませた。日本での夏季五輪は半世紀ぶり。「一生に一度の観戦機会」ともいわれる希少さから、非正規なルートでの取引の過熱が懸念される。

 国際オリンピック委員会(IOC)は、適正価格で購入できるように開催国に取り締まりの徹底を求めており、高額転売が横行すれば信頼が揺らぐ可能性もある。

 対策として、組織委は正規の購入者が何らかの事情で観戦できなくなった場合に定価でチケットを譲渡する「リセールサイト」を開設する。

 26年の名古屋アジア大会や冬季五輪招致を目指す札幌。いずれも経済波及効果は大きく、世界に日本を発信する好機だ。テロ対策やボランティア、選手などの輸送だけでなく、チケット問題も運営成功には欠かせない。

 ITジャーナリストの三上洋氏は「法規制を強めても裏をかく手法は次々に生まれると予想される。業者側も自発的に取引規制や対策を進める必要がある」と指摘する。

(桜田優樹、岩沢明信)

[日本経済新聞朝刊2018年9月6日付朝刊]

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