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オリパラ
開国インバウンド

2018/11/7

開国インバウンド

「食事のメニューも、日本人だけの場合はお酒を飲むことが多いので食後のフルーツは簡単なものですませますが、東南アジアの方々は、食後のフルーツが大好きです。ですから、北海道産のメロンなどを用意します。そのほか女性の参加者がいれば、北海道で人気のお菓子を贈呈することもありますし、記念品も扇子など日本らしさがあるものをオリジナルでつくってお渡ししたこともあります」

プライベートやビジネスでもつながりができているという(17年8月の合同コンペ懇親会、北海道千歳市)

──フレンドシップ契約によって、ゴルフ場にどんな変化が起きていますか。

「大きく分けて二つの変化があります。一つは、合同コンペを通じて、日本人会員の皆さんの(外国人に対する)意識が変わり、個人的な付き合いに発展していることです。つまりゴルフ場の外でも交流が生まれ、プライベートでもビジネスでもつながりが築かれてきています」

──企業で重要なポストに就くことが多い会員の方々が、海外の富裕層と直接的なつながりを持つことは、仕事の面でも大きなプラスになりそうです。

「はい。もともとゴルフはビジネスと切っても切れない関係がありますからね」

日本らしさを出すためにオリジナルの記念品を用意することも

――もう一つの変化は何ですか。

「インバウンドの利用が増えていることです。現在、当クラブは年間700~800人の外国人利用があります。全体で8万人の利用がある中なので1%ほどですが、この数字は少しずつ増えてきています。たとえばフレンドシップ契約を結んでいる香港ディスカバリーベイの会員は、交流の一環として私どものゴルフ場に来ていただきましたが、その後も何度かリピートしていただいています。新しい固定客の獲得につながっていると感じています」

――外国人のお客さんが増えてきて、既存の日本人会員から苦情などは出ていますか。

「まったくありません。むやみに集客をしないことで、当クラブを利用してくださる海外からのお客さんの層が一定していること。そして、それと同じかそれ以上に大きな要因が、当クラブの既存会員の皆さんから、外国人に対する苦手意識がなくなったことだと考えています」

「合同コンペにすべての会員が参加できるわけではないですが、私たちはなるべく交流の様子をオープンにして知ってもらうように努めています。会報誌に合同コンペの詳細なリポートを載せたり、フレンドシップ契約の趣旨を説明する機会を設けたりしています」

ゴルフ業界が世界に出ていく好機

──フレンドシップ契約について、今後の拡大計画を教えてください。

「契約先のゴルフ場については、さまざまな方面からお話をいただいたり、我々自身でも視察に行ったりしています。その中で少しずつ仲間を増やしていきたいと考えています。だからといって一気に増やすことは考えていません。ざっくりいえば、1年に1施設をメドにしています。なぜならクオリティーを担保しながら提携の輪を広げるには、それだけの視察・調査や関係づくりが欠かせないからです」

「たとえば、東南アジアのあるゴルフ場との契約を検討したことがありました。でも、そこが抱える会員の半数は現地駐在などの日本人でした。これでは、我々が目的としている海外との交流は生まれにくいですよね。また、すでに日本で広く販売されている(旅行会社の)パッケージツアーに枠を提供しているゴルフ場も東南アジアには少なくありませんが、これも会員の皆さまへのサービスにはなりづらいので、契約の対象にはなり得ません」

──最終的に、フレンドシップ契約はどのくらいの数まで増やしたいですか。

「具体的な数字の目標はありません。あえていえば、(アジア太平洋地域で)1カ国・地域で2コースという目安があるくらいです。大事なことは相手ときちんとコミュニケーションして、フレンドシップ契約を結ぶのにふさわしいかどうかを見極めることです」

──20年には東京五輪のゴルフ競技が開催されますし、21年には生涯スポーツ国際大会「ワールドマスターズゲームズ」のゴルフ競技が徳島県であります。今年の10月1~3日には、ゴルフによるインバウンド誘致を目的とした商談会「日本ゴルフツーリズムコンベンション」が三重県で初めて開催されました。日本のゴルフ業界が世界に出ていくチャンスではないでしょうか。

「村山さんは今年を『ゴルフツーリズム元年』と位置づけていますよね。私も、日本のゴルフ業界はもっと海外に目を向けていいと感じます。ただ難しいのは外国人客と日本人客の摩擦をどうマネジメントするかです。その意味では、私どもの経験も生かせるのではないかと思っています」

太田康裕
 「ザ・ノースカントリーゴルフクラブ」総支配人、運営会社のセガサミーゴルフエンタテインメント社長も兼務。新卒で入社したパルコでサービス業に携わった後、約10年間の桂ゴルフ倶楽部での勤務を経て、現職に。日本ゴルフツーリズム推進協議会・理事、北海道ゴルフ観光協会・副会長なども務める。9月6日の北海道地震では停電はあったもののスタッフ、コースともに被害はなく、現在は通常通り営業している。「道外から多くの人を呼び込んで、復興につなげていきたい」という。
村山慶輔
 株式会社やまとごころ代表取締役。1976年、兵庫県生まれ。99年米ウィスコンシン大マディソン校卒。在学中に20ヵ国以上を旅行したほか、卒業後はインドで半年間のインターンシップも経験した。2000年アクセンチュア入社。地域活性化プロジェクト、グローバルマーケティング戦略などに従事した後、06年退社。07年サイト「やまとごころ」を立ち上げ、12年に同名の会社を設立。インバウンドに特化したコンサルティング事業を手がけている。インバウンドの最新事例を盛り込んだ『インバウンドビジネス入門講座・第3版』を18年4月に出版。

(「開国インバウンド」は随時掲載します)