こうなると広くネット全体を「ググる」より、情報コミュニティーに蓄積された体験談や評価などの「生の声」を見つけたり、SNS検索や「#(ハッシュタグ)検索」で関連するコメントを探したりする方が楽になります。様々な情報を読み込む手間もなく、あっという間に理解した気分になれるからです。時間だけでなく、スマホの電池切れや通信容量の制限も気になる消費者は「せっかち」になりがちなのでしょう。

消費者と企業、出合いはSNSで?

今後、企業にとってはホームページを充実させるより、SNSなどで情報コミュニティーに接触する方が大きな成果を見込めるという局面も多くなりそうです。実際、シャープやタニタなどは「キャラクターを立たせた」ツイートで多くのフォロワーを獲得し、スターバックスは写真投稿アプリのインスタグラムで商品を入れたきれいな写真を多数公開しています。

このようにSNSで消費者との接点を増やし、情報コミュニティーを通じて「生活者の関心の内側に入っておく。つながり続ける」努力が、今後は死活的に重要になると著者は説きます。

本書では、マーケティングの具体的なテクニックも、ひとつの章を割いて紹介しています。たとえば、情報の「拡散」のやり方はこうです。

わかりやすく言えば、「すごい」「面白い」「感動する」ものが有効です。キャンペーン企画であれば、意図的にシェアを促進することができます。「シェアでクーポンが得られる」「リツイート数でインセンティブがどんどん豪華になる」といった施策がその典型です。
(5章 スマホマーケティング 7つのテクニック 222ページ)

SNSマーケティング、使い分けが大事

「LINEは企業が生活者とつながれる最大級のプラットフォーム。1000万を超える友だちを持つ企業のアカウントも増えている」「ツイッターは、10~20代のスマホユーザーのほぼ半分が利用している。その3分の1以上が実際の友人らとつながる『本アカ』と趣味でつながる『サブアカ』など、複数のアカウントを使い分けている」――。

主要な4つのSNS「LIFT」(LINE、インスタグラム、フェイスブック、ツイッター)についての著者の解説は、スマホマーケティングの初心者にも分かりやすく、狙うターゲットに的確にメッセージを届ける戦術の基礎になりそうです。「納得消費と逃げ道消費」「川メディアと沼メディア」など、消費者の購買行動の変化とスマホの関係を読み解く著者の分析や考え方も参考になります。電通のスマホユーザー調査の結果が、多くのグラフや図、イラストで分かりやすく示されているのも見どころです。

◆編集者からひとこと 雨宮百子

本ができるまでの間、著者の吉田さんと私は「新しいものを買うとき、フリーマーケットアプリで販売価格をチェックする」「インスタ映えが面倒になり、投稿した写真が24時間で消える『ストーリーズ』機能ばかり使う」などといったスマホの使い方で一致し、盛り上がりました。一方、吉田さんと同じ40代の編集者は、面食らうばかりでした。

スマホをどう使うかは、人ぞれぞれです。年代や性別によっても、利用するサービスや使うアプリは、大きく違います。ただ、かなり使い込んでいないとマーケティングまで考えるのは難しいでしょう。本書は、あまり詳しくない人にも、スマホ利用の基礎知識から分かってもらえるように構成し、専門用語の巻末用語集をつけたり、なるべく日本語に言い換えたりという工夫もしています。シンプルで実践的な一冊です。

一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ日本経済新聞出版社の若手編集者が、同世代の20代リーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。掲載は原則、隔週土曜日です。

スマホマーケティング

著者 : 吉田 健太郎
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,620円 (税込み)

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