ローマ歌劇場来日 椿姫とマノン・レスコーの愛を知る

「ヴィオレッタの境遇を自分に置き換えて演技している」とドットさんは記者会見後のインタビューで語った。第3幕の病床シーンでは、アルフレードと再会してからの演技も見もの。原作では2人が生きて再会することはない。オペラでも最後のシーンをヴィオレッタの幻覚と捉える向きがある。音楽も急に明るくなる。ドットさんの演技は錯乱の様相を呈しつつも、歌唱は2人の愛を確かめるように、吐息に近い高音域まで芯が通っている。「第3幕では大げさにせず、自然な声で歌うよう努めている」とドットさん。突然訪れる激烈な短調の終幕で、これが悲劇だったことを誰もが実感する。

愛も富も求めたマノン・レスコー砂漠の悲劇

もう一つの演目「マノン・レスコー」は題名役のソプラノ、クリスティーネ・オポライスさんが注目の的だ。「見たこともない美しい人」と騎士デ・グリューが歌うオペラで「絶世の美女」を演じる。女優といえる演技力にも定評がある。記者会見でオポライスさんはマノン・レスコー役について「どの時代の女性も犯してきた過ち、愛と富の両方を求める大きな過ちを表している」と語った。そして「真実の愛を知り、人生が分かったときには死を迎える」という悲劇を指摘した。

ローマ歌劇場2018年日本公演開幕記者会見でプッチーニ「マノン・レスコー」題名役のクリスティーネ・オポライスさん(9月5日、東京・上野の東京文化会館)

イタリアの伝統を継承し時代考証が行き届いたキアラ・ムーティさんの演出も話題だ。4年前にローマ歌劇場の日本公演を指揮した巨匠リッカルド・ムーティ氏の娘。記者会見で彼女は「マスネの『マノン』はフランス人、プッチーニの『マノン・レスコー』はイタリア人。プッチーニはこの物語を非常に大きな悲劇に変えた」と指摘した。愛も富もなくした女性が「砂漠の中で砂漠のように死ぬ」イメージを演出で重視したという。

「マノン・レスコー」は後期ロマン派の高度な管弦楽法を駆使したプッチーニの音楽自体がまず大きな魅力を持っている。美しい旋律の歌が、色彩感あふれる管弦楽に抱かれて全編に流れる。「トスカ」や「トゥーランドット」にも引けを取らないプッチーニの傑作だ。マノンに翻弄されながらも、どこまでも求愛を続ける騎士デ・グリュー役のテノール、グレゴリー・クンデ氏の歌唱も上演のカギを握りそうだ。

「ローマ歌劇場2018年日本公演」は「椿姫」が9月9、12、15、17日に東京文化会館で、「マノン・レスコー」が同16日に横浜市の神奈川県民ホール、同20、22日に東京文化会館で、いずれも午後3時に開演する。イタリアの伝統と現代のセンスを融合した舞台は、両作品の普遍的価値を聴き手にどう伝えるか。永遠の都ローマからのオペラに期待がかかる。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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